第31話
工匠はジローの耳元でこう呟いたのだ。
工匠
「あんたに頼まれてた物だ。ほら!
金は、いつもの
…あんたのこと…知らないふりをするのは、
なかなか
ジロー
「ああ、わかった。」
こうして工匠達も死体を乗せたワンボックス車と、黒の車に各々乗り、帰って行った。
そしてジローは、車道がある方へ歩いて行く。
車道に着くと、工匠達が帰った方角とは
逆の方向へと、歩いて行ったのである。
暫く歩いていると、黒の高級車が
ジローの横で静かに止まった。
そして運転席から、
黒のスーツに白のYシャツ、黒にシルバーの
長身の男が降りてきた。
男はジローの前に行くと、
長身の男
「御苦労様です。」
と言いながら、後部座席のドアを開けた。
そして、ジローは、
ジロー
「おう、ご苦労さん。」
と言い、車に乗り込んだ。
長身の男は、ジローが乗り込むのを確認すると、後部座席のドアを静かに閉めた。
そして自分は運転席に乗り込み、シートベルトを
ブルルルルー
長身の男は車を走らせながら、ルームミラーで後部座席のジローを見ながら、
長身の男
「矢真城さん、お疲れ様でした。」
ジローこと矢真城
「ああ。今回は本当に骨が折れた。フーッ。」
長身の男
「そうですね…ジローと
なりきりましたね。そして、矢真城さん
本当、お疲れ様でした。」
矢真城
「まぁな…今回は本当に疲れたよ。長い、奴らとの生活…早く帰ってぐっすり眠りたいよ。」
長身の男
「ハハハ、それは絶対キツいですね。
矢真城さんの精神力はさすがです。」
矢真城
「おうよ!こんなこと、
長身の男こと御前
「ハイ笑。一週間でも無理ですね。」
矢真城
「ハハハ、そうだろそうだろ!
やっぱり最後は精神力よ!なぁ御前!
しかし、俺も歳だな笑。ちょっと疲れた。
少し休ませてもらうぞ。」
御前
「はい。少しお休みになってください。」
そう言うと、矢真城はシートにもたれた。
目を半開きにして…。
御前はルームミラーで矢真城を確認し、車を走らせていく。
そして暫く走って行くと、車は
入って行った。
御前は再び、ルームミラーで矢真城をチラリと確認する。
矢真城は、シートにもたれてはいるが、眠ってはいないようだ。
そして、御前はいきなり話し始めた。
御前
「…ところで、矢真城さん、犬は全部始末したんですか?。」
矢真城
「ん…ああ、全部で三匹もいたよ笑。
…おい!ところで御前、道間違えてないか?
こんな道通るのか?。」
御前
「ええ…実は矢真城さんに見て頂きたいものがありまして…少し遠回りしています。
…よろしいでしょうか?。」
矢真城
「…私に見せたいもの?…まぁいい。わかった。」
そして更に、車は奥へ奥へと走って行く。
暫くシートにもたれていた矢真城だったが、
起き上がり、
矢真城
「おい!御前!何処まで行く気だ?いいかげんにしろ!一体何なんだ見せたいものって?。」
御前
「ああ、すいません。もう少しです。…んーまぁ、ここらでいいか笑。」
矢真城
「…ここらでいいか?どうゆうことだ?。」
御前
「ですから、矢真城さんに見せたいもがあるんですよ。」
矢真城
「お前!さっきから何か変だぞ!見せたいものがあるなら、さっさと見せろ!。」
矢真城は
すると車は急に止まった。
おそらく他の車はほぼ通らないであろう、
そんな山道で、一台の黒の高級車はポツンと止まったのである。
そして御前は、懐から冷たい黒い鉄の塊を取り出した。それはただ、人を
それを運転席から、左に身を
振り返り、その
御前
「矢真城さん…犬は三匹…全部始末したって言ってましたけど…、
実は俺も犬なんですよ笑。」
矢真城
「…く、て、てめぇー!。」
御前
「矢真城さん…俺に言ってましたよね、
誰も信じるなって。
特に近くにいる奴は危険だぞって…。
フフフ…あはは!
