第20話

ここから、黒さんの真骨頂しんこっちょうが始まるのである。

俺達の頼もしきリーダー黒さん

そして…

さすがの黒さんの幕はあがった



黒さん

「なぁーみんな、もう、一旦潜入いったんせんにゅうの事は忘れてくれ!。

俺達の中に潜入なんていねぇーよ。大丈夫だ。さっきも言ったけどよー、居たら今頃、警察が突入してるよ。

まだ待機してる意味なんてないからなー。俺達は今、ふくろのネズミ。

つかまえて取り調べりゃむ話だしな…。


だからもうこの話は終わりだ。ジローもいいな?!。


そんなことより…大事な話がある。」


ジロー

「ん?…んーわかった。」


……



一旦 が空いた。そして…


黒さん

「明日には、ヘリが来る。」


全員

「……え!マジかよ!オーーー!。」


この黒さんの話に俺達は、歓喜かんきの声をあげた。

やっと、ようやくこの窮屈きゅうくつな生活から、このプレッシャーから脱け出せる。

俺達は喜ばずにはいられなかったのだ。

そして、黒さんが続けて話す。


黒さん

「長い間、みんなには辛抱してもらったが、

それも、今日でおしまいだ!。

それで、脱出にあたっての準備や予定、そして、その楽園への出発点の場所だが、俺と水宇羅の後に付いて来てくれればいい!。」


この計画を立てた時、俺は黒さんに言われた。


水宇羅、お前だけに言っておく。

だから誰にも言うな。

誰にもだ!と。

そう言って黒さんは俺の肩を抱いて、

この計画の一番大事な、肝心かんじんところを話したんだ。


この計画の一番のかなめは、

エスケープすること。脱出することだと…。


金を手に入れても殺されるか、捕まるか、

脱出できなければ意味が無い。


何のために計画を実行したのか分からなくなる。


そのために一番金をかけ、一番時間をき、練りに練ったのだ。


その場所、そのためのプロセス、そしてその最大の最後の要というのが、絶妙ぜつめょうなタイミングなのだ。


場所への移動手段、移動時間、そのタイミングを計り、エスケープする。


手配したヘリに乗れば…

それが成功ということになる。


だから黒さんとは何度も何度も入念にゅうねんに打ち合わせをし、地図をひろげ、ヘリが降りられる場所、俺達がバッグを持って移動できる範囲はんいし、実際にリハーサルもした。


そして、一つの結論けつろんに達したのだ。

その場所は極秘ごくひであり、例え鮫頭やジローにも話すなと、黒さんに言われたのだ。


鮫頭

「何だよ黒さん!場所教えてくれないのかよ!…。

なぁなぁ、ここから、近いのか?走るのか?どうなんだよ…。」


黒さん

「悪いな…場所は…今はまだ、言えない。

だが走って移動するぞ!そして結構 距離きょりはあるからな。覚悟しておけよ。」


ジロー

「…うーん、何で今は言えないの?

その場所確認ばしょかくにんしておいた方がいいんじゃない?!。」


黒さん

「ああ、ジローの言う通りだな…。

だけど、今は俺を信じて、言うことを聞いてくれ。

とにかく、ねんには念を入れて。最後の最後にドジ踏まないように、あらゆる事を想定そうていしてる。

だから、明日直前あすちょくぜんに、場所と詳細しょうさいを言う。いいな!。」


ジロー

「…そっか…わかったよ。」


鮫頭

「おう、わかった。」



黒さん

「と、いうことで、今日は早くよう!。」


黒さんが上手くまとめてくれて、

後は、明日にそなえてゆっくりごすつもりだったが…

またジローがゴネだした。

俺は勿論、黒さんも鮫頭もいい加減かげん、ウンザリしていたのは間違いない。


ジロー

「なぁー、やっぱりこのままじゃ不安だぜ!。

だって、この中に潜入が居たら、

明日、全員が掴まるってことだぜ!

それでいいのかよ?。」


黒さん

「なぁージローよー…さっきも言った通り、この中に潜入は居ねぇーよ。

だから、この話はだなぁ、」


黒さんが話してる途中で、

ジローが話しにって入る。


ジロー

「居たらどうする?。」


ジローにしては、すごく強い口調だ。


黒さん

「だから、居ないって言ってんじゃねぇか!

…なぁ、ジローお前どうしたんだ?…。

いいか!この中に潜入は居ないし、

俺達は、掴まらない!違うか?!…さっき潜入の話は終わったろーが!。」


ジロー

「ヴ、ぅうう、だって~俺、掴まりたくねぇよ。

グス、ぅうう、掴まりたくないから、

少しの不安も、消したいだよ。」


黒さん

「わかった。

わかったから、いいとしこいて泣いてんじゃねぇよ。

さっきから何度も言ってるけど、この中に潜入が居るならとっくに警察は踏み込んでる!っだろ。

俺達がギャングした金もここに持ってるし、全員が集まってる。

待機して、踏み込まない意味も理由もないんだ!。

組織の大物おおものでも此処に来ない限り、待つ意味がない!

…は!え!そうゆう事も考えられるか!…あ…。」


鮫頭

「何だよ…どうした?黒さん。」


黒さん

「いや、自分で喋ってて、今気付いたんだが、

此処に組織の大物幹部おおものかんぶが来るとしたら…

警察が踏み込ないで、待機してるかも知れない…。」


鮫頭

「え、おいおい!マジかよ!…。

……ん、待てよ……

ということはだ…潜入が…裏切うらぎり者が…現実げんじつに居るってことかよ!

チ、くそったれがー!。」


この黒さんの気づきに…

事態じたいはとんでもない方向へと、向かおうとしていたのだった。


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