581話 ニルスとハンナへの加護(小)付与

 ニルスとハンナのサプライズ結婚式を挙げてから1週間ほどが経過した。


「喜んでもらえてよかったなぁ……」


 俺は自室でそう呟く。

 なにせ、人生でも特に重要なイベントだ。

 サプライズではなく、よく相談してから行うという選択肢もあったが……。

 ニルスとハンナ本人にそれとなく探りを入れつつ、ミリオンズや他の配下の者たちにも相談して、最終的にはサプライズ結婚式を行うことにしたのだ。


 失敗すれば逆に忠義度が下がりかねない、ちょっとした賭けの要素もあった。

 だが、2人は本当に嬉しそうだったし、結果的には大成功だと言っていい。

 ミティとアイリスによって作られたオリハルコンのクワも喜ばれていたしな。


「忠義度40を無事に突破した。ニルスとハンナに加護(小)を付与できたのは大きいな」


 サプライズ結婚式とオリハルコンのクワの贈り物により、彼らはついに加護(小)の条件を満たしたのだ。

 もちろん、さっそく付与済みである。


 彼らが条件を満たすのは故郷の村への食料援助を実行した頃になるかと思っていたのだが、嬉しい誤算だ。

 想定よりも早い。

 このペースなら、食料援助を実行したタイミングで通常の加護を狙えたりできないだろうか?


 ……まあ、さすがにそれは少し厳しそうか。

 忠義度40からはなかなか上がりにくい。

 比較的早く忠義度40に達したリンとロロも、まだ40台前半だ。


「ええと……。とりあえず、ニルスとハンナのステータスを再確認してみるかな……」



レベル?、ニルス=ライファード

種族:ヒューマン

身分:主従奴隷

役割:農業改革担当官

職業:ー

ランク:ー


HP:??

MP:??

腕力:??

脚力:??

体力:高め

器用:??

魔力:低め

残りスキルポイント:???

スキル:

栽培術レベル4(3+1)

格闘術レベル3(2+1)

??



 ニルスの最近の役割は、農業改革担当官だ。

 以前はセバスの下で使用人として働いてもらっていたのだが、農業改革が本格化するにつれて移行してきたのである。

 ステータス上もしっかりと反映されている。


 基礎ステータスは体力が高めのようだ。

 確かに、農業改革でも日々精力的に働いている。

 ニムの土魔法や花の植物魔法に加え、ニルスの農業の経験や知識が組み合わさった事で、農業改革は順調に進んできた。


「スキルは……。栽培術はいいとして、格闘術も取得していたか。戦闘もある程度はいけるな」


 仕事の合間に、アイリスやクリスティとともに武闘の鍛錬に励んでいた成果が出た。

 格闘術レベル2を取得している。

 ただ、レベル2だとまだまだ心もとないレベルだ。

 それが加護(小)の恩恵によりレベル3になっている。

 レベル3だと、そこそこ戦えるようになるだろう。


 また、加護(小)の恩恵には【基礎ステータスの2割向上】というものがある。

 2割程度なのであまり大きくはないのだが、何の補正もない一般人に比べれば確実に強くなれる。


 キリヤ、ヴィルナ、ヒナあたりの警備兵組とはさすがに比べるべくもないが、ニルスも決して弱くないはずだ。

 コソドロやちょっとした不審者ぐらいには十分に対応できるだろう。

 オリハルコンのクワもあるし。


「さて。次はハンナのステータスを再確認しておこう」



レベル?、ハンナ=ライファード(旧姓:サリアーシェ)

種族:ヒューマン

身分:主従奴隷

役割:農業改革担当官

職業:ー

ランク:ー


HP:??

MP:??

腕力:??

脚力:低め

体力:??

器用:高め

魔力:??

残りスキルポイント:???

スキル:

栽培術レベル4(3+1)

弓術レベル3(2+1)

??



「栽培術のレベルはニルスといっしょか。こちらは格闘術は持っていないが、代わりに弓術があるな」


 ニルスとともに武闘の鍛錬に励んでくれていたのだが、取得には至らなかったか。

 まあ、??と表記されているところに隠されているだけかもしれないが。

 弓については、村で暮らしているときにたまに狩りで使っていたことがあると言っていた。


 そういえば、仕事の合間にユナから弓のアドバイスをもらっているのを見たこともある。

 レベル2だとそこそこレベルだが、これがレベル3になると胸を張れるレベルとなる。

 もちろんトップクラスや達人というにはほど遠いが、その気になればそれだけで食っていけるぐらいの実力はあるだろう。


「これで、ミッションの達成が目の前に迫ったことになるな……」



ミッション

加護(小)を新たに5人へ付与せよ。

報酬:加護(微)の開放、スキルポイント20



 このミッションが追加されてから、新たに4人へ加護(小)を付与した。

 バルダイン、レイン、ニルス、ハンナだ。

 あと1人。

 忠義度30台に達している配下の者はたくさんいるし、あと誰か1人に早く加護(小)を付与したいものである。


「ニルスとハンナは条件を満たしたし、とりあえず置いておく。……というわけにはいかないよな。彼らの故郷に食料援助をしないと」


 以前からの約束だ。

 農業改革が成功し豊作となったので、食料援助を実行する必要がある。

 加護(小)を付与できた今、彼らの忠義度を喫緊で稼ぐ必要はないが、それでも無視はできない案件だ。


 忠義云々ではなく、人として約束は守らないとな。

 それに、いずれ通常の加護を狙っていくためにも、稼げるときに稼いでおくのは悪くない。


「収穫はもうひと段落着き始めている頃だな。そろそろ、食料援助の量を決定して、具体的な運送手段や人員の選定に入らないと……」


 そうして、俺は今後に思いを馳せるのであった。

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