第20話 ジェイクのひらめき
「もちろんいいわよ? でも見てもさっぱりだと思うわよ? 〇とか△とか□が、ごちゃごちゃーっていっぱい組み合わさってるだけで、ほんと何が言いたいいのやら」
わたしは本の該当ページを開くと、ジェイクに手渡した。
それを食い入るように見つめるジェイク。
そしてわたしが自分のマカロンを全部食べ終わって、さらにジェイクの分を2、3個つまみ食いをしていると、
「ふむ……ふむ……これって、もしかして――」
ジェイクは何かに気づいたみたいだった。
いやいやまさか、ねぇ?
だってジェイクだよ?
「ジェイク?」
「ジェイク様?」
「なぁ、例えばここと、あとここに線を引くだろ? そうしたらこいつの重心がわかるから、今度はこっちも同じようにして、両者を結んでやれば――」
「――あっ!?」
その言葉に、わたしはガタンと椅子を倒しながら立ちあがった。
ジェイクから本を奪いとると、本に穴が開くくらいに強烈に図形をにらみつける。
「そっか、そういうことだったんだ……! この図形ってあそこのよくわかんない立体術式の分解図だったんだ……!」
「おっ、なんか役に立ったみたいだな。ちなみに、なにがどうなった――」
「今めっちゃ集中してるんだから、ジェイクはちょっと黙ってて!」
「あ、うん、ごめん」
「お、鬼の形相です……!」
そうよ、今はジェイクにかまってる暇なんてないんだから!
「――ってことは、こっちがブースト指定で、こっちが数値の指定ってことでしょ? ここが重なるから、だからここはそのまま、ここもそのままで……で、ここの数値をいじって、逆にこっちは――」
わたしの中で、一つの確固たる術式が組み上がっていく――!
それはもちろん、今までで一番の、完璧で完全な『破邪の結界』の術式で――!
そして、
「できたわっ!」
わたしは顔を上げると、大きな声でその一言を告げた!
「おおっ!?」
「ミレイユ様、それって――」
「『破邪の術式』のエルフィーナ王国版が完成したわ!」
「やったのか! ついに完成したのか!」
「ええ、文句なしに、これ以上なくパーフェクトに完成したわ! ジェイク、あなたのひらめきのおかげよ! これでエルフィーナ王国の全土に術式の効果が届くはず!」
「やったなミレイユ!」
「やりましたねミレイユ様!」
水晶室が歓喜に沸いた。
「後はすでに走ってる『迷いの森』の術式に乗っけて、細かいところの微調整をするだけよ」
「おおっ!」
「さーてと。今からすぐに『破邪の結界』の術式を走らせるわよ。今日中に結界を完全な状態で稼働させてみせるんだから!」
ふふふ、ここまで散々駄々をこねててこずらせてくれたわね?
でももうそれも終わりよ?
今からわたしが、あなたを一人前の男にしてあげるわ!
さぁ、やる気がみなぎってきたわよ――!
「よしっ、よしよしよしっ! ありがとうミレイユ、これでエルフィーナは救われる――っと、けほっ……」
やる気マックスのわたしの隣で、同じように喜びにあふれるジェイクが軽くセキをしたかと思ったら、そっと胸を抑えた。
その仕草がちょっと気にはなったんだけど、今のわたしはそれどころじゃなかったから、軽くスルーしてしまった。
だってこの『破邪の結界』さえ発動させれば、エルフィーナ王国は救われるんだもの!
アンナもジェイクも、たくさんの人の苦労が報われるんだもの!
「アンナ、ジェイク、ここまでありがとう! それもこれもあなたたちの協力のおかげよ!」
「うむ、力になれて何よりだ――けほっ」
「はい!」
「後はまかせてちょうだい! ここからは聖女であるわたしの仕事だから! さぁ行くわよ、待ってなさい? 今からわたしが、最後の調整をしてあげるから――!」
ジェイクとアンナが邪魔にならないようにと水晶室から出ていくのを尻目に、わたしは完成した『破邪の結界ver.エルフィーナ』を起動させるべく、最後の調整にとりかかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます