566話 レインの秘め事

 ハイブリッジ邸の応接室でジェイネフェリアが持ってきた魔道具『魔法の絨毯』を使用したところ、勢い余って天井を突き破ってしまった。

 応接室の上の部屋は俺の自室なので、それほど大きな問題はなかったのだが……。

 なぜか、レインが俺のベッドに潜り込んでいた。


 彼女の様子がおかしい。

 顔を赤くして、ベッドの布団から出てこない。

 ひょっとしたら急病や体調不良の可能性もある。

 俺はレインの方へ近づいていく。


「大丈夫か? レイン」


「ひっ!?」


 レインが小さく悲鳴を上げる。

 だが、彼女は布団にくるまったままだ。


「やはり体調が悪いのではないか? 熱でもあるのか?」


 俺は彼女の額に手を当てようとする。


「きゃっ!?」


 またも小さな叫び声を上げた後、レインがベッドの奥へと逃げてしまう。


「おい、何をそんなに驚いているんだ?」


「な、なんでもありません! 私は大丈夫ですので!」


「しかし、先ほどから様子が変ではないか。そもそも、そこは俺のベッドだぞ」


「え、ええと……その……」


「俺はレインの熱を測ろうとしただけだ。なぜ隠れる必要がある?」


「そ、それは……そのぉ……」


 レインが何かを言いかけて口ごもってしまう。


「なぁ、本当にどうかしたのか? 知っての通り、俺は治療魔法の達人だ。具合が悪いのなら俺に任せておけ」


 俺はそう言って、さらにレインに近づいていく。

 彼女は後退しようとするが、既にベッドの隅にまで追いつめられていたためそれ以上下がることができない。


「ダ、ダメです! こっちに来ないでください!!」


 レインが大きな声で叫ぶ。

 しかし俺はそれに構わず、レインのすぐそばにまで来た。


「遠慮するな。配下の者の体調を気遣うのも、主人の務めだからな。どれ、どこが苦しいのだ? 診せてみろ」


 俺はそう言いながら、レインの体に手を伸ばす。

 彼女の身を包んでいた布団を剥ぎ取る。

 そして現れたのは、白い下着姿のレインだった。


「ほほう……」


 俺は思わず感嘆の声を上げてしまった。

 とても素晴らしい光景だったからだ。


「ああっ!」


 レインが恥ずかしそうな表情を浮かべる。

 頬を真っ赤にして、両手で胸を隠すようにしながら俺を見上げてくる。


「レイン、お前……」


 俺はその姿をじっくりと見やる。

 美しい少女だとは思っていたが、まさかこれほどとは思わなかった。

 やはり年頃の少女の下着姿は格別である。


「これはどういうことだ?」


 いいものを見せてもらって大満足ではあるが、そもそもここは俺のベッドである。


「あ、あの……その……」


「なんだ?」


「そ、掃除中に布団の汚れを見つけましたので、間近で確認していたのです……」


 レインが消え入りそうな声で答える。


「なるほど。確かに汚れを取るのは大切なことだな」


「そ、そうですよね!」


 彼女がホッとしたような表情をしてそう言う。


「って、そんな言い訳が通るわけないだろうが!?」


 俺はつい大声を出してしまった。

 いくらなんでも無理があるだろう。

 百歩譲ってベッドに潜り込む理由にはなっても、下着姿になる理由にはならない。

 俺は布団を完全にベッドから取り去る。


「ひゃっ!?」


 レインが可愛らしい悲鳴を上げる。

 先ほどから見ている通り、ベッドの上には下着姿のレインがいる。

 彼女は身を隠すものを失い、完全に狼狽している。

 そして、彼女がベッドから下りようとするが……。


「動くな!」


「ひっ!? し、しかし……」


「動くことを禁ずる。これは当主命令だ」


 俺はそう命じる。

 レインがびくっと体を震わせ、動きを止める。


「ううっ……」


 レインが涙目になっている。

 普段の元気な彼女からは想像できない表情だ。

 なんというか、嗜虐心が刺激される。


「レイン、正直に答えろ。お前はここで何をしていた?」


「わ、私はただ、お館様のお部屋の掃除を……」


「掃除でベッドに潜り込む必要はないだろう?」


「で、でも、いつも以上に念を入れて掃除をしたかったので……」


「ふむ。それでどうして服を脱ぐ必要がある? 掃除に一切関係がないだろう?」


「そ、それは……」


 レインが言葉に詰まる。

 俺のベッドの上で姿勢を正したまま固まっている。

 何をしていたか察しはつくのだが、彼女の口からそれが明かされる様子はない。

 ならば仕方がない。

 俺は彼女の下腹部に手を伸ばす。


「ひゃんっ!?」


 レインがまたも可愛い悲鳴を上げる。


「何をしていたか当ててやろう。お前、俺のベッドの中で自分を慰めていたんだな?」


「は、はうう……」


「いったいどんなことを妄想していたのやら。よく見れば、パンツが既に濡れてしまっているじゃないか」


 俺はそう言いながら、レインの下腹に指先を押し付ける。


「ああ……んっ……」


 レインが小さく喘ぎ声を上げる。

 その声に艶めかしさが混じったのを聞き逃さない。

 やはりレインは感じ始めているようだ。


「さぁ、自分の口で言え! お前は何をしていたのだ!?」


「そ、それは……」


「言わぬなら、この場で罰を与えるぞ!」


 俺はそう言って、レインの敏感な部分に手を伸ばそうとする。

 だが、彼女はそれを必死に阻止しようとしてきた。


「お、お許しください! それだけは!」


「なら、早く白状しろ! それとも、このまま続けて欲しいのか?」


「あうう……」


 俺の言葉にレインが顔を赤くして黙り込んでしまう。

 少しいじめすぎたか。

 セクハラが楽しくてついついやり過ぎてしまう。


 こんなことをしていては、レインを傷つける。

 それに、忠義度もダダ下がりだろう。

 ここらで切り上げて、謝罪するのがよさそうか。


 ……ん?

 いや、待て。


「おらおら! 白状して楽になっちまえYO!」


 俺はそう言いつつ、レインをさらに責め立てる。

 切り上げようとしていたが、方針転換だ。

 このまま続ける。


 というのも、レインの忠義度が上がっているからだ。

 どうやら、彼女はこういうプレイが好みらしい。

 彼女を満足させれば、加護(小)の条件を満たす可能性もある。

 ここが頑張りどころだ。


 1階に放置しているジェイネフェリアのことは少し気になるが、俺の耳によればキリヤやヴィルナが適当に対応してくれているらしい。

 もう少しは大丈夫だろう。

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