27.TV取材とジムのオープン
「……よし。その1/50の機能でやってみよう。名前は…そうだな…リラックス・ポットっていうのはどうだろうか?20分ほどでリラックスできてリフレッシュできるってことで。でも250か所にそれぞれ何台持ってこれるの?」
「とりあえず一か所10台で2,500台はすでに地球号に転送済みです。」
やたら用意がいいね。……まさかこの事態はすでに想定済みなんだろうか。
俺でも危惧したぐらいだもんな。でもそれだけ大量投入して帝国にメリットがあるんだろうか?サンプルデータとしてはあるんだろうな。
「ではさっそくリラックスジムとして、オープンに向けて動き出してよろしいでしょうか?」
「そうだね。できればなるべく人が多いところから始めようか。ただ、従業員を雇用するにも準備はいるだろうから、1か月後をめどにして動いてみようか。どうだろう?」
「それでよろしいと思われます。それではテレビの取材も受け、そこで告知するのがよろしいかと存じます。」
「そうだね。じゃあ、誰か広報活動のできるアンドロイドでチームを作って、そのチームで対応をお願いできるかな?」
「かしこまりました。それではさっそくテレビ局に取材の許可とチームの編成を行い、リラックスジムオープンのための物件確保、スタッフ雇用に向けて準備を開始いたします。」
こうして、リラックスジムは動き出した。
……いや。
ちょっと待ってくれ。
確かに経営は順調に滑り出したんだが、海外からの引き合いが殺到しだした。
広報チームはすこぶる優秀で、雅子さんが所属していた老人会にリラックス・ポットを持ち込んで全員若返らしたっていうパフォーマンスがテレビで放送された。リラックスジムへの告知もしたもんだから入会希望が殺到。
愛ちゃんがフィットネス&ヘルスという会社を立ち上げて、そこで一括業務を集中させた。
一か月後には次々にリラックスジムがオープンしだした。
ここまでは計画通りだ。
これで株式会社宇宙船地球号への苦情はないだろう。
問題はそのテレビ放送が動画サイトにアップされて、世界中に流れたことだ。
広報チームも併せて入会方法や料金説明を動画サイトにアップして、これまた両方とも再生回数が10億回を突破した。
このポット自体が機密情報の塊なので、入会審査を行い、怪しい人はこの審査ではじいた。もちろんはじかれた人は文句を言ってきたけど、様々な証拠を提示されて
「お客様はこのような事情で弊社のジムへの入会はお断りいたします。」
と、説明すると、青い顔をして帰っていった。
そのような人たちは例外なく産業スパイや共産圏のスパイだった。
敵対しないまでも仲良くする気がない国の人にやさしくする気はない。
そんなのは友人関係でも当たり前のことだ。
決して差別ではない。
広報の担当者は入会を断られた人たちの苦情を受けたテレビ局の取材にそう答えた。
さすがに実名と証拠の動画を見せたところは放送ではカットされていたが…。
その後、そういう取材は影を潜めた。
日本のテレビ局のほとんどは共産シンパの連中がテレビ番組作ってるからね。
それにしてもみんなよく入会するよね。
だって一人当たり入会金が10万円。1回のジムの使用で20分のリラックス・ポットの使用が1万円するんだよ?
月会員などは募集していない。だってすでに予約が3か月待ちのところも出ているからだ。
あまりにも効果が高いものだから医薬品メーカーをはじめとした製薬会社の突き上げを食らい、とうとう厚生労働省が査察に訪れた。
しかしいくらポットを調べても非合法なものは出てこない。
検査の結果はただのベッドだということで結論が出た。
地球の技術でわかるはずもない。
機械的なものはその骨組みや素材そのものの中に組み込まれている。
また、簡易版にしたためにその機械部分もごく小さなもので済んでいる。
査察が終わって結論が出てからも製薬会社の嫌がらせが続いたが、
もちろん、陰から厚生労働省と公安に製薬会社の不正や癒着の証拠とリストが出回ったからだ。
愛ちゃんがそのニュース報道を見てにやりと笑っていた。
うん。聞かないでおこう。
強奪未遂事件も数件発生していた。
犯人はやはり共産圏のもので、それでも地球号からの監視の目は潜り抜けられず、すべて未遂で終わっている。武器や銃器の保有が認められた場合は警察に所持したまま拘束して放置した。
建設機械で突入しようとした荒い手口には、建設機械がどうやっても動かなくなるという怪奇現象の元、未遂に終わっている。
これらも日本で荒稼ぎしている窃盗団などなので、拘束の上、警察にお届けさせてもらった。
中にはテロ行為を仕掛けようとしていたグループもいたが、それも警察への事前の通報でアジトそのものが検挙されている。
まったく、どれだけ必死に若返りたいんだ。
いや、人々が健康であればあるほど自分たちの利益が減る人間がいるってことか…。
さて国内は落ち着いてきたので海外への対応をしないとまずくなってきた。
肥満体国である合衆国。中でも美の追求に余念のないハリウッドからの引き合いが多い。
中には個人でいくら出してもいいので購入したいという女優も現れたが、個人での購入はすべてお断りしている。
海外にリラックスジムをオープンしてもいいんだが、それには輸出という大きな壁がある。
何せ現時点でそれらしいカモフラージュはしているがリラックス・ポットを生産しているのは株式会社宇宙船地球号となっている。
つまり、製造実態がないのだ。
それに米国の製薬会社もすでに敵に回っている。
関税にかこつけて、製品検査だの理由をつけて解体、調査するに決まっている。
申し訳ないが海外での需要にはこたえられない。
これを広報チームが動画サイトにアップすると、とたんに火が付いたようなパニックが起こった。
製薬会社へのデモ活動やハリウッドの俳優組合からかなりの圧力がかかったらしい。
最後には合衆国大統領までテレビのインタビューに対してコメントさせられていた。
「フィットネス&ヘルス社の諸君。ぜひわが国にもリラックスジムを開業してほしい。入国審査に関しては違法なものでない限り許可し、それ以上の妨害が入らないことを約束する。」
この大統領の異例のコメントの裏には大統領夫人からの連日連夜に及ぶ抗議により、執務すらままならない状況となっていたことが後に分かった。
JAROからも海外への進出の打診があった。
日本国が海外進出への妨害をしているのじゃないかという邪推による中傷が後を絶たなかったようだ。
合衆国大統領の書簡も宇宙船地球号社に届いた。
時を同じくしてイギリス、フランス、ドイツ、スペイン、中共、韓国などからも出店要請が相次いだ。
中共、韓国以外の国には出店の準備を行うように指示した。
ただ、この2国に関しては
「現在までに貴国が軍事機密であろうと秘密を守れたためしがない。したがって、約束事を平気で破る国に当社が進出することはない。」
と返事を返した。
中共、韓国ともにこの返事に怒りをあらわにした。
日本政府へも抗議があったらしい。
しかし、一企業がどこの国に店を出すかを政府が口出しできるはずもない。
外務省の一部左派の連中が嫌がらせにも似た高圧的な要請をしてきたが、すべて無視した。
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