第6話 ラララ
せいやとカラオケに行ってから1週間がたった。
あれからせいやに教わったミスチルの曲を聴きあさったり、ライブ映像を見たりとすっかりハマってしまった。
カラオケまた行きたいなぁ、、そうたまに考えることがある。今まではありえないことだろう。
正直、最近の中じゃ相当楽しかった。
せいやからの連絡はカラオケの日から無かった。
たつま「連絡してみるか」
Prrrrrr.....
せいや「もしもし?どした?」
たつま「いや、ひまだったからなにしてんのかと思って」
せいや「ちょうどよかった!そろそろたつまに連絡しようと思ってたんだよね」
たつま「え?なに?何かあった?」
せいや「いや!んーとりあえずうちこいよ!」
了解と伝え電話を切った。軽く身支度を済ませ家を出る。五分ほど歩けばせいやの家だ。音楽を聴いていても一曲聴けるかどうかの近さだ。
電話で到着を知らせるとせいやが玄関から出てきた。
せいや「とりあえず入って!」
家に入ると相変わらず物の多い部屋にギターケースが二つ並んでいた。
たつま「あれ?ギターまた買ったの?」
せいや「いや、違う。これは俺が昔使ってた安いやつ」
へー、とだけ言い座ろうとしたらせいやが昔の方のギターを手に取り渡してきた。
せいや「ほら、これあげるよ」
たつま「え??なんで?やりたいっていったっけ?」
せいや「言ってない!言ってないけどやれよ」
そう笑いながらせいやはギターを突き出してきた
たつま「いやいや、無理だろ。触ったことないし」
せいや「今から触るんだよ。興味ないの?」
たつま「いや、無くはないけど、、」
せいや「他に趣味ないんだろ?わざわざ実家に取り入ったんだ」
たつま「そんなこと言っても、、」
とりあえずギターを受け取りケースから出した。
チューニングはしてある、と言われてもなにをどうしたらいいのかさえわからない。
せいや「最初はEだな。あとAとC」
たつま「は??」
何言ってんだって顔で見ていたらせいやもギターを取り出して静かに音を鳴らした。
せいや「これがE、、コードの名前だよ」
「ギターはコードで弾くんだよ」
「他にもいろんな奏法があるけど最初はコード」
せいや「さっき言ったコードを練習して慣れてきたらFかな」
そういいながらまた音を鳴らした。
たつま「F?どんなやつ」
せいや「今、弾いたやつ」
たつま「それはなんで後回しなの?」
せいや「これが難しいんだ。初心者は大抵ここで挫折する。がんばれよ?」
正直言って難しそうには見えなかった。とりあえずEを言われた通り押さえ押してみた。
ジャーンと音を鳴らすとせいやが慌てて立ち上がる。
せいや「ちょっと!もーちょい静かに!また大家さんに怒られる!!」
この前のギターでこっぴどく怒られたらしい。
少し面白かったのでもう一回やりたかったが辞めておこう。
たつま「これあってた?」
せいや「あってるあってる!いい感じ」
意外と簡単だなと思いながら何度か鳴らしてみた。続いてAとCを指の位置を教えてもらいながら鳴らす。
たつま「ちなみにFはどうやって押さえるの?」
こうだよ、といった感じでせいやが押さえる。
やってみ?と言うので指を真似てみるが指が届かない。
たつま「え??指届かないんだけど」
Fはバレーコードと言って1弦から6弦を人差し指で押さえるコードでそこから中指、薬指、小指とそれぞれの弦、フレットの場所を押さえるのだがこれが相当難しい。初心者がやるには指を反対の手で引っ張って持っていかないとまず抑えられない。
たつま「全然むりだ、、まって!指つった!」
せいやは目の前で爆笑していた。
たつま「初心者なんだからしかたないだろ!」
せいやはごめんごめんと言ってこっちを向いた。
せいや「初心者になるんだな。やるってことでいいよね?」
やられた。でもまぁ他に趣味もないし、、
そう思い頷いた。
せいや「そのギター、、お前に預ける」
「いつか必ず返しにこい。おれの大切なギターだ立派なミュージシャンになってな」
たつま「どっかのセリフパクるなよ。ならねぇし
大体最初にくれるって言ってたろ」
そう言って2人は笑った。
せいや「嘘嘘!あげるよ!」
「でもやめるなよ?」
そう言ってせいやは立ち上がった。
どこいくの?と聞くと
せいや「カラオケ!ここじゃ練習できないからな」
たつま「なるほど」
カラオケについた。部屋は以前来た時より少し広めだった。ギターをもった2人を見て店員さんが気を利かせてくれたみたいだ。