矢真城さん、俺のこと信じちゃったんだ笑。」
矢真城
「…御前、俺を逮捕するのか?。」
御前
「ハハハ!いえいえ!逮捕しませんよ。
だって、そんなことしたって、この組織は
矢真城さんが逮捕されても、また、組織の誰かが新しく組織をつくるでしょうし…。
そうなれば俺の潜入も、まだ続く訳ですし…。
いたちごっこなんですよ…結局…。
いくら
何時殺されるのか…神経がもう持ちませんよ。
俺もこの世界に潜入して、疲れ果てました。
それで俺は、どうせならこの世界で生きていこうと決意しました。
あーそれと、この組織は俺が頂きますので、
後の事は心配しないでください。」
矢真城
「…お前にこの組織を…、
御前
「ハハハ!俺はナンバー2ですよ。それに、
もう、根回しも終わってますよ。」
御前は、銃口を矢真城に、向けたままにしている。
矢真城
「そうか…勿体無いなぁー笑、お前なら
ずっとパートナーでやっていけたのになぁー…。」
御前
「矢真城さん、男なら頂点目指せって言ってくれたのは、他でもないあなた、矢真城さんですよ!。」
矢真城
「ハハハ、そうだったな!…しかしな、
人にはそれ
御前!おまえにその
御前
「矢真城さん、
もうそろそろ時間です。」
矢真城
「…俺を撃つのか?。」
御前
「今までありがとございました。
あの世で会ったら、また宜しくお願いしますよ。」
矢真城
「そうか…
矢真城は右手で左胸を抑えながら、叫んだ。
そして、両手を拡げながら、
矢真城
「さぁ撃てよ!。」と言ってのけた。
御前は無言で、矢真城の心臓に銃口を向け…
そして、その握っている黒い塊の引き金を引いた。
パン!パンパン!
矢真城
「う、うぐぅ…」
矢真城の胸に、三発の
矢真城はぐったりして動かない。
御前はそれを確認すると、
御前
「矢真城さん…今までありがとうございました。」
御前は矢真城に対して、敬意を表したように、頭を下げた。
その瞬間だった!
パシュビシパシュパシュビシビシ
パシュパシュビシビシ
御前の車の左右の窓の外に男達が立っていた。
サイレンサー付きの拳銃を持って…。
御前は
車の窓には、小さな穴がいくつも空いていた。
男達は後ろ座席のドアを開ける。
男A
「会長!会長!大丈夫ですか!会長!。」
男Aは矢真城会長の
矢真城会長
「ぅう、ばはぁー、ぶふぅー。」
男A
「良かった!気が付かれて安心しました。
身体は大丈夫ですか?。」
矢真城会長
「あ、ああ、ぼ、
ただ
男A
「そうですか…分かりました。これでは歩くことは難しいですね。
では、このまま、この車でいつもの医者の所まで行きましょう。」
矢真城
「あ、ああ、頼む。お、御前は死んだのか?。」
男B
「ええ!前の席で…死んでます。
頭に、首に、胸に数発打ち込みましたから。ほぼ即死でしょう。」
矢真城
「ふん、そうか…自分が殺されるなんて…思いもしなかっただろうな…自分の正体がバレてるとは…夢にも思わなかっただろう…!う、痛。」
男A
「さぁ、会長、横になって下さい。いつもの
医者の所まで、辛抱してください。
あとは、我々にお任せ下さい。」
矢真城
「ああ、頼む。」
男A
「おい!お前は前に知らせて、車の向きを変えさせておけ。会長は動けそうもないから、この車で移動する。行け。」
男Bは言われた通り、自分達の乗って来た白いセダンの男Cに、事情を話した。
男Cは車の向きを変え、バックして、黒い高級車の前に付けようとしていた。
男Aは御前の死体を助手席にずらしている。男Bは戻ってくると、運転席に座り、男Aは矢真城の横に座った。
そして、矢真城を乗せた黒い高級車の前に、三人の男達が乗って来た白いセダンを、男Cがバックで付けた。
男Bが黒い高級車のクラクション軽く鳴らした。
ファーン
それを合図に、白いセダンは発進する。
続いて黒い高級車も発進する。
白いセダンを追走するように、黒い高級車が走って行く。
左右に、各々の
二台の車が走って行く…
その時
プルルル プルルル プルルル
矢真城は上着の、サイドポケットから電話を取り出し、電話に出る。
矢真城
「ハイ、…俺です…えー…そうです…ハイ…それでは後で…失礼します。
…くそジジイが…。」
男A
「会長、どうかされたんですか?。」
矢真城
「いや、痛、なんでもない、独り言だ。」
ブルルルーン
白いセダンと黒い高級車が
緑の木々の
山道を走って行くのであった
犬の唄 ハネ @youya-kai
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