第12話

ホテルラウンジの女性の係員が去った後、

俺はまた気持ちを戻し、再び話を始めたのだった。



「ハハ、ちょっと中断されてしまいましたが、続きをお話ししましょう。


先程の話ですが、ヘリコプターの免許には、

自家用と事業用があります。

そして、民間での仕事としてのヘリ免許は、事業用の免許が必要です。

また灰薔薇さんは、ご存知ぞんじかもしれませんが、

自衛隊で、ヘリの操縦士そうじゅうしをしていても、自衛隊を辞めたら、

外では、ヘリコプターを運転できません!


灰薔薇さんのところにいた時は、勿論、無免許でヘリを操縦し、腕さえ、あればよかったんでしょうが…。ホントはヤバいですけど笑。


まぁ、それはそれとして。


そこで我々が考えたのは、架空会社の、にせの、ヘリパイロットの募集をします。そこに妹さんの御主人にエントリーしてもらって、我々が裏で合格にさせます。そして、合格者には、自家用、事業用操縦士免許に掛かる費用は会社が全額負担するという契約にします。

また、妹さんにも生活がありますので、

訓練、受講じゅこうの間も給料を支払います。

勿論、給料の支払いも、我々の依頼いらいのお金を使わせて頂きます。

最終的には、免許や給料にかかった費用を、いた金額を、我々の作った架空かくう会社の、

契約金けいやくきんとして、お払いします。

これなら妹さんに、裏に、灰薔薇さんが、

いることも分からず、

金の出所を、調べられても、

灰薔薇さんに、辿たどくことはできません。

辿り着くのは、我々のダミー会社です。

ただ、ダミー会社と言っても、妹さんの御主人が免許を取り、経験を積むまで、…そうですね、三年位はダミー会社を存続させますよ。

知り合いに頼んでおきますから、大丈夫です。


…灰薔薇《さん!、どうでしょう?。」


灰薔薇

「…んー、何故そんなに、良くしてくれる?


確かに昔、黒さんに協力したことはあったが…。


…それにしても話がうますぎる…、気をつけなきゃな…。」


「灰薔薇さん、それを言うなら、どくらわばさらまでですよ笑。


ただし、最初に言ったように、妹さんには幸せになってもらいたい!そして、我々の依頼いらいとは…それほどの金額を使っても…成功させたい…いや、成功させなきゃならないんですよ…。

そして、灰薔薇さんにも…

黒さんが5本支払うってことは、

黒さんも、灰薔薇さんの事、知ったからじゃ

ないですかねぇ…


ああ見えて、黒さん。

浪花節なにわぶしが好きですし…


何より、こんなきたない世界で、

灰薔薇さんのような、真実しんじつは善人っていうのが大好きなんですよ。

俺も、そうゆう人が大好きですし!


だから…、

うそに聞こえるかもしれませんが…

灰薔薇さん達に、幸せになってもらいたい…

いや、もっと正直に、ストレートに言います。

我々に協力してもらいたい。

灰薔薇さんが協力してくれれば、

我々もたすかるんです。

我々もハッピーなんですよ!

ぞくに言う、Win-Winの関係ってことです。


どうでしょう、…この話に、乗ってもらえませんか?!。」


俺がそう言うと、灰薔薇は暫く黙りこみ、

何かを考えてるようだった。


………


失敗したか?!

ダメだったか…、俺の頭の中を、不協和音ふきょうわおんが、ひびく。


そして、どれくらいの時間が流れたであろう…

短くも感じ、長くも感じた時間であった。

灰薔薇は、もう、既に冷めてしまったコーヒーを一口啜ると、静かに話し出した。


灰薔薇

「ふむ、んー、あんたに賭けてみよう!

これが、何かのわななのか、はたまた、巧妙こうみょう詐欺さぎなのか笑。

または、金を払わないかもしれない…。

だから、こちらの条件に全て従ってもらう。

金は、勿論だが、先払さきばらいを前提ぜんていとしてもらう。


先程の、必要経費を抜いた、残りの一括払いの金は、俺の知り合いの弁護士へ預かってもらう。


最低、その条件は呑んでもらう。

…ふ、笑、まぁ、ただの罠かも知れないが…。

……

どちらにせよ、俺の直感があんたにけてみよう、賭けろっていってる笑。

何でだろうな…。ただ…昔から、俺はまよった時は、自分の直感に従ってきた。


結果的に、自分の直感に、

裏切うらぎられたことがない!

