第10話

さぁ、幕は上がった。


腹をくくれ!

頭は、こおりのように冷静に、心は、太陽のようにギラギラと熱くするんだ。

よーし!さぁて、それじゃ行こうか!


俺は心の中で叫んだ。


「先ほどは失礼しました。内輪うちわの事情を持ち出してしまいました。黒さんからは、私が一任いちにんされていますのでよろしくお願いします。

では、早速ですが灰薔薇さん、今回の件というのは、

単刀直入たんとうちょくにゅうに申し上げると、

妹さんを幸せにするために、私達に是非協力ぜひきょうりょくさせてほしいということなんです。

灰薔薇さん…いかがてしょうか?。」


灰薔薇

「…ほうー、何を言うのかと思えば、妹を幸せに…ねぇ。

で、あんた、どこまで俺達の事調べたんだ。

何か弱みでもみつけたか?何も弱みなんか無ぇーけどな!。」


突然、灰薔薇の口調くちょうが変わった。

しかし、俺は話を続ける。


「灰薔薇さん、先程さきほども申しました通り、協力させて頂こうと思ってるだけです。ただ、それだけなんです。」


灰薔薇は眉間みけんにシワを寄せ、俺を睨みながら、


灰薔薇

「なぁ、水宇羅よー、あんたよー、

なんの見返りもなしに、ただ、協力したいって…。ハハハ。

ボランティアじゃあるまいし、

俺達の世界にボランティアなんてものは、存在しないんじゃないのか?!。」


灰薔薇は、けわしい表情と強めの口調で、問いかけてくる。


しかし、俺は心の中で、「よし!イケる!。」そう言ったのだ。そして、自信満々じしんまんまんの表情で、


「灰薔薇さんのおっしゃる通りです。我々は慈善事業じぜんじぎょうでもなければ、ボランティアでもありません。だからもちろん、きっちりと見返りは頂きますよ。安心して下さい笑。」


灰薔薇は、然も当然だろうというように、呆れながら話す。


灰薔薇

「フン。やっぱりそうゆう事かよ笑。そりゃそうだよな。まぁ、いいや!で、なんの話だよ?!おぅ!。」


この灰薔薇の厳しく威圧的いあつてきな問いかけに、俺はとても冷静に、そして静かに話す。


「灰薔薇さん、妹さんの旦那だんなさんで、元は、あなたの部下だった男のことで、何とか妹さんの力になってあげたいんですよ。いや、それが我々には出来るんですよ。」


灰薔薇

「ほうー、よく調べたじゃないか…

かなり深く調べたようだな…。

まぁいい。

何故知ってる?どこで聞いた?とは聞かないでおこう。

確かに妹のことは、今の俺の最重要さいじゅうよう課題かだいだ。

ただ…俺が関わってるとなると、妹は必ず拒否するだろう…だから…。」


灰薔薇は、少し哀愁かげのある表情になった。


「ですから灰薔薇さんは、一切 関与かんよしてない!関係してないって事にしたい。…じゃないんですか?。」


灰薔薇

「ふん、…ああその通りだが…なぁ、お前!俺の事どこまで調べたんだ?!。」


聞かないと言っていた灰薔薇だったが、

我慢がまんしきれず、聞いてきた。


それに対し、俺は少しまよったが、

ありきたりの言葉では、逆に、不審ふしんがられると思い、真実ほんとうのことを、言おうと決めたのだ。


「…普通は、通常は一切言わないんですが…

今回は特別ですよ。

知ったことを話します。


灰薔薇さんと妹さんは、施設しせつで育ったんですよね。

ただ、灰薔薇さんが小学六年の時、小学二年の妹さんを連れて、施設から脱走だっそうした。

施設の施設長しせつちょうがとても意地悪な…いやゴミと言うべきか、

ただの、変態カス野郎だった!!

灰薔薇さんは、ソイツの暴力のぐちとされ、妹さんは……いや、これは言わないでおきましょう。


小学六年になった時、灰薔薇さんは、とうとう我慢できなくなった。

ある日灰薔薇さんは、あらかじめ町工場で拾ってきた鉄パイプを用意し、施設長がトイレに立つのを待った。

そして、施設長がトイレでようしているその時、後ろから、


ガツン!


その後は、ただただ、その鉄パイプでなぐりまくった。

そして、施設しせつから脱走しましたね。

その後は、街の路地裏ろじうらかくれ、残飯ざんぱんあさりながら、また、パンなどを盗みながら、

妹さんと逃亡生活とうぼうせいかつをした。

ある日、盗んだパン屋のオヤジにつかまって、

ぼこられられしてる時、一人の男に助けられた。

それが、灰薔薇さんの組織のボスだった。

それからは、そのボスの所で世話になったんですよね。

しかし、逃亡していた灰薔薇さんと妹さんは、…とうとう捕まってしまった…。

その後、灰薔薇さんは少年院へ、妹さんは、

また違う施設へ…。

それから年月が経ち、少年院を出た灰薔薇さんは、必死で妹さんを探した。しかし、見つけられなかった。

そして、灰薔薇さんは放浪ほうろうしながら、妹さんを探したんですよね。」


俺が話していると、

灰薔薇の目はうるみ、そのままでは今にも涙がこぼれ落ちそうになっていた。

そして、

それを隠すかのように、灰薔薇は少し上をながら…

コーヒーをすするのだった。


そして…

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