第7話

俺達は、ジローのパンツのことで頭がいっぱいであった。

しかし俺は…みんなとは少し違っていた。

そして…


鮫頭

「なぁ!あの時、装着そうちゃくしたパンツ、お前も見たいよな!。…

なぁ!おい!!聞いてんのかよ水宇羅!。」


「ん?!あー、すまん聞いてなかった。」


ジロー

「どしたの?水宇羅ちゃん、ボーとしちゃってさ笑。」


「いや、ちょっとな…で、なんだったけ?。」


俺もジローのパンツには興味津々きょうみしんしんではあったが、まだ心の中は…複雑ふくざつだった。


鮫頭

「ジローの、パンツの話だよ!あのパンツ見せろって言っても、まったく見せねぇからよ…。

いい機会きかいだろう!。お前も見てぇだろ?。な!。」


俺は自分の心のうれいより、ジローのパンツへの好奇心こうきしん優先ゆうせんすることにしたんだ。


「あ、あー。そうだな…うん、よし、そうだ!見たい!。なぁージロー、

見せてくれ!。」


ジロー

「や、いやだよ!。見せたくねぇよ!。だってさ…それに…それに…何でみんなの前で…うーくそ!。」


そう言うと、ジローはうつむいたままだまってしまった。


そのやり取りを、黙って見ていた黒さんであったが、

さすがに見かねたのか、たすぶねを出した。

かに見えたのだが…。


黒さん

「ジロー…お前のその気持ち分かるぞ。嫌だよな!。そうだよ、嫌だよな…。

みんなして見せろ見せろって…なぁ分かるぞ!

