1358話 ミティ純愛ルート 妨害工作とその犯人

 ガロル村で生活を始めた、俺とミティ。

 生活に慣れてきた頃に、彼女を奴隷から解放した。

 そして、結婚。

 俺が婿入りする形となり、俺の名前は『タカシ=バーへイル』となった。


 その後、いよいよガロル村での新婚生活が始まった。

 それは悪くないものだった。

 ドワーフ以外の住民が俺だけというのもあり、最初はよそ者扱いされたものだが……。

 俺とミティの鍛冶技術を見た村民たちは、その腕を称賛した。

 今では、概ね問題なくこの村で仕事をさせてもらっている。

 目下の問題は、1つだけしか残っていない。


「……また妨害ですか?」


「ああ……。今度は鉄剣が折られてしまっている」


「そうですか……」


 俺はミティに報告する。

 最近は、俺たち夫婦の鍛冶工房に何者かが忍び込み、出来上がった武具を破壊するという事件が相次いでいた。

 どうやら村民たちの中に、俺とミティの結婚をよく思っていない者がいるらしい。


「申し訳ありません。私のせいで……」


「いや、ミティは悪くない。俺が原因である可能性の方が高いだろう」


 俺は彼女を励ます。

 元奴隷のミティ。

 村唯一の人族である俺。

 どちらも迫害の対象になり得る存在ではあるが……。

 どちらかと言えば俺の方が原因であると考えるべきだ。


「この村に愛想を尽かされて、出て行かれますか……?」


 ミティは不安そうだ。

 彼女としても、このガロル村は故郷である。

 できれば離れたくないのだろう。


「心配無用さ。ミティの故郷は、俺にとっても故郷だ」


「はい……」


 俺は彼女の頭を撫でて励ます。

 ミティは嬉しそうだった。




 ――その後も、何度かの妨害工作を受ける。

 なかなか尻尾を出さない犯人だったが……。

 ある日、決定的な事件が発生する。


「まさか、カトレアさんが犯人だったなんて……」


 ミティがつぶやく。

 カトレアとは、彼女の幼なじみだ。

 昔から仲が良く、ここ最近でも頻繁に会っているようだった。


「すまない、ミティ。こうするしかなかったんだ……」


 俺はカトレアの死体に視線を向けつつ、ミティに謝罪する。

 カトレアを殺したのは俺だ。

 戦闘系スキルは『剣術』と『火魔法』ぐらいしか強化していない俺だが、『鍛冶術レベル5』を活かして製作した武具はかなり強力だ。

 その武具をフル活用すれば、Cランク上位の冒険者ぐらいの戦闘能力はある。


「仕方ありませんよ……。まさか、白昼堂々と剣で襲いかかってくるなんて……」


 ミティは俺を慰めるように言う。

 カトレアは、俺とミティを害するために剣で斬りかかってきたのだ。

 それも、これまでの妨害工作の自白付きで。


 他の村人たちがたくさん目撃していたこともあり、俺の正当防衛は認められた。

 特に罪に問われることはない。

 カトレアの目が黒く濁っていたのは気になったが……。

 俺やミティはただの鍛冶師であり、鍛冶以外の分野については詳しくない。

 あれが何だったのか、皆目検討もつかなかった。


「……後味の悪い結果になってしまったが、これで妨害もなくなるだろう。俺たちの幸せな未来のため、頑張るぞ!」


「はい。タカシ様!」


 俺とミティは、ガロル村で生活を送っていく。

 鍛冶師としての腕前をさらに上げ、紅剣インフェルノという素晴らしい剣を自分用につくったり、勇者ソフィアの聖剣エクスカリバーを改良したり、サザリアナ王国の国王に武具を献上したり……。

 いろんなことがあった。

 さらにはミカという子宝にも恵まれ、幸せな家庭を築いたのだった。

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