第5話

黒さん

「ふー。何とか切りけたな。

とにかく、ここまではOKだな。」


鮫頭

「あー、だけど、これからどうするんだ?。」


ジロー

「あのさ、お、俺、び入れに行くよ…。」


「誰のために、ここまで逃げて来たと思ってんだよ!!バカか?!。」


鮫頭

「はー、ホントてめぇーだけはよー…はぁー。」


黒さん

「ジロー…今は、そのタイミングじゃねぇだろ。よく考えろ。」


ジローの言葉に、全員の気持ちが一致いっちした。

ジローを逃がすために、全員でこんなヤバい状況になり、

それを何とかここまで乗り切ったところに、

その言葉なのだ。


ジロー

「…そ、それはそうだけど…でも…わりぃ…。」

ジローはバツが悪そうに、そして項垂うなだれながら、ボソッと言った。


ただ俺は、なぜ、ジローが追われていたのか…

そして、詫びを入れる理由が分からなかった。

一体ジローは、何をやらかしたんだ。

それを知りたかった。


「ジロー、俺は何も聞かされてないけど、

一体何したんだ?。」


ジローはモジモジしながら…


ジロー

「いゃぁ、あの、実は…あのー、んーと…。」


ジローのハッキリしない、しっかり答えない、ウジウジしているその態度に俺は、痺れを切らして、強い口調で言う。


「何だよ。どうした、はっきり言えよ!

男だろうが!ほら、ちゃんと言え!。」


ジローは相変あいかわらず下を向き、ボソボソ喋る。


ジロー

「あのよー、あの、火馬田のオッサンの、あ、愛人あいじんに、ちょっとな…あはは…。」


ジローは卑屈ひくつに笑った。


火馬田といえば、組織の最高幹部さいこうかんぶだ。

その最高幹部のおんなに、手を出した…。

理由を聞いた俺は、何だかとても腹がった。


「何だよ!女かよ!そんなことのために、俺はされたのかよ!ふざけんじゃねぇぞ!。」


俺は運転中うんてんちゅうにもかかわらず、うしろを振り向き、ジローに言い放つ。


すると、黒さんが突然叫ぶ。


黒さん

「おい水宇羅!!前!前!前を見ろ!!。」


黒さんの言葉に、俺はすぐさま前を向いた。


「え!うわぁーーー!。」


俺は叫び、急ブレーキをかける。


キキキキキキキーー


三人は各々シートにへばりつきながら叫ぶ。


黒さん

「うおー!。」


鮫頭

「うあーーー!。」


ジロー

「ぐぅーーーー!。」


目の前に、車が信号待しんごうまちで止まっていた。

俺は更に力を込めてブレーキを踏みながら、ハンドルを切った………


間一髪かんいっぱつ衝突しょうとつけた。


四人

「ふーふー!おーぉ!あぶねぇー!ふぃー!。」


………


みんなホっとして、各々が胸を撫でろした。

何とか衝突をまぬがれ、ホッとしたのもつかの、俺はまだ腹のむしが収まっていなかった。

俺はふたたび、ジローにった。


「てめぇー、ジロー!お前が早くハッキリ答えねぇーから、事故 こすとこだったじゃねぇか!このヤロー!。」


ジロー

「事故って言ってもさー…。それは、お前がちゃんと前を見てなかったからだろ…。何だよ…俺のせいにしやがって…。」


ジローは、だんだんと小さくよわい声で言い返してきた。

俺は言い返されたことで、憤慨ふんがいした。


「何をーてめぇー!ふざけるなよ…マジでころすぞ!。」


ジロー

「…」


「黙ってねぇーで、何とか言えやコラ!。」


ジロー

「…」


ジローはまた黙っている。

そして……少しの間をけて、

黒さんが仲裁ちゅうさいに入った。


黒さん

「まーまー、水宇羅、落ち着けよ。俺が説明してやるからよ。」


俺は頭にのぼり、カッとなっていたが、黒さんに言われたからには落ち着くしかなかった。

もっと、言いたかったが口をつぐみ、

黒さんの話しをこうと思った。


「あー、分かった。聴くから説明してくれよ。」


黒さん

「…実はな…、こともあろうに、火馬田のオッサンの愛人と、ジローがデキちまったんだ。」


「な、何だよ!それマジだったのかよ!それって…。」


俺がまだ言い終えないうちに、黒さんは間髪かんぱつ入れずに怒声どせいをあげる。


黒さん

「黙って最後さいごまで聞け!…あと、前を向け!…おいおい!水宇羅、信号しんごう変わってるぞ!。」


「…分かった。すまん。続けてくれ。」


そして俺はし黙り、前を向き車を発進はっしんさせた。


ブロロローン。


黒さんはもう一度、説明をし始めた。


黒さん

「あー、そうさせてもらうよ。

ジローはな、火馬田のオッサンの愛人にれちまった。それで、どうしたらいいか、まず俺に相談そうだんしてきてな…、俺はめとけ!あきらめろって言ったんだけどよ…ジローの奴、情けねぇ~声で「こんな気持ちはじめてだ。この気持ちは止められねぇ~よー」って笑、全くなー、何だよって、感じだったんだがな…。

だけど何故だか…ジローのこと…応援おうえんしたくなった…。それで、ずっーと陰ながらフォローしてきた…。だけど今回それが火馬田のおっさんにバレて、今に至るったやつだ。」


俺は半分はんぶん呆れ、半分驚き、黒さんに言いかりをつける。


「は?ん?えーー!そんじゃ黒さん、あんた、

陰で応援してたのかよ!まったく…信じらんねぇー!。」


黒さん

「まーそう言うなよ。ジローも本気で惚れるなんて、今まで本当に無かったって言ってたからよ…。ついな…応援したくなったんだ…。な!ジロー笑。」


黒さんはジローを見つめながら、そして、

微笑ほほえみながら言った。

ジローも黒さんを何故か、

キラキラした気持ち悪い目で、ハニカミながら言った。


ジロー

「俺、命かけれるって思ったのが、…は、はじめてで、…この女のためならって、……

ポー!れる。」


俺は呆れて、そして吐き捨てた。


「いいおっさんが、ほほ赤らめて照れんじゃねぇよ!気持ち悪りいな!ケ!。」


ジロー

「だ、だってよー…。」


このやりとりをじっと見ていた鮫頭が、

全てを悟り、分かったかのように言い放つ。


鮫頭

「まー…いいじゃねえかよ。一生いっしょう一度のこい

な ん だ か ら よ笑。」


俺は、その言い方がまた気持ち悪くて、ルームミラーで鮫頭を見ながら噛みついた。


「あー!キャラにねぇ事言ってんじゃねぇよ!気持ちわりぃーんだよ!ったくよ!ホント、そろいも揃ってよー、何なんだよ…。」


鮫頭は、さほど俺の言い方が気に入らなかったのか、怒りを込めて言い返してきた。


鮫頭

「あー、なんだって!てめぇケンカ売ってんなら、そう言えよ!。」


その言葉に俺も言い返す。


「あーなんだって!聞こえねぇよ!このやろー。」


鮫頭

「おいおい兄ちゃん、おもしれぇなぁ!

殺ってやるよ!。」


俺の言い放った言葉にキレた鮫頭は、

俺を睨み付け、

殺気さっきを放つ。

俺も頭にきていたので、車を止めて、

ってやろうと、ブレーキを踏んだ。

キキー。

そこに、絶妙ぜつめょうのタイミングで、

ジローが止めに入る。


ジロー

「まあまあ落ち着いて。二人とも。な!。」


この絶妙のタイミングに、俺達三人もまた、

絶妙のタイミングで、声をあわせて

ツッこんだ。


三人

「お前が言うのかよ!!。」


ジロー

「ゴメン。」


この出来事できごとに、俺の怒りはえた。


そして間をおいて、黒さんが口を開いた。


黒さん

「おい、水宇羅、さっさと車出せよ。」


「あー、分かったよ。」


俺は言われた通り、再び発車させる。


ブロロローン


そしてまた、黒さんは話を続ける。


黒さん

「ただよ、あの女も…、ジローのこと最初さいしょに見かけた時から、気になってたらしい。」


鮫頭

物好ものずきもいるんだな!。」


「物好きもいるな。」


鮫頭と言葉がかさなった俺は、ルームミラーで鮫頭を見る。

すると、鮫頭もミラーしに、俺をキラキラした目で見つめながらこう言ってきた。


鮫頭

「なんか、初めてあなたと、意見いけんが合ったね!笑。」


俺は、先程さきほどからからんでくる鮫頭に、そして何か合わないそのリズムに、イラついた。


「あん!まぁな!。」


鮫頭は、俺のその言い方に、またムカついたようだ。


鮫頭

「てめぇなぁ!そんなに…」


鮫頭が言い終わるのをたずに、黒さんが間に入る。


黒さん

「もういいかげん止めろ!仲間であらそってんじゃねえ!…。

フー…。まぁ落ち着け。それからなぁー、

ちょっとここから真面目まじめな話になるぞ。

だから、ちゃんと聴けよ。」


いきなりトーンが変わったその口調に、俺はドギマギした。


「ま、真面目な話しって、…何だよ…。」


黒さん

「まぁ、黙って最後まで聞けよ。

実はな、ジローの女から、ジローがあるものを受け取った。」


鮫頭

「あるもの?あるものって何だよ!?。」


黒さん

「だから、最後まで黙って聞けって!。」


鮫頭

「わかったよ。そんなに、怒るなよ…。黙るからよ。」


黒さん

「おい、ジロー!女からあずかった物、出して見せろ!。」


ジロー

「あ、んん、おう分かった。」


ジローは女から預かったものを、

胸の内ポケットから取り出した。

俺は、ルームミラーでそれを見ていた。


「ん?何だ?…USBカードか?。」


黒さん

「そうらしいな…中身なかみを知りたいが、今、ここにパソコンも何も無いからなぁ…。

ただ、何かしらの資料しりょう、データが入ってる可能性が、十分じゅうぶんあるだろう。

帰って確認して、何なのか分かったらお前らにも知らせるから、俺が一旦いったん預かってもいいか?!。」


「ああ、俺は異論いろん無え!まかせるよ。」


鮫頭

「ああ、俺も、それでいいぜ!たのむよ。」


ジロー

「うん。頼むね。」


俺たち三人は、黒さんに全て預けることにした。

黒さんは、そのUSBカードを右手の人差し指と、親指おやゆびでつまみ、額まで上げ、色んな角度かくどから、まじまじと見ながら。


黒さん

「こりゃ、とんでもねぇ代物しろものかも知れねぇぞ!フフフ笑。」


黒さんは、ニンマリしながら笑っている。


鮫頭は黒さんを横目よこめで見ながら、

テンションを上げて


鮫頭

「よっしゃあ!それは、黒さんにお任せして、とりあえずAに向かおうぜ♪。」


「OK!Aで行こう。それから車乗りえてアジトに行こうぜ。」



…そうだったんだ…。

こうして俺達は、道中どうちゅう色々あったが、組織の追手おってをまんまと出し抜き、エスケープに成功せいこうしたんだ。

確かに俺達は…この四人は…つるんでいたんだ…。


それから…





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