17.すり合わせ

 俺たちは腹を満たして、少し酒も飲み、会計を済ませて店を出た後、又人気のない場所から地球号に転送してもらった。


 さて、それでは直近のやらなきゃいけないことをすり合わせるか。


 それにしてもこのメディカル・ポットの効果はすごいな。

 例えば思考能力が上がるといわゆるマルチタスクのようにいくつも複数の思考を同時進行で行っていける。

 これって周りの人間には何言ってるかわからないレベルにまでなっちゃうだろうな。少し注意しながらほかのスタッフには話をするようにしよう。取引先なんかもそうだな。

 それと、このメディカル・ポット。何気に病気やけがを治してくれている。

 これは医学会が衝撃を受けるレベルでだ。

 若返ったり能力活性化が2時間でできるんだもんな。

 絶対に秘密にしておかないと大変なことになりそうだ。

 知り合いが癌にでもかかったら…俺はこれを使ってしまうだろうな…。


 やりたくないけど、魔法による記憶操作が必要になってくるかもしれないな。

 皆が使えた魔法に関してはそれほど心配はしていない。

 手のひらから水が出たり、光が出たり、指先からライター程度の火が出る。あとは風が吹くぐらいかな?

 この魔法というやつ、かなりコスパが悪い。

 効率よく使う方法もあるんだけど、そこまで教える必要はないな。今はまだ。

 ほかの社員にメディカル・ポットを使うようになっても魔法が使えることを知らせなければ、能力向上だけで済むんじゃねぇ?

 知らなければ使えない。

 身体の中の魔力の動きを感じるものも出てくるだろうけど、それが何かはわからないだろう。


 よし、頭を切り替えて明日からの業務の引継ぎについて話そう。


 基本明日からは俺は会社設立と資金作りを愛ちゃんに任せて、得意先への説明を兼ねたあいさつ回り。面倒だけどやるしかないね。

 これも愛ちゃんに頼んで転送を繰り返せば意外に早く回れるかも。


 同様に早瀬副社長は社内情報の統括だな。

 これはアンドロイドを5人ほど補佐させれば、何とか明日中に済むんじゃないだろうか。

 それと新会社の人員の割り振りも考えてもらおう。

 それぞれ聞き取り調査が必要だろうけど、何とか頑張ってもらおう。


 山田営業部長には現在進行形の業務の引継ぎと人員の割り当て。

 それとできればリクルートしてひっぱってこれる優秀な人材のスカウトに動いてもらおう。これもアンドロイドの補佐があればなんとかなるだろう。現状に不満を持っていて、優秀な人材。独自の情報網と調査能力があれば後は山田の営業トークで何とかなるだろう。


 山下総務部長には、社員の能力把握はもちろん、現在の決済システムの見直しをしてもらおう。これもアンドロイドを補佐につければなんとかなるだろう。

 何せ高度文明を持つ帝国のシステムが使えるんだ。地球のシステムに合うように改造してもらって、出退勤のシステムや、決算、清算のシステム。業績把握や日報の管理などをスマホかタブレットでできるようなものを考えてもらいたいな。

 愛ちゃんに頼んでそれらのシステムをプログラムして、タブレットとスマホは独自システムのものを支給しよう。

 うまく地球で販売されているものを改造できればいいけど。

 その辺は愛ちゃん頼みになるけど、何とかなるだろう。

 だって、偵察用の宇宙戦艦のAIだもんな。

 その辺の改造の工房も艦の中にあるのは聞いてるし。

 あとはそのシステムを社員に教育する必要があるな。

 決起集会の前に2時間ほど睡眠学習と称してメディカル・ポットで学習させられないかな。これは愛ちゃんに相談だな。


 早川副社長と山下総務部長、山田営業部長の3人は、それぞれ会社の資料を見る必要があるため、転送されてアーバン商事に向かった。もちろん補佐のアンドロイド数名とともに。

