1362話 アイリス純愛ルート 王女拉致
サザリアナ王国とオーガの国との間で、戦争が勃発している。
俺とアイリスは敵国に潜入し、国王夫妻らしき2人を暗殺した。
もっと平和的な解決手段はなかったのかと、俺はつぶやくが……。
「ううん。ここまでやらないとダメだったよ」
アイリスは首を横に振る。
彼女は心優しい性格だ。
しかし、決して優柔不断ではない。
先にサザリアナ王国へ戦争を仕掛けてのは、相手だ。
そんな相手に情状酌量の余地などあろうはずもない。
「そうだな……。俺たちに立ち止まっている時間はない」
俺はうなずくと、その場を後にしようとする。
トップが死亡した以上、これからオーガの国は混乱していくはずだ。
その隙に、国境付近の戦いはこちらが優位になるだろう。
「タカシ。待って」
アイリスが俺を引き止める。
彼女は険しい顔をしていた。
「どうした?」
「……何かいる」
「え……?」
俺は思わず身構える。
オーガの宮殿の最奥部に至るまで、俺たちは隠密行動に徹してきた。
警備兵のほとんどはスルーできている。
強者6人の集団とは遭遇してしまったものの、問題なく始末した。
宮殿内に入ってからは、大きな騒ぎを起こしていない。
誰にも気づかれていないはずだ。
しかし、アイリスは何かがいると断言している。
「ここは最奥部だぞ? ここに来るなんて、王族ぐらいしか――」
そこまで口にしたところで、俺はハッとする。
国王や王妃以外にも王族はいる。
おそらく、王弟か、王子か。
あるいは……。
「タカシ……どうしよう?」
「……これは想定外だな」
俺はアイリスと顔を見合わせる。
姿を現したのは、まだ8歳ぐらいの女の子だった。
「もしかして王女か? いくら敵国の王族とはいえ、これは……」
俺はためらう。
ハーピィの少女は、震えながらも俺を睨んでいる。
彼女は、不思議な雰囲気の杖を右手に持っていた。
「タカシ。殺すのは避けて、捕虜にしよう」
アイリスは淡々と告げた。
彼女がそう言う以上、それが最善の方法なのだろう。
「……わかった」
俺は王女らしき少女の下へゆっくりと近づいていく。
彼女は一歩も引かない。
「抵抗するな。大人しくしていれば、命は保障しよう」
俺は彼女を威圧する。
少女は、俺の言葉を理解したのだろうか?
僅かに後ずさったが……すぐに踏みとどまった。
そして、杖の先端を俺にぶつけてくる。
「……うん? これは……魔力を吸われているのか」
俺はつぶやく。
杖の先端から、俺の魔力が少しずつ吸収されていく。
「惜しかったな。俺が武闘家ではなく魔法使いなら、それで戦闘不能にできたかもしれないが……」
俺はニヤリと微笑む。
アイリスも俺も、武闘家だ。
魔法を全く使えないわけではないが、闘気や聖闘気の方が重要である。
「むん!」
俺は全身から闘気を解き放つ。
少女の杖は木っ端微塵に砕け散った。
そして間髪を入れず、俺は少女に腹パンを喰らわせる。
少女は気絶した。
これで、ひとまず安心だろう。
「よし……。そろそろ撤収しよう。国王夫妻が死亡した上、王女が捕虜になったとなれば……。戦争は一気に終わりに近づく。早く平和な日々を取り戻さないとな」
俺はそうつぶやく。
そして王女を肩に担ぎつつアイリスの手を引き、その場を後にしたのだった。
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