第3話

「はぁ……。」


「おい、どうしたんだよキリア。でっかい溜息つきやがってよー。しかも目の下どでかい隈飼ってるし。」

机を挟んだ真正面から同じ学部の友人カイルが話しかけてくる。


「何でもないよ。昨日遅くまで予習をしてただけさ。」


昨日お嬢様に自室に戻るように言われ、そこから妹から聞いたゲームの内容をノートに纏めてたんだなんて言えない。

妹からよくキャラの画像は見せられていたので顔を見たら思い出せる気がするが内容までは結局思い出せず、夜遅くまで今後の事を悩見過ぎて寝れなかったのだ。唯一出来た事は、必要最低限の荷物を鞄に詰めていつでも夜逃げ出来る様にしたぐらいだ。


妹の話を適当な相槌で交わすんじゃなかった。

人生本当何が起こるか分からないよね。


「お前、全ての教科allAランクなんだから予習なんかすんなよ!俺を置いて行くな!!」

椅子に座っている僕にガバッとカイルが飛びかかってくる。


「わかったから縋り付いてくるなよ!」

こいつ人との距離近すぎだろ、所構わずくっついてくる癖がある。

お嬢様にその姿を見られた時はかなりガン見された記憶がある。


マジでやめてくれ……。


「本当かよ、今度のテスト出そうな所纏めて来いよなー、じゃないと取っておきの情報教えてやんないぞ。」


「取っておきの情報?何だそれ?」

カイルはかなりの情報通だ。学園内の情報屋として働き、時には先生達も聞きにくるほどだ。

その情報力でテストの内容も手に入れてくればいいのにと常々思うが、何故かそんな事はしない。

変な所で真面目な奴だ。


「君のお嬢様についての情報さ。何やら変な輩に狙われてるらしいぜ。」


「変な輩ってどういう事だよ。」


「教室に着いて自分の机の中に手を差し込むと1通の手紙が入ってるんだ。その手紙の内容は赤いインクでびっしりと愛の言葉を綴っていて黒い薔薇の花弁が1枚入ってるらしいぜ。誰が入れたかっていうのはわかってないらしい。」


「何で黒い薔薇の花弁も入っているんだ?お嬢様に話を聞かなければならないね。」


「ちなみにこの情報が入ったのは昨日の夕方、街で何処ぞのお嬢様方から聞いた話だからな。友人のよしみで朝一番にお前に教えてあげようと思っていたんだからな!ありがたくおもえよ!」

腕を組んでそっぽを向いているカイルから褒めて褒めてと尻尾が見える気がする。


「はい、はい、ありがとう。今度テスト対策の為に纏めたノートを持ってくるよ。」


「よっしゃ!ありがとうー!」

また抱き着こうとしてくる。


「そこ、いつまでも喋ってないで席に着け。」

いつの間に入っていたのだろう、生物学担当の先生、マレウス・アダルベーヌ先生が教壇に立っていた。

マレウス先生は眼鏡をかけているからそう見えるせいかよく冷たい瞳で僕を睨んでいる気がするのだが気のせいだろうか?


まぁ、そんな事は置いといて、今考えるべきはお嬢様の事だ。なるべく面倒事には関わりたくないがお嬢様の身に何かあったら大変だ。兎に角昼時にお嬢様に聞かなければ。

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