 俺はここで愛ちゃんと会社設立のために決めなければいけない項目を順次決定していった。

 新会社の所在地など契約手続きや会社設立登記などは明日以降にならないと不動産屋も空いていない時間ではどうすることもできない。

 それでも情報を駆使して、すでに150人ほどが働けるオフィスビルの目星はついている。

 明日以降、愛ちゃんがそのビルの購入手続きをしてくれる予定だ。

 俺たちはそのまま夜中中働いて朝の6時に一度艦に戻ってきてもらった。


「お疲れさま。大変だったでしょ?」


 俺は3人をねぎらった。


「いやいや、自分の思考能力が上がったのもあるけど、彼女たちアンドロイドが優秀すぎて、欲しい情報がすぐに出てくるし、必要な書類もすぐに作成してくれる。おかげで社内で集める情報はすべて集められた。」


 と早瀬がいう。


「こっちも現社長の不正や部課長クラスまでの不正を細かく抽出出来て、すでに裁判へ向けての訴状も作成が終わってる。普通なら何か月もかかるものを…。明日弁護士と相談してそれぞれを呼び出して提訴するつもりだ。しかし、調べれば調べるだけ親会社にもおかしな連中が多いってことに気づいてきたよ。これらもまとめて訴状にして明日蔵元会長に渡してくるよ。ひょっとしたら、親会社の不正の洗い出しもさせられるかもな。」


 と山下総務部長が言った。


「それならアンドロイドを数名連れて行って情報の洗い出しをさせたらすぐに終わるんじゃない?最も10名ぐらいは必要かもしれないけど。」


 俺は親会社の規模を頭に浮かべてそう言った。


「マスター。それなら情報処理特化型アンドロイドも数名派遣して一気に済ませてしまう方がいいのかもしれません。山下総務部長にはこちらからの不正事項を親会社に突き付けて、会長経由で内部監査を行うように指示を出してもらえば、マスコミ対策や株の暴落も阻止できるかもしれませんね。そのあたりの資料を用意しておきますので明日お持ちください。」


 と愛ちゃんがアドバイスをくれた。


「それは助かるよ。よろしく。」


 と山下は答えた。


「俺は明日朝一でスカウトする人材にメールと電話攻勢だな。アンドロイドと手分けして、明日中には打診を終えておきたいな。」


 と山田は明日の予定を話した。


「山田様。それならアポどりはすべてアンドロイドに任せ、山田様は面会、面接だけを行われてはどうでしょうか?その都度転送いたしますし、面接者のデータは都度タブレットに情報を更新しておきます。」


 と、またもや愛ちゃんからアドバイスが入った。


「おぉ、それは助かるな。話が一気に進みそうだ。ちなみに明日俺はどれぐらいの人と会う必要があるんだろうか?」


 と山田は少し顔を引きつらせながら愛ちゃんに聞いた。


「一人30分程度と考えて10時から18時までで14名ほどになるかと思われます。」


「フルってことだね。」


 山田はうんざりしたような顔押した。


「お前の頑張り次第で、今後新会社がうまくいくかどうかがかかってるんだから、頑張ってくれよ。」


 俺は山田にハッパをかけた。


「わかったよ。頑張ってみるか。あのポットのおかげで結構忙しく働いても体調はいいからな。」


 といいながら、山田は少し伸びをした。


「それじゃ、今からメディカル・ポットに入って8時半にはここにもう一度集合な。学習したいことがあったらそれぞれ頼んでおけよ。」


 俺は皆にそう告げて俺の部屋に向かった。


「今回はどのような項目を学習されますか?」


 と愛ちゃんが聞いてきた。


「そうだな。山下や山田、早瀬が学習していたような経済や経営の知識が欲しいな。それと護身用に格闘術などの武器を使わないで体を守る戦闘術があれば頼む。」


「了解いたしました。それでは格闘術はゲリラ戦などを想定した現場にあるものを利用して作れる武器などの情報も含めたものとしておきますね。それではおやすみなさい。」


 俺はメディカル・ポットに寝転び、深い眠りについた。

 そして俺は睡眠学習をしながらダイハードな夢を見ることとなった。

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