第21話

事態はあらぬ方向へと向かっていく…

俺達は行きたくもない、混沌こんとんへと向かっていくのであった。


「そうか…なるほど…。! 話を整理せいりしよう。

この四人の中に潜入が一人、組織の回し者が一人、あるいは潜入と組織の回し者が、

同一どういつ人物…その可能性があるってことだ。


その裏切り者は、組織の大物幹部にこの場所を教えてるってことか!?

そして、此処にある金を組織に戻すってことだよな!。そしてそれを合図に、警察も突入してくる可能もある。」


鮫頭

「先ずは潜入より、組織の回し者が問題だな…。

組織の回し者は、もうわかったよな。みんな、もうわかったよな!…

それは、ジローお前だろ!。」


ジロー

「…ハハハ、だから俺じゃないって。

確かに、須木先の兄弟に警察の犬を探せって頼まれて、

俺自身も、警察の犬はどこかに居るって思ってた。けどそれは、全部俺達のため、自分のため、逃げ切るためだって!…

それに、だって俺、

鉄のパンツ履かされてたんだぜ!

うらみこそあれ、組織に、義理ぎり忠誠ちゅうせいもねぇよ。

それに、折角苦労せっかくくろうして金を手に入れたのに、組織に返すのかよ!?…。

バカらしいだろ!普通に考えても。」


鮫頭

「う、うーん、まぁ、確かにジローの言うことも…分.か.る.が…いやいや、

ただ、もし、人質ひとじちを、取られてたとしたら…

…あの、そうだ!あの彼女とかな!…。だったら組織の言う通りにするだろ!違うか?!。」


ジロー

「はー、それこそアホらしい!

もしそうだとして、組織に協力して、金を渡してこのまま組織に戻っても、結局は殺されるだけだろう。

俺を生かしておいて、組織に何のメリットがある?…。

結局金はとられて、俺は殺され…彼女も殺される…

もし、殺されなかったとしても、ずーっと

下端したっぱのままだろうしな!

そんなことになるくらいなら、金は絶対に渡さねぇーし、戻ってたまるかよ!!

それにもし、彼女が人質になってるなら、俺の金を組織に渡すより黒さんにたくすよ。」


「…ん、え!…」



鮫頭

「なるほど…あの組織が約束守る訳ねぇし、

…確かに…そうだろうな!

