最終話 全てを受け入れるから
17時32分
「今日の約束にも...行けない」
やっべ必死になりすぎて約束断るの忘れてた...
朝比奈にも連絡を...バイト先の先輩に言いつけるとか言ってたよな...最悪だ...
「やべぇ、もう40分だぞ...」
あと20分
どこだ、どこだ...
あ、ここもまだ行ってなかったか
17時52分
私はもうこの世界から消えてしまう
でも、消えたところで誰も悲しがる人はいないだろう
「見つけた...お前最初に会ったベンチにいるとか...」
「な、なんでここがわかったのですか?」
市川さんは汗だくだく、服は土が沢山ついていた
「心当たりあるとこ全部探して...位置情報を探った
俺もストーカー気質あるのかもな...」
「それは位置情報を探ったとは言わない気が...」
彼はきっと私を止めに来たんだ
でも、私は絶対に気持ちを変える気はない...
「ご、ごめんなさい 私〜」
「とりあえず、なんか飲もうぜ
お茶で良いか?」
「えっと...は、はい」
17時55分
俺たちは飲み物を飲み、完全に力が抜けていた
「どうするの? やっぱり天国行っちゃう?」
天国行っちゃう?ってやっぱ軽すぎか?
いや、でもこれくらいラフに〜
「は、はい あなたの要望には答えられないと思います」
やっぱそうだよな...でもこっちにも作戦がある
完全に捨て身だ
「じゃあ...」
俺はそう言って橋の方まで行く
彼女もついてくるように走ってきた
「な、何するつもりですか?」
「俺もここから飛び降りる
これで上野とずっと一緒にいられる!」
ちょっと攻めすぎたか...ってか高!?
というかこれはストーカーの領域こえてもはやヤンデレ?
「ダメ! 行ったらダメ!」
彼女はそう言って俺の服の裾を掴んだ
「俺も、同じくらい...君にこの世界にいて欲しいんだ!」
俺はそう言って彼女の方を向く
何恥ずかしいこと言ってんだ、俺...
「で、でも私、ここにいても...」
「おばあちゃんに会いたかったんだろ
天国に行けばおばあちゃんに会えるって」
「...」
17時58分
「俺も同じなんだ、小学校の時、母親を亡くして、今もその現実を受け入れられなくて」
「...」
「でも、君がいたことで前向きになれた」
俺は元々幽霊とかそういうのは半信半疑だった
だから父親に、"お母さんがいつも見てるから"
とか言われてもなんの励みにもならなかった
命日に父から毎年お墓参りに来いと連絡が来ていたが、全部無視していた
「上野は、幽霊って、そんなこと信じられるかって思ったけど、もしかしたら上野みたいに母さんがどこかで見てるかもって」
「だから、おばあちゃんはきっと見てるから!
それに、俺が君の、君の、」
「全てを受け入れるから」
17時59分
彼女は泣きながら俺に抱きついてきた
おじさんが言うには現世に残りたいと思う気持ちが天国に行きたいと思う気持ちより大きくなれば良いと言っていた
「お前、あんな高いところから降りれるって、ほんとすげえな」
「な、何ですかそれ...ちょっとストーカーみたいでしたし...」
「お前が言うな!!」
彼女の肌は最初は冷たかったが、だんだん暖かくなってきた
そして綺麗な花火が打ち上がった
怖そうで怖くない、ちょっとだけ怖い俺のラブコメ マルマル @ztyukki
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