【破邪の聖女】婚約者を第二王女に寝取られ婚約破棄&追放された聖女は、エルフの国の土下座王子と恋仲に~「ちなみに私が居なくなった後、破邪の結界は大丈夫?っていうか今さら帰れとか言われても遅いんだけど?」
第21話 完成! 破邪の結界ver.エルフィーナ!
第21話 完成! 破邪の結界ver.エルフィーナ!
そのまま一人孤独に作業に没頭すること数時間。
『破邪の結界』をわずかに手直ししては、少しだけ起動させて反応を見るっていうのを繰り返して。
ちょうど日付が変わろうかどうかというくらいに、
「これで……調整終了よ!」
わたしは最後の調整をやり終えた。
「ふぅ……やれやれ……さすがに疲れたわ……」
やり遂げた充実感から、なんとなく腕で額をぬぐう。
「うあー、ずっと座って作業をしてたから、肩とか腰とか背中がガッチガチに凝り固まってるよ……」
んがー!とはしたなく伸びをすると、肩や腰がバキバキと鳴った。
疲れ目でしょぼしょぼしてるし、髪はヘロヘロでぱさついてるし、あまり男性には見せられない姿だった。
しかも途中で集中し過ぎてだいぶハイになってたからか、
「ヒャッハー!」
とか、
「おりゃーっ!」
とか、
「散々てこずらせてくれたわね? ほらほら、とっとと素直になりなさいな!」
とか、
「ここがいいんでしょう? うふふ、いい反応ね!? ほらとっととイっちゃいなさいよ!」
とか。
ちょっと素が出てしまって、聖女らしからぬはしたない独り言を叫んじゃったけど。
ま、ここにはわたし1人しかいなかったし、誰も聞いてなかったからいいよね。
ノーカンノーカン。
すると、コンコン――ガチャリ。
水晶室のドアが勢いよく開いたかと思うと、アンナが興奮した様子で入室してきたのだ!
「無事に調整が終了したんですね! おめでとうございますミレイユ様!」
「な、なんでアンナがここにいるの!?」
突然のアンナの登場に、わたしが思わず聞き返すと、
「え? だって『これで……調整終了よ!』ってミレイユ様は言いましたよね?」
アンナが「ほぇっ?」て感じで首をかしげた。
「言ったけど――え、アンナってば、まさかずっとすぐそこにいたの?」
「はい。入り口のそばで調整が終わるのを待っていました」
「ええええぇっっ!? 待ってたの!? ずっと!?」
「もちろんです! だって私はミレイユ様のお付きメイドですから。なにか指示があればすぐに動けるように、ミレイユ様の近くに控えるのが当たり前ですもん」
「あ、うん、そう……だわね。でもえらく静かだったような……」
「それはもちろん、ミレイユ様の作業の邪魔にならないようにと、息を殺して控えてましたので!」
「アンナは本当に偉いわね、うん……」
でも一言、入り口を出たとこで待ってるって言っといてほしかったかな……。
「ありがとうございます! えへへ、ミレイユ様に褒められちゃいました」
アンナはまったく邪気のない様子で喜んでいた。
ふぅ……落ち着くのよミレイユ・アプリコット。
さっきのはきっと、たまたま偶然、最後のセリフが聞こえてしまったのよ。
だから途中のはしたないあれやこれやは、聞こえていないはず……よね?
アンナが言いふらすとは思えないけど、手違いでもあってからでは遅いし困る。
一応、それとなく確認しておかないと……。
「あの、アンナ?」
「はい、なんでしょう?」
「今日は良い天気ね?」
「はい、雲一つない月が綺麗な夜ですね」
「ところで確認っていうか、質問っていうか、ちょっと気になった、みたいな感じなんだけど?」
「はい?」
「途中でその、ね? わたしの声的なものとかが、もしかして外にいるアンナに聞こえちゃってたりしてたのかなー、なんてわたしは聞いてみたり?」
「ああ、そのことでしたら――」
「ご、ごくり……」
「ミレイユ様ってば、すごく気合が入っておられましたよね。『キェェェ――ッ!』とか『ほら、素直に負けを認めなさい坊や』とか『だいぶいい声で鳴くようになったじゃないの』とか。まるで剣術の試合でもしているみたいに聞こえました。できる女って感じで憧れちゃいます!」
「いやーーーっっっ!!??」
わたしの独り言が、全部まるっとするっとアンナに聞かれちゃってたんですけどぉっ!?
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