せいや「とりあえずコードを弾く練習からだな」
「G、C、Amを練習してある程度なるようになったらFだな」
たつま「G?」
するとせいやはギターを鳴らした。
せいや「これがG、俺は適当にギター弾いてるからとりあえずやってみ!」
そう言うと携帯の画面を見ながらギターを弾き始めた。
どれくらいたっただろう。フリータイムで入ったので時間はさほど気にしてはいなかったが感覚で夜なのは分かっていた。
せいや「どお??慣れてきた?」
たつま「いや、さすがにまだ全然だけどCとAmはなんとかなる感じかな。Gは難しい」
なるほど、これは想像以上に難しいと感じた。
せいやのように弾けるようになるには一体どれだけかかるのか考えたくもなかった。それと同時にせいやは毎日努力したきたのかと知るいいきっかけになったと思った。
それからまたしばらく練習をしてからカラオケを出た。そして別れ際に僕らは週に出来るだけ多く練習をしようと約束をした。
大体、週に3回か4回僕らはカラオケに行きギターの練習をした。疲れるし指に豆は出来たりしたけど辛くはなかった。久しぶりの充実感に僕は満足していた。
連絡を始めて1ヶ月くらいでせいやがFの練習をしようと言ってきた。正直、自信はなかったが弾いてみると意外と初めよりは楽な気がした。
しかし、音が鳴っているとは到底言えるレベルではなかった。
せいや「まだまだ練習が必要だな」
それから元のコードに加えてFも含めた練習が始まった。せいやが弾けなくていいからこれを練習するといいよと楽譜を出してきた。
たつま「スピッツのチェリー?簡単?」
せいや「簡単なコードとたまにFが入ってくるからいい練習になるはずだよ」
TABと書かれた譜面にコードらしきものが書かれていた。
線が6本書いてあり黒い点が打ってある。
たつま「これは??」
せいや「コードだよ。上の線が1弦でしたが6弦」
「ギター弾きながらだと見やすいんだ」
たつま「なるほど!」
それからまたしばらく練習をした。
ふと思ったことが口に出た。
たつま「せいや、ずっと練習付き合ってくれてるけど自分の練習はいいの??」
「めちゃくちゃありがたいけど歌手になるんだったら時間もったいなくない?」
せいやは少し笑みを浮かべたような表情を浮かべて言った。
せいや「ラララ歌える??ミスチルの」
たつま「え?歌えるかな、、多分」
せいや「じゃあ歌ってみて。自分が1番優しい気持ちになった時と悔しい気持ちになった時思い出して」
たつま「難しいな、両方やるの」
せいや「この歌、両方表現できるといいんだよ」
そういいながらデンモクで曲を入れた。
メロディが流れ僕は言われた通りにいろんな場面を思い出し歌った。
「ちっぽけな縁起かついで
右足から家を出る
電車はいつもの街へ 疲れた身体を運ぶ
昨日と違う世界 あったっていいのに
僕も欲しいのに
簡単そうに見えてややこしく
困難そうに思えてたやすい
そんなLa La La そんなLa La La
探してる 探してる」
思い通りにならなかったこと、好きな人に振られたとき、泣いてる子供に話しかけるように優しくそんなことを思いながら歌い続けた。
「ニュースは連日のように
崖っぷちの時代を写す
悲しみ 怒り 憎しみ 無造作に切り替えて行く
明日を生きる子供に 何をあたえりゃいい?
僕に出来るだろうか?
太陽系より果てしなくコンビニより身近な
そんなLa La La そんなLa La La
探してる 探してる」
歌い終わったらせいやが口を開いた。
せいや「たつま、一緒に歌手目指そう。」
「それが1番の夢への近道だ」
たつま「本気??」
せいや「もちろん」
「たつまは俺には無いものめちゃめちゃ持ってる」
「一緒にやろう」
振り返ればいつからか僕の背景には色が付いていた。音楽を聴くたびに白紙の僕に一滴一滴ゆっくりと垂らされたインクが少しづつ僕に彩りをくれたんだ。そしてそれを与えたのは間違いなくせいやの音楽だった。これからも近くで聴いていいのか、一緒に歌っていいのか、誰かの背景に色を与えられるのか、そしてそれは自分にできるのか、希望と不安が混ざってから夢に変わった。
たつま「うん、やりたい!」
せいやは少しだけガッツポーズをするとピックを渡してきた。
せいや「やるぞ、練習!」
僕は頷いてピックを受け取った。
僕の背景もう白く無い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます