第4話

その頃、俺達が脱出だっしゅつした店の前では…


組織の追っ手のそうリーダーが慌てていた。


総リーダー

「くそー!…しょうがねぇ…

おい!各班かくはんのリーダーに電話でんわしろや!

そんで、こう言え!


これから、カメラが付いてる店も入って、

捜索そうさくする!

ただし、店の中に入るのは二人ふたり一組ひとくみだ。それから、なるべくガラのわるくないやつえらんでさがさせろ!

それから、こっちから電話でんわ合図あいず出すまでは、

店の中には入るなってな!!


かったらさっさと電話でんわしろ!。」


組織の下端したっぱA

「分かりました。」


組織の下端Aは、持ってきたバッグから何台なんだいもの電話を出した。そして、一台の電話から各班の一人のリーダーへと…一台に一人繋がるように、素早すばやく電話をしていく。

その電話をけた各班のリーダー達は、

自分達の持ち場で、捜索できなかった店や建物の所へもどった。


組織の下端A

連絡れんらく終了しゅうりょうしました。

各班、店の前に待機たいきしたら、連絡れんらくするよう、

つたえました。」


総リーダー

「おう、そうか。フ…お前、なかなか使えるな。」


組織の下端A

「ありがとうございます。」


総リーダー

「おう。…それから、各班から連絡来たら、

そのまま、電話でんわ切らないようにつないどけ。」


組織の下端A

「分かりました。」


総リーダーはそう言うと、しばら

上をき、何かを考えていた。


総リーダーの頭の中では、シュミレーションが、おこなわれていた。


「…全員一気いっきに突入させて、

五分ごふん限度げんどか…

外には、ガラの悪いのが、ゴロゴロ居る…

更に、さっきからバタバタしてるんだ…

誰が通報つうほうするか分からねぇ…

いや、もう通報してるかも知れねぇ…

しかし…

カメラに映るのは、本意ほんいじゃねぇが、背に腹はかえられねぇ…

全くやりずれぇ…。」


総リーダーが考えをめぐらせているうちに、組織の下っ端Aに、各班の全てのリーダーから待機している報告ほうこくがきた。



組織の下端A

配置はいち付きました。」


総リーダー

「あー、分かった。一斉いっせいに各班突入しろ!。」


組織の下っ端A

「各班突入!…聞こえたか?!各班突入だ!

行け、行け、行けー!突入、突入!。」


各班のリーダー達が、次々つぎつぎと報告してくる。


各班のリーダー

「突入した。」

「今、入った。」

「OKだ。」

「今入った。」

「突入。」

「行ったよん。」

「二人入りました。」

「OK此方も行きます。」


組織の下っ端A

「了解、了解、了解、……総リーダー、各班突入したようです。」


総リーダー

「よし!…それじゃあ…。」


総リーダーは、其処に居た適当てきとうな二人を指差し、指示をする。


総リーダー

「おい!お前とお前、

この店の中に入って、捜してこい!

それから、電話は通話つうわのままにしとけよ!。」


組織の下端B

「分かりました。」


組織の下っ端C


「はい、それじゃ入ります。」


組織の下っ端Cは左手に電話を持ち、

二人は店の中に入り、おくえて行った。

奥へ来て、直ぐに二人は何かを見つけた。


組織の下端B

「え、何だこれは!なんだよこれ!

どうなってんだ!。」


組織の下っ端C

「はぁ、どうなってんだよ!…え!これは…。」


組織の下端A

「ん、どうした!何があった!報告しろ!おい!聞こえたら、報告しろ!。」


組織の下っ端Aは、電話でガナッている。


総リーダー

「?…ん…?おい、何があった!…チッ、電話代われ!。」


組織の下端A

「あ、ハイ、分かりました。どうぞ。」


組織の下っ端Aは総リーダーへ、電話を急ぎ渡した。

総リーダーは、組織の下っ端Aから電話をうばうように受け取ると、


総リーダー

「おい!どうした!何があった!報告しろ!聞こえたら、報告しろ!。おい!。」


その頃、ショックで一時的に呆然ぼうぜんとしていた二人だが、我に返った二人のうちの組織の下っ端Cは、電話に出た。


組織の下端B

「は、はい…な、中には誰も居ません。そ、それより…あのー…。」


総リーダー

「どうした!なんだ!…くそ!もういい!。」


総リーダーはそう言うと、

いても立ってもいられず、監視カメラのことなど忘れたかのように、

すかさず店のドアを開き入って行ったのだ。

そして、店の奥へと入って行った総リーダーが二人の下っ端のところで見たものは…


総リーダー

「……!!こ、これは…くそー!やられた!