ジローちゃん。でも、今回は見せるべきだ!!。見せなきゃ男じゃないだろ、

なぁージロー!。」


本来ならば、黒さんはそんなことを言う人間ではなかったはずだった…。

その黒さんも普通の人間だったことに、俺はホッとしていた。

そして、俺達は好奇心旺盛こうきしんおうせいなガキの頃のように、ドキドキワクワクを、ジローには悪いがおさえ切れないのだった。

それでも鮫頭と俺は、黒さんにツッコミを入れる。


鮫頭

「黒さんは、止めるかかりだろ!!笑。」


「笑ホントホント、黒さんは止めなきゃ笑。」


黒さん

「笑ふふ。でもみんな…ホントは見たいだろ!。

どうゆう物をいているのか…。

興味あるだろが!。」


この黒さんの言葉は、俺達の心を一つにした。


何としてでも見たい。そう思うのは、

人間としてのさがでありつねであるのは言うまでもない。


鮫頭

「ああ、俺は見たいぜ!。」


「俺も…見て見たい!。」


黒さん

「だよな笑。じゃ、そうゆう事で、…ジローちゃん!思いきって見せてみよう!さぁ見せてごらん。」


俺、鮫頭、黒さん三人にたたみかけられ、

こまりながら、納得なっとくできないといった表情をした。

そして、ジローは渋々しぶしぶながらも、半ギレしながらズボンをろすのだった。。



ジロー

「な、何だよ!黒さんまでよー。チクショー!…わ、分かったよ。ったくよー!ホント、しつけぇーな!。

見せりゃいいんだろ、見せりゃ!ほら、とくと見やがれってんだ!!。」


そう言ってジローは、ズボンを思い切り下ろした。

すると…それは、鉄のパンツという感じではなく、

普通ふつうのパンツに、アルミの装飾そうしょくをしたかのような、

そんな感じの物を履いていたのだ。

いていうなら、特撮とくさつの○○ラ○ダーのような、ヒーローものがいていそうな感じのパンツであった。


鮫頭

「へぇ~。意外いがいな感じ!。

もっとこう…、何て言うか…、鉄の、あの、ガチガチのやつみたいなもんだと思ってた!。

実際じっさい見ると、全然ぜんぜんちがうな!いやーびっくりだぜ!。」


「ホント!すげぇ!。…なぁ、これって履いてておもくないのか?。」


ジロー

「そりゃ重いにまってるだろ!何て言ったって、アルミをおもに使ってるとはいえ、普通のパンツにくらべれば…重いよ。そりゃあよー。」


俺、鮫頭、黒さんの三人はテンションが上がりまくり、目をキラキラさせ、矢継早やつぎばや質問しつもんした。


鮫頭

「おい!この、この黒い部分、《ぶぶん》ここの部分!何で出来てるんだ?。なぁ、なぁ!。」


ジロー

「んーと、なんとなく俺もかぎ開けタイムの時に聞いてみたんだけど、なんだったかな…え~と…ほら、あのー何とか繊維せんい、何だったか…何繊維だったか…あーここまで出てるのによー。」


ジローはのどを右手で抑えながら、然も苦しそうに言っていた。

だが俺は、直ぐにピンときていた。

そしてその答えを…さまズバリと答えたのである。


「ケブラー繊維。」


ジロー

「!そうそう、そのケブラー繊維で出来てるんだよ。」


実のところ俺は、鍵開けタイムという言葉にかったのだが、ケブラー繊維というワードに、かんがえを強くせていた。



「ケブラー繊維で出来ているということは…なるほど…。

今、ジローの履いているパンツのケブラー繊維とは…パラ系アラミド繊維で、出来ているってことか…なるほど…。」


黒さん

「水宇羅、何かくわしそうだな?!。」


鮫頭

「詳しいのはいいけどよ、俺には、何を言ってるんだか、さっぱりだぜ!。分かるように話してくれよ。」


「ああ、分かった。でも、俺もそこまでは詳しくねぇーから、簡単にしか言えねぇけど…それでいいんなら…。」


黒さん

「ああ、それでもいいから言ってくれ。」


鮫頭

「おう、教えろ。」


ジロー

「…」


「ああ、分かった。まず、ケブラー繊維っていうのは、ホントはアラミド繊維って言うんだ。

この、アラミド繊維には、ケブラーとコーネックスがあって、強度性きょうどせいが高いものをケブラーアラミド、耐熱性たいねつせいが高いものをコーネックスアラミドって呼んでる。で、強度にやや優れているものを、パラ系アラミド繊維、耐熱性にやや優れているものを、メタ系アラミド繊維って呼んでる。

まあ、もう少し突っ込んで言うと、パラとメタに別れるんだけどね。パラとメタの違いとは、

パラ系は機械的強度、耐切創性たいせっそうせい振動減衰性しんどうげんすいせいに優れていて、メタ系は耐熱性、難燃性なんねんせい耐薬品性たいやくひんせいに優れているんだ。

もっとくわしく言ってもいいけど…

分かりにくくなるから止めとこう。

要するに、パラ系は簡単には切れにくい繊維。

メタ系は燃えにくい繊維と考えれば分かりやすいと思う。

考えるに、ジローのパンツに耐熱性は求めない。したがって、簡単にやぶれたり、切ったり出来ない、強い繊維が必要なため、使われている繊維は、強度性に優れた、パラ系アラミド繊維を使った、いわゆるケブラー繊維で出来た、パンツってことだな!うん。」


黒さん

「…なるほど、なるほど。」


鮫頭

「黒さん、嘘つけー!。ホントに分かったのかよ?!、俺は、何がなんだか、チンプンカンプンだぜ!。」


黒さん

「…ハハ、大体はな。」


鮫頭

「ホントかよー?!」


「まぁ、ちょっと難しかったか?!。」


俺の言っていることは、あまり理解されていない感じだった。簡単に言ったつもりだったが…

ジローと鮫頭は分からないだろう…

黒さんも怪しい限りだ…

そしてジローは、そんなことなど関係ないとばかりに、自分の言いたいことを、すぐに説明するのであった。


ジロー

「よく知らないけど…、防弾ぼうだんチョッキとかにも、使われてるらしい。

あと、ボディーガードとか、軍隊の隊員達の、シャツやジャケットなんかにも、使われてるらしい。」


確かにそうなのだ。

強度的に優れ、軽く、動きやすいため、多くの軍隊やボディーガード達が、使用しているのだ。それは即ちパラ系である。

ちなみにメタ系は、消防士などが着る防火服に使用されているのだ。


「めちゃめちゃ知ってんじゃねぇか!笑。

でもそれって、履いてて痛くないか?