もしも人質取られてたとしたら、皆に…

いや、黒さんに相談すれば、ぐ解決だしな笑。」


黒さん

「さぁこれで、組織の回し者は居ないとわかったな。それじゃあ、」


黒さんの話に俺は、割って入った。


今の話のテンポにもついていけなかったが、何より引っ掛かったのが、

黒さんに金を託すと言うジローの言葉と、相談すれば直ぐに解決って…。

一体何のことなのか?何を言っているのか?…。俺にはチンプンカンプンだった。

だから、質問せずにはいられなかったのだ。



「ちょっと、なぁなぁ、黒さんに言えば直ぐ解決って、一体どうゆう事だよ?分かるようにちゃんと教えてくれよ。」


鮫頭

「そうだな…じゃあ教えてやるか!笑。」


「ああ、頼むよ。」


俺がそう言うと、鮫頭はゆっくりと俺の知らない黒さんの昔話を始めた。


鮫頭

「あれは、何時だったかさだかじゃないが、

ある女の子が車にねられたんだ。

その時、たまたまそこに居合わせた黒さんが応急処置おうきゅうしょちして、救急車を呼んで、一命いちめいを取り留めたんだ。

その女の子は、ある外人傭兵がいじんようへいの娘だったんだがな…。

その外人傭兵は、どうやって黒さんをさがしたのか知らないが、直ぐに黒さんのところにお礼をいに来たんだ。

それから、その外人傭兵と、黒さんの付き合いが始まったんだ。」


「へ、え、それと、黒さんが直ぐに解決って事になんで繋がるんだ??。」


鮫頭

「まぁーそうあわてるなって!。まだ、話の途中だ!。」


「わりい、わかった。最後まで黙って聴くよ。」


俺には全く理解できなかった。

俺の知らない黒さんが居て、

俺の知らない鮫頭、ジロー、黒さんとの絆というか、何というか…とにかく俺の頭と気持ちが別離べつりしていることだけが分かっていた。


そんな俺の心など知るよしもない鮫頭は、また話を進める。


鮫頭

「その外人傭兵って、実は凄腕すごうでの傭兵で、しかもソイツはある傭兵チームのリーダーだったんだ。


その凄腕傭兵チームは五人居ごにんいて、その中には天才ハッカーの奴も居て、ソイツに調べられたら、地球のどこに居ても見つかるって位、すげぇ奴なんだ。

それで、黒さんを直ぐに見つけたって訳だ。

そして会いに来た。

そうだよな!黒さん!。」


黒さん

「ああ、その通りだ。」


「ぁ、ぅえ…」


俺は言葉にならない。

そんな突拍子とっぴょうしもない話が信じられなかった。

それじゃまるで漫画まんがか何かじゃないか。

俺の頭の中に、想像そうぞうえた何かが流れ込んでくる…それは現実と夢の狭間はざま…俺は現実味げんじつみが無い世界に迷い込んだようだった。

それでも鮫頭は、俺のそんな心など知る由しもなく、更に話を進める。


鮫頭

「で、だ。何故、その凄腕外人傭兵が日本に居たのかって事だけどよ…

これも何時だったか忘れたけど、

ある組織が一夜いちや壊滅かいめつしたの知ってるだろ。水宇羅。」


鮫頭の問いかけに、パニクっている俺だったが何とかその問いかけに答えられた。


「え、あぅ、あ、…ああ、し、知ってるよ。

確か……誰がやったのかいまだにわからないってアレだろ。

結局は対立してた俺らの組織と、もうひとつの組織の幹部が逮捕たいほされて、

一応の解決になったけど…本当の所、結局は誰が指示して、誰が実行じっこうしたのか、真実は解らないままなんだよな…。」


鮫頭

「ああ、その通りだ。

ただそこから、うちの組織はでかくなったし…

うちの組織の誰かがやとったのか…それとも他の組織そしきが雇ったあいつらを、

うちの組織が買収ばいしゅうしたのか…

まぁーとにかく、うちの組織の誰かが裏で糸を引き、その外人傭兵がやったと俺は思ってる。

まぁ、それしか考えられないけどな!


だってよー、そんなことが出来るのは、その道のプロの仕業しわざとしか考えられねぇ。

さらに言えば、少数での仕業しわざだ。

周りに知られず、音をできるだけ出さず、

その所業しょぎょうを行える者は…プロ中のプロの中の、精鋭の連中の一握ひとにぎりの者達しか考えられない。

訓練を受けた凄腕のプロ…

世界の戦闘せんとうのそのまた凄腕となると、

スワット、スペツナズ、グリーンベレー…

更に世界の戦争で、命のやり取りを行う

実戦豊富じっせんほうふな傭兵達…


そして、そんな芸当げいとうをこなせるのは…おそらく…。

俺の推測すいそくが正しければ、

その組織をたった五人で壊滅かいめつさせたってことになる。


…とんでもないよな!流石戦闘さすがせんとうのプロだ!…。

ねらわれたらおしまいだ!

俺が知ってるのは此処までだ。

なぁー黒さん、だいたい合ってるか?。」


黒さん

「…ああ、若干違じゃっかんちがうが、大方合おおかたあってるよ。

よく調べたな。」


鮫頭

「まぁー、大して深いところまでは、解らなかったけどな笑。」


ジロー

「!…」


「…そうか、じゃ、こうゆうことか?!…

黒さんに相談すれば、その外人凄腕傭兵が何とかしてくれるって、そうゆうことだよな!。」


黒さん

「ハハハ、そんな簡単じゃないよ。

彼らも、ボランティアじゃないしな…

ただ、俺の仲間や友人が困ってたら、

何とか頼み込むって事だ。

ただし…かなりのは張るがな…。」


「…なるほど、要はその凄腕傭兵達に、即ち黒さんに頼めば、大体のいざこざは解決しちまうってことだよな。…すげぇな…黒さんらしいな。そして、傭兵は味方には違いないが、大金が必要って訳か…。」


俺は、何となく…だいたいは理解できた。

少し引っ掛かかるところはあるが…。


そして俺の心の中は少し複雑だった。

黒さんのことは鮫頭より、ジローなんかより俺の方が知ってると思っていた。

それなのに…


俺がそんなことを回想している時も、

俺達の運命の時間帯は過ぎて行き、その奇妙きみょう

ラビリンスは、口を空けて俺達を飲み込もうと、していたのである。

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