ハハ!まぁ科学的 根拠こんきょも無いし、証明もできないがな笑。


もにかく、あんたに任せるよ。

そこで早速なんだが…いや待てよ…

そうだな…まずは、そちらの指示に従おう。

…そうしたら、俺はどうしたら良い?。」


俺の心の中から、先ほどまでおおかぶさっていた暗雲が、

ブワーーっと、一気に吹き飛ばされ、

目映まばゆい光が、したのだった。


その踊る心を抑え、

自分を落ち着かせながら、ゆっくりと、

俺は説明した。


「えぇ…はい!そうですね。

ふぅー。

灰薔薇さんに、してもらいたい事は三つです。


まずは、妹さんの御主人に我々のダミー会社のヘリ募集に応募するよう仕向しむけて下さい。妹さんには感ずかれないように笑、

慎重にお願いします。これが一つ目です。


それから次は、

指定した日時に、我々を、指定した場所から指定した場所へ、ヘリを使って、運んでもらいたいのが二つ目です。

最後の三つ目は、

指定した日時に、うちの組織の火馬田に電話してもらいたいんです。」


灰薔薇

「ああ、一つ目と二つ目は了解した。

三つ目だが…、電話?!。電話で何を話すんだ?何を言えばいいんだ?。」


「それは、其方あなたの荷物、ねらわれてますよってだけ、言って頂ければ良いだけです。あとは、灰薔薇さんのアドリブでOKです笑。」


灰薔薇

「…なるほど…分かった。何の意図いとがあるか、全く見当けんとうもつかないが、分かった。」


よろしくお願いします。


それではもう一度、確認の話をさせていただきます。


妹さんの御主人を応募させる。


我々の指定した日時に、妹さんの御主人がヘリコプターで、我々を運んでいただきます。

そしてその時に、そのヘリに灰薔薇さんにつながらない、しかし、とても信用のある人間を一人乗せて下さい。


先程、灰薔薇さんは五本の話をした時、

妹さんのご主人に払う、給料等、必要経費以外の残金も全て先払い、

残りの一括払いの金は、

灰薔薇さんの知り合いの弁護士へ、我々が支払うと言っていましたが、

我々も、リスクヘッジしなければなりません。


そこで、必要経費を支払い、残りの一括払いの半金を、灰薔薇さんの知り合いの弁護士へ、

残りの半金を、そのヘリに乗り込んでくる、

灰薔薇さんに繋がらない、

しかし、信用できる人物へ、その時に

お渡しします。


もし、我々が約束を破り、金を渡さなかったら…。

灰薔薇さんなら、そう考えるでしょう。

ですから、灰薔薇さんがその先に備え、信用する人間に、銃を持たすなり、手榴弾しゅりゅうだんを持たすなり、GPSを持たすなり、

何だって、細工さいくはできるでしょう。


それに、空の上です。

我々が、何をしても、ヘリが堕ちればおしまいです。

また、灰薔薇さんが信用する、その人間を我々が殺し、

妹さんのご主人に、我々が銃をけ、我々の行きたい場所へ辿り着いたとしても、その場所も灰薔薇さんには筒抜つつぬけでしょうし…。


それに、残りの半金をケチって、リスクをおかし、灰薔薇さん達にも一生追いかけられる…。

全くわりに合いません。

かと言って、全額渡してしまえば、

ヘリが来ない可能性が出てきます…。


ですから、先程、灰薔薇さんが言われた、


『最低限として、先払いにしてもらう。』


ですが、我々も最低限として、

この条件は、呑んでもらいたい。

いや、

だからこその提案です。



…どうでしょうか?。」


灰薔薇は、右手を左頬ひだりほほに手をあてながら、俺の目を見つめながら、


灰薔薇

「ハハハハ、条件を、ひっくり返してきたか!んー…、なるほど…、いいだろう。

わかった。それでいい。」


今度は俺が、灰薔薇の目を真っ直ぐ見つめ、


「またもし、この他にも細かい話し合いや、この辺のリスクヘッジなどの話を詰めたいなら…黒さんに連絡してください。今度は黒さんもまじえて話しましょう。


どうでしょう?灰薔薇さん。」


灰薔薇

「ああ、わかった。でも…黒さんを交えて詰める話は無いが笑。ただ何かあったら水宇羅さん!

あんたに連絡入れるよ。

ところで水宇羅さん…いや、何でもない…ハハハ、では、よろしく頼むよ。」


「はい!よろしくお願いします。」


こうして、灰薔薇との掛け合いは終了した。

下調したしらべをして、大体のことは想像出来るが、会って話してみないと、わからない部分が沢山ある。

今回は、うまく事が運んだ。


俺は、胸を撫で下ろし、安堵あんどしながらも、

やりげた達成感たっせいかん

そして、胸が踊っている自分を見つけていた。

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