あと、どうやって小便しょんべんするんだ?。」


ジロー

「ああ、内側は厚めのコットン100%、吸水ポリマーでおおわれているから大丈夫!あーあと、小便はこの穴から出るんだよ。」


ジローは、股間こかんを指差しながらその場所を教えてくれた。

その小さな穴からは、何か突起物とっきぶつが出ていた。そしたその突起物の先っぽは、穴が空いていた。


「あー、そうなんだ。でも、小便 逆流ぎゃくりゅうしてこないのかよ?

あと、そんなところからちゃんと出るのかよ?。」


するとジローは、くわしく教えてくれた。


ジロー

「ほぼ大丈夫だよ!内側がじょうごみたいになってて、そのじょうごの内側も吸水ポリマーが付いてて、普通に小便が出来るんだ。まあ、少しは戻ってくるけどね。竿さおの周りも、さっきも言ったけど、吸収ポリマーでできてるから、さらっとしたもんだよ。」


「へぇ~ー~ー。」


鮫頭

「すげぇな!…。」


黒さん

「そういえばジロー、さっき鍵開けタイムとか何とかって言ってだけど、この貞操パンツげるのか?。」


この黒さんの質問に、嬉しそうにジローは答える。


ジロー

「うん!そうだよ。1日1回、係の奴が来て、

中の吸水ポリマーの取り替えをして、シャワー浴びさせてもらう!最高の瞬間だよ。」


黒さん

そうか。少しでも快適かいてきで良かった!

ずっとじゃ、れて病気びょうきになっちまうもんな!

本当に良かった!」


黒さんの、ちょっとした優しさが、垣間見得かいまみえた瞬間だった。


ジロー

「う、う、…うん。グス。」


「え、え、おいおいジロー、泣いてんのか!?。」


ジロー

「な、な、泣いてない。泣いてねぇよ。」


鮫頭

「ふ、良いじゃねぇか!泣いたってよ!

黒さんの言葉ことばが泣けたんだろ。」


ジロー

「だから、泣いてねぇよ!しつけぇな!」


鮫頭

「わかったよ。すまん。そんなつもりで、言った訳じゃねぇんだけどよ…。」


黒さん

「まぁまぁ、もういいじゃねぇか!

なぁージロー!。」


ジロー

「ああ、いいよ、もう。ホントに泣いてねぇけどな!。」


黒さん

「ああ、分かってるよ。ジローは泣いたりしねぇもんな!。」


俺は、そんな会話を聞きながら、一つの疑問が頭をもたげた。

俺はその疑問をジローにぶつけた。


「なぁージロー、お前、今まだ、その貞操パンツ履いたままだけど、どうやって小便してるんだ?。吸水ポリマー、変えてないだろ…。」


ジロー

「ハハハ、水宇羅ちゃん、一体何を言ってんの?吸水ポリマーは変えなくていいだろ!だって貞操パンツの鍵外して、小便するに決まってるんだからさ笑。しっかりしてくれよ。」


!!

俺達三人は、あんぐりと口を開け、しばく固まったまま、動けなかった…

ジローは貞操パンツの鍵を持ってる…

なのに貞操パンツを今だに履いている…

へ、変態なのか…

そして今度は俺に変わって鮫頭が話す。


鮫頭

「なぁ…ジロー。お前、貞操パンツの鍵持ってるのかよ?。」


ジロー

「笑だ·か·ら·さっきも言ったでしょ。鍵は持ってるよ。」


鮫頭

「何でお前が鍵持ってるんだ?。」


ジロー

「ホント…どうしようもないなぁー。あのね、係の奴ったらさー、鍵を二つ持ってたのよ。予備なんだろうね。だけどアイツバカだから、予備の鍵も使う鍵も一つのカラナビに一緒にしてたんだよ。それで、アイツったら、ヒヒヒ笑、ある日の鍵開けタイムの時に、忘れて行きやがってさー笑。そんでもって、そのうちの一つを俺ちゃんがったんだよ。アイツったら、血相けっそう変えて戻って来てさー、あちこち焦って探してた笑。だから、俺ちゃんが教えてあげたのよ。鍵探してんなら、あんたさっき、ソコに置いてたぞってね笑。そしたら、その鍵を急いで取って帰って行ったわ笑。」


