23.大豪邸
俺たちは都内にある拠点の一軒家に向かった。
このあたりって、かなりの高級住宅地だったはず。
いくらしたのか怖くて聞けない。
「お金で買えるのですから、安いものです。」
愛ちゃん、そういうことをサラッと言わないでほしい。
早瀬たちも目を点にしてるから。
一軒家の拠点についた。
聞いてはいたけど、大豪邸だ。
なんでも元は昭和時代の映画スターの家だったらしく、その方がなくなったことで相続税などがかさみ、売りに出されていたらしい。
庭も大概広い。
俺たちは玄関の車止めで降り、家に入った。
う~ん。どこの迎賓館?入口のホールだけで何坪あるのこれ?
応接室だけで4部屋あるらしい。
そのうちの一つに入ってとりあえずソファーに座った。
「おい、ここってあの昭和の大スターの家だったところか?すごいなさすがに。」
早瀬はそのスターのファンだったらしくかなり興奮していた。
でも…恐らくかなり魔改造されちゃってるよね、この屋敷。
壁もよく見たら新品同様になってるし、床も同様だ。
「マスター。このお屋敷の最も重要な部分は地下に御座います。そちらをご覧いただけますか?」
俺たちは愛ちゃんに促されるままに地下へ下りる階段に向かった。
階段を下りた先には古めかしいデザインのエレベーターがあった。
「こちらにお乗りください。」
またもや促されるままに4人はエレベーターに乗り込んだ。
静かに動き出し、下へ下へと降りて行った。
…結構降りてる気がするんだけどまだつかないの?
やがてチンとベルが鳴り、エレベーターのドアが開いた。
「この屋敷に合わせてそれぞれのギミックのデザインにはこだわりました。」
と、愛ちゃん。
だよね。移動も転送装置を使えばすぐだもんな。
そう思いながらエレベーターを降りて俺たちは驚愕した。
「え~っと愛ちゃん。これは宇宙船?」
そこには長さ20mほどの三角形の飛行機のようなものがあった。
色は真っ黒だ。
「はい、マスター。この機体は高速偵察艇となります。もちろん、本機単独で大気圏離脱が可能な機体です。」
……何が勿論なのかよくわからないが、こういう宇宙船もあったんだな。
一度地球号にどんなものがあるのか詳しく見ておく必要はあるかもしれない。
最もどんなものでも中身を入れ替えちゃうから、何ができるかどうかを確認しておく方がいいのかもしれない。
「これって必要なの?」
「もちろんです、マスター。もし敵が強襲してきた場合、転送装置のジャミングは十分に考えられます。そのためにも2つ3つの脱出方法は必要です。ほかの脱出方法としてはトンネルによる抜け穴も準備いたしております。」
「いや、ここまで必要かな?」
俺は少し引きながら愛ちゃんに問いかけた。
すると愛ちゃんはあきれたような目で俺を見ていった。
「マスター。先ほどの新会社設立の開発項目の中には、軍事転用できるものも含まれております。これらの情報を盗むためには様々な国があらゆる手を使って独占しようとすると思われます。もう少し自覚された方がよろしいかと。」
……確かに。
今日俺が発表した中にはやばいものが含まれている。
・放射能除去装置
・土壌改善装置
・常温核融合発電装置
・重力制御装置
・水質浄化システム
・ゴミ処理装置
常温核融合発電装置と重力制御装置だ。
この二つは特にやばい。
だって、目の前のこの宇宙船の飛行技術そのものだから。
つまり、宇宙戦争が可能になってくるんだよな。
「マスター、それだけではございません。これらの技術は従来ある輸送を大幅に変える可能性があります。それと化石エネルギーからの脱却、つまり、合衆国メジャーを敵に回す事すら起こると考えています。」
確かにそうなるのか…。
3人にもわかるように説明してみた。
・放射能除去装置
これは言わずもがな福島の原発事故の処理のために必要な技術だと考えている。
そしてこれが成功すれば、各発電施設の撤廃、さらには核兵器の撤廃も視野に入れていけることになる。
・土壌改善装置
これは主に砂丘や砂漠化した土地を緑化するために必要な装置だ。
・常温核融合発電装置
これは安全に発電するために必要な装置。化石エネルギーからの脱却が進めばあらゆるものがこの装置に置き換わっていくことになる。
・重力制御装置
ある意味これも世界を変える装置になる。帝国の技術によると元は魔法での技術だったものを理論的に解析し、装置として置き換えたものらしい。動力は電力となる。
・水質浄化システム
世界では飲み水に不足している地域がすごく多い。代表的なのはアフリカなどの暑くて雨の降らない地域だが、大気汚染、河川汚濁が進む中共などが最も欲しがる技術だろう。
・ゴミ処理装置
これはどの国も抱えているゴミをコンパクトにまとめる技術だ。この技術の中には有機物と無機物の選別技術や空間圧縮技術などが詰まっている。ある意味一番難しい技術のうちの一つだろう。ただ、使い方を間違うと大量破壊兵器にもなりかねない技術でもある。
まずはどの技術も理論だけではなく、実商品として完成させなければならない。
…実はすでに地球号の中では地球の技術と製品で完成させている。
それを理論も含めて地球人で再現することが大きな目的でもある。
とりあえず、実機が完成したら、製作は日本のメーカーに丸投げしなきゃいけないだろうな。あと日本政府がどう出てくるかだな。
これらの技術は国際的にも大きなアドバンテージになるはずだ。
問題はその技術力だよな。
帝国の技術がコンセントに差し込んでスイッチを入れれば回りだす扇風機だとすると、地球の技術は電気そのものの概念がなく羽を使って風を送るということを模倣するためにハンドルと歯車を作り出すというぐらいには技術格差がある。
放射能除去装置と常温核融合発電装置はセットで考えている。
もちろんそれぞれで十分役に立つものではあるが、常温核融合発電装置を作っても現在ある原子力発電所の脅威がなくなるわけではない。放射能除去装置ができて初めて原子力発電所の撤廃を訴えかけられる。
むしろ常温核融合発電装置ができて放射能除去装置ができないと今ある原子力発電所が未来永劫ほったらかしにされることまであり得る。
う~ん。技術研修施設としての北海道のスパリゾートが形になるのは1年先だしな。
まあ、徐々にやっていくしかないか。
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