第9話

憧れの航さん

子供達には其々、名前の由来を伝えている。

長男の航は、母も私も海が好きだから世界の海を航海するように、グローバルな子になって欲しいという意味からも付けたし、もう一つは、憧れの航さんのようになって欲しい、と思って名付けた、と伝えている。

航さんは、OL時代の会社の先輩で、見たからに穏和で知的な方である。

名門中学、高校から東大の法学部を卒業され、三角商事の企画部に在籍されている。

新人の頃、若手で行ったテニスやスキーでは誰よりも上手で素敵だった。

だから、航には航さんみたいに、穏和で知的なスポーツマンになって欲しい、と思って、欲張って名付けた。

航もJリーガーになって、母さんに家を建ててあげる、とか言ってくれたりして、まるで航さんみたいに性格は穏和でスポーツマンだ。

このまま真っ直ぐに育って欲しい。

私が離婚した事を知った三角商事の同期が、

昔、私が航さんのファンで、子供の名前まで航にした事を覚えていて、まだ独身の航さんとの、お食事会をセッティングしてくれた。

「エー!航さん、まだ独身なの?」

驚きと嬉しさでワクワクした。

あの頃の私は、女子校あがりで、告白して断られたら生きていられない、って思っていたから、自分から告白なんて出来なかった。

だから、蒼太に「今、付き合ってるヒトいるの?」って聞かれて、「いないけど」と言ったら、「じゃあ、付き合ってよ」って言われて付き合い出した、まさか結婚するとは思わなかったけど。

蒼太が長崎に転勤になって遠距離恋愛が楽しくて、恋に恋してたんだと思う。

蒼太は大学は福岡で実家は佐賀だから、九州の色々な所を案内してくれ、お友達とテニスをしたり、美味しい物を食べたり、お友達も皆んな親切だった。

さて、お食事会の当日は両親に子供達をお願いして、ランチ。

子供達も両親とデパートでランチするらしい。パパ&ママ、ありがとう!

航さんとの、お食事会には、もう1人独身の先輩が来てくれて同期も独身だから2対2だ。

とにかく楽しい、週末はゴルフをしてる、とか、食事は外食、とか色々お話してくれた。

私も、今は地元で働いていて、週末は航のサッカーの応援や、七海のピアノやバレエの発表会の話、みなみが怪獣と呼ばれてる話をした。勿論、航の名前は航さんみたいになって欲しい、と思って名付けた事も...。

また会おうね、って約束して解散。

私って本当、幸せだと思う。

同期に感謝、航さんに感謝!ありがとう!



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