此処にひそんでたいたのか!くそったれがー!。」


そう言うと、総リーダーは持っていた電話を、床に叩きつけた。

電話は壊れながら、薄暗いすみの方へころがっていった。


そしてそのまま、しばらく動かなかった。

そして、少し間をおいて冷静さを取り戻すと、

むねの内ポケットから、もう一つの電話を取り出した。

そして組織に電話を入れた。


総リーダー

「あ、俺です。もうし訳ありません…逃げられました。

…あ、ハイ。ええ、そうですね…。はい…はい…分かりました。はい、戻ります。」


組織の総リーダーはそう言うと、ゆっくりとあるきだした。

そう、ゆっくりとゆっくりと…

そうして店の外に出て来た。


店の外に出て来た総リーダーは、左右を何気なく見ながら、てんあおいだ。


そして、また、ゆっくりと歩きはじめた。


そのさまを見た組織の下端達は、

え!何があったんだ!というような、

頭の上には???が沢山あるように、たがいに顔を見合わせた。


組織の下っ端達

「え、一体どうしたんだ。

え、え、何だ。何なんだ?何?。

ん、どゆこと。何がどうした。」


など会話かいわをしている。

そしてその中の一人が、その疑問ぎもんを徐に総リーダーに聞いた。


組織の下端A

「あ、あのー、どうかされたんですか?。」


総リーダー

「……ん、ああ、すまん、何だった?。」


総リーダーは、心ここにらずのようなほうけた顔で、聞き返した。


そして、組織の下っ端Aはもう一度聞き直した。


組織の下端A

「あ、いえ、あ、あのー、どうかされたのかなーと…?!。」


総リーダー

「…ああ…いや、とにかく…

全員に連絡を入れろ…全員 撤収てっしゅうだ。」


組織の下端A

「え!ハ、ハイ!わ、分かりました!!連絡します!。」


そう言うと、総リーダーはだまったままゆっくりと、自分達の移動いどうしてきた車へ向かって歩きだした。

そして、歩きながら何気なく見張りの男に話しかけた。


総リーダー

「なぁ、おい。勿論だとは思うけどよ…、店の外には、誰も出て行かなかったんだな?!。」


見張りの男

「あ、えー、ハイ。俺がてたかぎりでは、誰も店の外には出て行きませんでした。…ただ…。」


総リーダー

「! おい!ただ…ただ何だ!言ってみろ!!おい!!。」


総リーダーの、そのあまりの迫力はくりょく圧倒あっとうされ、少し後退あとずさりした見張りの男は、ひるみながらも答えた。


見張りの男

「え、あ、あ、あの、えー、ハ、ハイ。

写真の男達は見てませんが、……

ただ、タクシー運転手が店から出て行きました。それからタクシーが店の前で停まってました…。

…多分俺が見張る前に店に入って、飯食って帰ったんだと思います。あ、それと、あのー、タクシーに…。」


総リーダーの顔はみるみる紅潮し、になった。

そして、怒号どごうが響いた。


総リーダー

「バ、バカヤローが!!テメェ!

飯食ってただと!アホが!…

くそ、おい!それから何だって!

まだ何かあんのか!タクシーって何だ!おぅ!こら、早く言え!。」


見張りの男は、その怒号に完全にビビってしまっている。


見張りの男

「い、いや、あ、あ、あ、あの、ハ、ハイ。えーと、ゴクン…み、店の前

に、タ、タクシーが、あの、店の前に停まって、…ちゃ、ちゃんとは見えなかったんですが、

ふ、二人、…い、い、いや、三人ぐらい、三人ぐらいの男?女?も…、いや、だと思うんですが、え、えーと…いや、多分男だと…あ、あのー…。」


総リーダーは、右手で髪の毛をグシャっとしながら、てるように言った。


総リーダー

「あーーー!もういい!!!バカが!

そいつらが、俺達が追ってた奴らだろうが!!。」


見張りの男

「え、ええ、あ、い、いや、だ、だって、服装ふくそうとか特徴とくちょうが、全然ぜんぜんちがいましたよ!だ、だって俺、ちゃんと見てましたもん!

本当に!ええ、そりゃ本当に!。」


総リーダーはそれを聞き、呆れながら言う。


総リーダー

「…はぁーー、アホが!だからお前はバカなんだよ!

そいつら、変装してただけだろが!ボケ!。」


見張りの男

「!え、あ、あ、アワワ…そ、そ、ま、まさか、え、あ、い、いや、そ、そんな…。」


どんどん青ざめていく見張りの男から、

視線をはずし、

天を仰ぎながら、総リーダーはまた、ゆっくりとすすめていく。

そして、ひとごとをブツブツ言いながら、また車へ向かっていくのである。

すると、総リーダーは突然立ち止まった。

そう、何かをひらめいたのだ。


総リーダー

「そうかー!!あの時すれ違った、あのタクシーか!!!

くそー、そうだったのか!

此方へ向かってた時、すれ違ったあのタクシーへの、何か分からない違和感いわかんは、それだったのか!。…自分の直感ちょっかんしんじていれば…くそ…。」


総リーダーは、そう独り言を呟くと、また右手で髪の毛をグシャっとしながら、乗ってきた車の中に乗り込んだ。

その黒いワンボックスカーの、三列さんれつある座席の、一番後いちばんうしろの右角みぎすみすわると、ふかいため息をついた。


総リーダー

「………フーーー……」


総リーダーは、深くため息をついた後、何も言わず、視線はずっと床を見つめていた。


そして組織の下っ端達も、各々乗って来た車に、つづいて乗り込んだ。 


「バタン、ドン、バタン。ドン、ドンドン。バタン。」


車のドアが閉まるおと連続れんぞくする。


「キュルキュルブーン。キュルブーン。ブーン。」


エンジンのまわる音がし、先頭せんとうの車につらなって、ゆっくりと走り出して行ったのである。


その頃、まんまと脱出に成功せいこうした俺達は、

悠々ゆうゆうと走るタクシーの中にいた。

そして、これからどう手を打つか、話し合いをしていたのだった。


そして…

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