607話 クリスティへの加護(小)付与
数日が経過した。
リビングのソファに腰掛け、くつろいでいるところだ。
クリスティの件は、終わってみればなかなか悪くない結果となった。
雪月花やネリーの忠義度が微増。
『紅蓮の刃』のアランの忠義度が30を超え、他2名も20台後半に。
そして何より、クリスティだ。
彼女の忠義度が40を超え、加護(小)の条件を満たした。
レベル?、クリスティ=レギンレイブ
種族:猫獣人(赤猫族)
身分:犯罪奴隷
役割:主任警備兵
職業:武闘家
ランク:D
HP:??
MP:??
腕力:??
脚力:高め
体力:??
器用:低め
魔力:??
残りスキルポイント:???
スキル:
格闘術レベル4(3+1)
獣化術レベル4(3+1)
??
クリスティは猫獣人だ。
猫獣人はラーグの街でもたまに見かける種族ではあるが。ハイブリッジ家の中では彼女だけだ。
崖からの転落でも無事だったように、軽快な身のこなしを得意とする。
その身体能力は武闘にも活かされており、彼女は主任警備兵としてかなり頼りになる存在だ。
冒険者ランクはDだが、近いうちにCに上がってもおかしくない。
俺の配下として引き続き頑張ってくれれば、犯罪奴隷から解放する日も来るだろう。
基礎ステータスは、脚力が高めで器用が低めとなっている。
彼女は武闘家としてパンチやキックをバランスよく使うが、どちらかと言えば足技の方が得意なようだった。
現実とステータスが一致している。
器用が低めなのも、イメージ通りだ。
彼女は力任せでやや荒っぽい戦い方をする。
また、対人関係でも不器用なところがあり、己の信念や感情に従って行動し、失敗してしまう事が多い。
昨日の雪月花や紅蓮の刃との一件で、いろいろと心境の変化があったようだ。
今後に期待したいものである。
(スキルは、格闘術レベル4と獣化術レベル4か……)
両方とも、なかなかの高水準だ。
それに、加護(小)の時点ではステータスに全てのスキルが表示されるわけではない。
??と表示されているスキルの中に、闘気術などのスキルが隠れている可能性は高い。
加護(小)のみを付与した時点での戦闘能力としては、バルダインやキリヤに次ぐ強さだと言っていい。
今後もさらに成長を見せてくれることだろう。
俺は、ハイブリッジ邸の庭で鍛錬をしているアイリスとクリスティに視線を向ける。
「ほらほら。フォームが崩れているよ。クリスティちゃん」
アイリスが、クリスティの型にアドバイスを行う。
「こうか?」
クリスティが姿勢を正し、正拳突きを行う。
アイリスは妊娠中だ。
もうかなりお腹が大きくなっている。
本当はクリスティと実戦形式で鍛錬できれば効率的なのだが、さすがにそれは控えている。
「いい感じになったよ。それにしても、やる気満々だねー。タカシから聞いたけど、Aランク冒険者になるんだってね」
「ああ! あたいはもっと強くなって、ご主人を守る盾となるんだ! アイリス姉さんも超えてみせるぜ!!」
クリスティが再び拳を構え、力強く正拳突きを繰り出す。
「うん。その意気だよ。でも、ボクもまだまだ負けないからね! また今度、試合形式で練習しよう」
「おう!」
クリスティとアイリスが微笑み合っている。
俺はそんな彼女たちに近づいていく。
「精が出るな」
「あっ、タカシ」
「ご主人! 見ていたのか」
2人が揃って挨拶してくる。
「2人とも、調子はどうだ?」
「ボクはぼちぼちかな。お腹の子のためにも、無理はしていないけど」
「あたいは絶好調だぜ! 見ての通りな!」
クリスティはそう言って、シャドーボクシングをして見せる。
彼女が絶好調である理由は、大きく3つあるだろう。
1つは、数日前の件で心境の変化があり、モチベーションが大きく変わったこと。
次に、アイリスから的確な指導を受けていること。
そして最も大きいのが、俺により加護(小)が付与されたことだ。
「ふむ……クリスティ、ちょっと手合わせするか?」
「え!? マジか? やったぜ!!!」
クリスティが喜びの声を上げる。
アイリスとの型の稽古やフォームのチェックも有意義だが、やはり実戦形式の鍛錬をしたいという気持ちがあったのだろう。
「よし。全力で来い」
俺は闘気を開放し、構える。
クリスティも、嬉しそうな顔をしながらファイティングポーズを取る。
「行くぞ、ご主人!!」
クリスティは素早い踏み込みで距離を詰め、ジャブを放つ。
俺はその動きを見切り、ガードを固めつつカウンターを狙う。
クリスティの鋭いパンチが次々と繰り出される。
「くっ。やるな……」
一発ごとに威力がある。
俺は防戦一方となり、反撃できない。
この短期間でここまで強くなるとは。
加護(小)の効力はかなり高いな。
それに、彼女自身の努力や心境の変化の影響も大きいだろう。
俺は、少し本気を出してみることにする。
クリスティのフックに合わせて身体を沈め、懐に入り込む。
そして彼女の顎に向かって掌底を突き上げた。
ドンッ!!
クリスティが吹っ飛び、地面に倒れる。
「うわっ!?」
「大丈夫か?」
俺はすぐに駆け寄り、クリスティを助け起こす。
「いてて……。やっぱりすげぇな、ご主人は。反応し切れなかったぜ」
「すまんな。クリスティの動きが速すぎて、手加減できなかった」
「へへ。これぐらい平気さ。それにしても、あたいもだいぶ速く動けるようになったと思ったんだけどな。まだまだご主人には敵わねえ」
「これでも騎士爵家の当主だしな。でも、クリスティの速さも相当だぞ。そのスピードに対抗できる人間なんて、ほとんどいないんじゃないか?」
「そうか。そうだといいけどな」
クリスティが照れ臭そうにしている。
こうして、アイリスやクリスティとの激しくも穏やかな鍛錬の時間は過ぎていったのだった。
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