鮫頭

「…カラビナに鍵が一つしかないなら、また戻って来ただろー。」


ジロー

「いや、戻って来なかったよ。」


鮫頭

「何でだ?。」


ジロー

「ホントに鮫ちゃんも、ダメだねぇー笑。

組織に、鍵一つ失くしましたって言える?。答えはNOでしょ。俺に詰めよったとしても、俺ちゃんって…口軽いから、アイツ鍵忘れてましたよーって言っちゃうの、多分アイツも感じてたんだよなぁー。だから、無かったことにしたんじゃないかな。後日アイツったら、俺ちゃんに小さな声で、鍵一つ盗っただろ!って言うから、俺ちゃん大きな声で、え、何!鍵!って叫んだら、俺の口 ふさぎやがったもん。もう一人の係の奴がこっちをじーっと見てたし笑。だからそれ以上何も言わなかったよー笑。」


鮫頭

「…」


鮫頭は黙ってしまった。

それを見て黒さんが口を開く。


黒さん

「…なぁージロー、話は分かった。ただな…ひとつ言いたいのは、お前…鍵持ってて、その貞操パンツ脱げるのに、何でまた履くんだ?。」


ジロー

「え!……そうだよね…あれ、俺は何でまた履いてたんだろ……あ!そっか!答えは簡単だよ!。」


黒さん

「…何でだ?。」


ジロー

「ハハハ、黒さん、答えは…習慣だよ!。そう、習慣になってたんだよ。ホント、習慣ってのは恐ろしいね笑。」


黒さん

「…」


鮫頭

「…」


「ホントに恐ろしいのはジロー、お前だよ…。」


ジロー

「え!何で!何で!え!何が…。」


黒さん

「だからジロー、もうその貞操パンツ脱いでいいんだよ…誰にももう、強制されることはないだろうが!…。」


ジロー

「!!あ、そうか!あれれ…。」


俺達三人は頭を抱えた。

そしてその後、誰ともなく、クククというれた笑いに始まり、大きな笑いになった。


今思えば、この時がホッとした楽しい時間だった…


そうしてその後、鮫頭が今後の俺達の動きについて、黒さんに問いかけた。と同時に俺の地獄の時間が始まったのだ。



鮫頭

「ところで、黒さん…これから俺達どうすんだ…此処から出た後はどうするんだ!。」


黒さん

「まぁ暫くは待て!その後の事はもう手配てはいみだ。なぁ水宇羅。」


「あ、ああ…大丈夫だ。」


鮫頭

「ん…何だよ、なんか歯切れ悪りいなあ!。」


「…は?!いや、何が?!大丈夫に決まってるだろ!。」


鮫頭

「だったら、その大丈夫だって事、聞かしてくれや!。」


俺の頭の中は、またパニックだ。心の中は嵐が吹きすさぶ。どうしたらいいんだ!

思い出せない!手配って何だよ…何とか思い出すまで、時間をかせぎたい……


鮫頭

「おいどうした!何で黙ってる!

…なんか、やっぱりおかしいぞこいつ?!

なぁ、おい!。」


黒さん

「水宇羅がエスケープするために、骨を折ってくれたんだよ。それと頭打ってんだから、まだ色々と曖昧あいまいだろう!だから少しは待ってやれよ。まだ時間はあるからよ。」


鮫頭

「チッ、まぁでも黒さんが言うなら…分かったよ。」


俺は心の中で、黒さん、よく言ってくれた!と思った。これで、少しづつ記憶を取り戻す時間を稼ぐことができる。

そう、心の中で呟いていた。

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