第12話 半分
生き返ったあの日から日光が日に日に眩しく、肌が焼けやすくなった。
今はもう家の中に差し込んでくる日差しも眩しくて痛々しい。
あれから数日経ち、いつものようにごはんを食べているが
体がだるく、鏡を見ると若干痩せてしまったようだ。
あの子どもが言っていたことが日を重ねる事に信憑性が増してくる。
あの子はあの日以来、姿を現さない。
しかし血液が入った袋が郵便受けにあの日から毎日届けられている。
最初は嫌がらせなのかと思ってしまったが、3日目に手紙が入っていた。
『すぐには入手出来ないと思うので入れときます。死にたくなければ少しでもいいので飲んでください。お元気で。』
あの子からと思われる手紙、一応物は取っておいている。
けどこのことは華さんには内緒だ。
しかし、だんだんと元気がなくなっていることは華さんは気づいているみたいで、体に良さそうなものや精がつくものを出してくれる。
ありがたいが多分…、ダメなんだろうな。
あれから半月が立ち、もう血は届かない。
1週間でぱたりと来なくなった。
家からも出れず、華さんを心配させるだけの毎日。
俺が血を飲めばいいだけだが本当に人間として生きてはいけないという現実を突きつけられるようで、ずっと飲めずにいた。
そうして血を飲むことを先延ばしして、寝る前のいつもの読書をしようと本を手に取る。
…重い。
筋力も落ちてきてしまった。
本を持つのが重いので最近はうつ伏せで置いて読むようにしているが、その変化に華さんは気づいても何も言ってこなかった。
これからどうしよう…。
ずっとそばにいたい気持ちは変わらないが結婚は出来ないだろう。
血を飲む旦那なんか気持ち悪いだろうし、魚や牛の血肉ではなく、人間の血。
華さんを看取るまでと仮定しても、あの子どもからもらった血だけでは到底足りない。
その中で一番恐れるのは華さんの血を欲してしまうこと。
大切な人を栄養源にするなんてイカれている。
華「どうしたんですか?」
そう悩んでいると、隣で本を読んでいる華さんに話しかけられた。
久寿「なにがです?」
華「一度もページめくらないので、考え事しているのかなと。」
…気づかなかった。
一人で悶々と考えて全く本なんか読んでいなかった。
華さんは生き返った俺のことをどう思っているんだろう。
まずあの子どもの話を信じているのか。
久寿「華さんは今の俺のことどう思ってますか?」
と、急な俺の質問に華さんは少しびっくりしていたが、すぐ答えてくれた。
華「久寿さんといられるだけで幸せです。いつまでもその気持ちは変わらないと思います。」
久寿「…そうか。」
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朝が来て味噌汁の匂いで目が覚める。
俺専用の机の引き出しを開けて、隠していた血を手に取る。
ただの栄養補給。
昨日の深夜に用意しておいたグラスに半分入れ、布で飲み口部分以外を覆う。
俺は鼻をつまみ、口元にグラスを近づける。
飲めば華さんが安心してくれる。
一緒にいられる時間を稼げる。
気持ちを奮い立たせて、ゴクッともったりしている液体を一口飲む。
その流れで入れた分を一気に飲み込む。
俺はグラスの分の栄養剤を飲み干した。
飲んでから一気に視覚が色鮮やかになり、体温が熱くなる。
すぐに体が元気になったのがすぐ分かった。
元気になれた嬉しさと、本当に吸血鬼になってしまった悲しさが押し寄せて目の前が歪んでしまったが、使ったグラスなどを机の中に一旦隠し、朝ご飯を作っている華さんに会いに行った。
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