第2話
私は産まれた時から前世の記憶がある。
前世の私は引きこもり気味だった高校生だ。
人と喋るのが苦手で話しかけてくれても何て言葉を相手に返せばいいかわからずどもってしまい友人が出来ず1人孤立していた。
そんな引きこもり気味だった私がなぜ死んだかと言うと、ゲームの新作が出たので予約していたものを取りに行って帰ろうとした所に交通事故に遭ったのだ。
横断歩道にトラックが突っ込んできて、私と同い年くらいだろう男子高校生が一緒に巻き込まれた。
目の前に買った乙女ゲームが転がってきて、せっかく買ったのに出来なかったなと思いながら段々目蓋が重くなっていき、目を開けたら赤子になっていたのだ。
最初の頃は、第2の新しい人生を謳歌しようと意気込んでいたが、成長していく中で既視感を覚えた。
もしかして、乙女ゲームの世界に転生してるの?
私の顔がヒロインにそっくりだし、何より私の大好きな従者キリア・ルートンが7歳の頃奉公として我が家にやってきたのだ。
私は嬉しさと共に打ちひしがれました。
だってまさかのヤンデレの世界に転生したなんて。
攻略者は4人、この国の王子、そのお付きの兵士、学園の後輩くん、そして学園の教師だ。
詳しい内容はあまり覚えていないけどこのゲーム、監禁ルートやなんやらかんやらで明るい未来は見えない、バットエンド物のゲームだった気がする……
このままじゃ、第2の幸せライフなんて夢物語になってしまうのでどうすればと悩んだ結果の末
他の人とくっつけばいいのでは?
と思いキリア・ルートンを攻略しようと意気込みましたが、まぁ引きこもりで彼氏いない歴=自分の人生だったのでどうやって落としたらいいのよってなりました。
乙女ゲームみたいに選択ルートが目の前に出てくればいいのだが、現実なのでそんな選択もできず取り敢えずキリアの観察日記をつけようと日々見てます。
そう、今日もオペラグラス片手に見てます。
今日は学園がお休みでこの時間帯ならキリアも趣味の園芸にいそしんでいるはずと思い、私は庭が見える窓からバレない様にこっそり覗いている。
あぁ、綺麗な黒髪が太陽に当たって艶やかに光ってるわ……。
アルトさんと一緒に庭仕事をしてるのね。
にしても、こんなに暑いのに大丈夫なのかしら?
今日の新聞で、午後から暑くなるだろうって書かれていたから差し入れにレモン水などを持っていった方がいいのかしら……。
などと考えてる内にキリアが倒れた。
Oh……ジーザス。
キリアが倒れて1時間位は経っただろうか、私は使用人区域の近くにいてキリアが出て来るのを待っている。
さっきアルトさんがそろそろ起きてくるんじゃないかって言われてたから、出てきても良いはずなのだがと思っていたら出てきた。
「キリア!」
何という事でしょう。
ただ呼び止めたかっただけなのに壁ドンをしてしまった。
キリアの金の瞳の中に私が映っているし、いい匂いがする。
ダメだ……表情筋が私の気持ちの通りに緩みそうだわ気を引き締めないと。
「お嬢様、どうされたのですか?」
キリアは私から距離を取ろうと腕の下を潜って逃げようとする……。
ダンッッ
と大きな音を立て今度は足で通行を遮ってしまった。
「……お嬢様、私何かしでかしましたでしょうか?」
キリアが恐る恐る、私に問いかける。
そうよね、お嬢様がこんな事する訳ないものね、警戒するわよね。
「貴方、熱中症で倒れたって聞いたわ。」
「お嬢様のお耳にも入ってしまったのですね。」
「……。後で貴方に塩入りレモン水を届けさせるわ。今日1日大人しくしとくことよ。」
そう言って早歩きで逃げた。
キリアごめんなさい。私、喋るのが苦手だから言葉より先に体が動いてしまうわ……。
うら若き乙女が男性に壁ドンだなんて、心配あっての行動よと心で変な言い訳をしながら逃げるしかなったのだ。
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