24.生涯の伴侶
俺は田中工業のスタッフが安全に研修できる施設を作る必要性を感じた。
こちらの一存では結論が出ないので後日田中社長と打ち合わせることにする。
それと俺たちもこの屋敷を拠点にした方が安全だよな。早瀬と山田には彼女がいる。
山下は俺と同じでバツイチだ。これも同じで子供はいない。
先日話に出た親戚縁者での不安定要素は、もともと疎遠でもあるため、連絡がつかないようにそれとなく縁切りしていくようだ。
どうもそれぞれ数名が反社会的な組織とつながりがあったり、それと知らずに付き合っていたりするらしい。
念のためそれらも監視対象とするらしい。
今日はここらで切り上げて、一度地球号に皆で戻ることにした。
転送を終えて、ロビー的に使っている会議室に戻ってきた。
「この部屋にソファーやリラックスできる家具なんかも置いておいてくれないか。」
俺は愛ちゃんにお願いした。
すぐにソファーとテーブル、バーカウンターや酒棚などが転送されてきた。
「ありがとう。助かるよ。」
俺は愛ちゃんにお礼を言った。
「いえ、礼には及びません、マスター。」
「でも本来愛ちゃんたちは、戦艦の業務をするのが主目的だろ?俺たちの補助ばかりで面倒掛けてるよな。ごめんね。」
「いえ、マスター。この地球での情報収集はすでに終わっております。あとは日々移ろうデータの収集という日常業務のみです。私たちアンドロイドも個性がございます。地上勤務で地球に降りることができた者たちは喜んでおります。まして、今までの作業では私どもの能力を使い切ってはおりません。十分に余裕があります。そうですね…戦時の1割も能力的に出してはいないのではないでしょうか。それに私どもはマスターに支払われた補償の一部にすぎません。もっと有効活用するためにも私どもの能力把握を一刻も早くしていただけることをお願いいたします。」
「あぁ。気晴らしになっているようならいいよ。かなりの作業をお願いしているからね。君たちがやってくれた作業を人間のスタッフでやるとするとどれだけの時間がかかることやら。非常に助かってる。ありがとう。」
「お気になさらないでください、マスター。」
俺たちはソファーでくつろぎ、各々ビールを継ぎだし、飲みながら話をしだした。
「ここまで重要案件が目白押しだと、俺たちもどっかに固まって住んだ方がいいのかな?」
と早瀬が切り出した。
「でも、彼女のことなんかもあるだろ?俺もこの先できないとも限らないし…。」
「いっそのこと、彼女たちもスタッフに組み込むか?今後結婚とかしたら、隠し通せる自信ないぜ。」
と、早瀬はビールを飲み干しながら一息に行った。
そりゃそうだろうな。
「早瀬のところの彼女はどんな人だ?」
「結構優秀だよ。元親会社のインターステートで働いてるから、事情も知ってるだろうし、呑み込みも早い方だからこの状態を理解するのも早いと思う。」
早瀬は両手を広げながらそう言った。
確かにな。この状態に理解示してくれる恋人って、結構まれかもな。
「うちはどっちかというとおっとりしてるんで、どうかな。」
と、山田は自分の彼女を思い出しながらそう答えた。
「う~ん。それぞれもう結婚を視野に入れているだろうし…。一度それとなくチームに加わらないか話をしてもいいかもしれないな。」
こういうのはメリットとデメリットがある。
「メリットは秘密の漏洩の可能性が少なくなること。
パートナーと一緒にかかわることになるからセキュリティが守られること。
デメリットはお互いに自由が利かなくなることだろうな。」
俺は二人にそう話した。
今後俺や山下にも言えることだ。
もっとも俺は当分結婚は考えたくもないんだけどね。
彼女ぐらいは欲しいんだけどな…。
「それでしたら、ぜひ私たちを皆様に使っていただきたいのですが。」
いきなり愛ちゃんがぶっこんで来た。
俺はブッとビールを吹き出してしまった。
「ごめん…。それって愛ちゃん。あのことだよね。」
「はい、もちろんですマスター。」
愛ちゃんはすまし顔でそう言った。
「ん?努。どういうことだ?」
と早瀬が俺に聞いてきた。
俺は仕方なく答えた。
「彼女たちは性行為も可能らしいんだ。もちろん俺はまだ試してもいないけど。愛ちゃんの説明によると彼女たち戦闘アンドロイドは戦場に出ることがその主任務なんで、兵士たちのそういうケアも機能として含まれているそうだ。戦場でのストレスから狂ってしまう兵士も少なくないようで、性的欲求を満たす意味で彼女たちにそう言う機能がつけられているそうだ。そうでもしないと見境なく現地の知的生物に対して蹂躙が始まってしまうそうだ。」
俺は続けて話した。
「いわゆる従軍慰安婦的な役割も担うようだ。日本で左翼の連中がバッシングしているようなものじゃないよ。あれは国が強制的に慰安婦にしたとか、証拠も根拠もなくただそう訴えるおばあさんがいる、だからそれが真実だと根も葉もないウソから始まってるからね。実際におばあさんたちは慰安婦だったらしいけどその供述もあいまいだし。まして国が強制的に慰安所で働かせたという証拠は一切ないからね。あのおばあさんたちは単純に親に売られたか、それでお金儲けしていた人たちだよ。
話がそれたね。
従軍慰安婦は現地で略奪や蹂躙を侵さないための抑止力としてこの地球でも合法的に存在している。」
「そっか…。そういう側面もあってみんな女性の姿をしてるんだろうな…。」
「男性型のアンドロイドもいますよ。女性の兵士もいますし、そういう趣味の方々もいますから。」
俺たちは顔を見合わせてため息をついた。
性の問題って難しいね。
「恋人をここに連れてくるってことはそういうことも露見するってことなんだと思う。ちょっと慎重に考えよう。結婚して地上に住んでも、セキュリティは守られるように愛ちゃんにお願いするし、大丈夫だよ。」
「ただ、今回みたいに家に帰れないことが頻繁に起こると浮気の心配もあるしな。努は思い知ったんだろうけど。」
と早瀬は笑いながら俺を小突いてきた。
「ああ、あれは結構きついぞ。実際のところあのメディカル・ポットもアンドロイドたちも俺たちを24時間働かせるために存在しているようなもんだからな。俺は先日気づいたんだ。これって社畜製造機じゃないかって。」
俺がそう言うと3人は声をそろえて
「「「確かに。」」」
と答えた。
「そういう意味で言うと社畜は幹部連中だけでいいのかもしれないな。それなりの報酬はもらうけどね。」
「ああ、期待してくれていいぞ。6,000億円なんて金があっても使いきれる気がしないからな。とりあえずスカウト料は支払ったんで、年俸1億で手を打ってくれ。」
俺たちは笑いあっていた。そこへ愛ちゃんが
「マスター、少し情報が古くなっています。現在マスターの個人資産は700億円を超えて増えています。補償の金につきましては1tをブラックマーケットに流したのみですので、99tが残っております。」
……まだこれ以上増えるのかと少し顔が引きつった。
俺たちは明日以降にそれぞれどういう風に生活するかを考えまた話し合おうと今日はお開きにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます