420話 リーゼロッテへの加護付与/蓮華への加護(小)付与

 ティーナにより、ミリオンズの氷化状態の解除が続けられていく。

 そして、無事にミリオンズ全員の氷化状態が解除された。


 今この場に立っているのは、11人。

 タカシ、ミティ、アイリス、モニカ、ニム。

 ユナ、マリア、サリエ、リーゼロッテ。

 そして、蓮華とティーナだ。


「ふう。とりあえず、大切なみんなが無事でひと安心だ」


「そうですね! タカシ様をお守りできなくて、申し訳ないです」


「いや、俺のほうこそ守れなくてすまなかった」


 ステータス操作というチートにあぐらをかいて、調子に乗っていたかもしれない。

 俺たちはBランクパーティ。

 一般的に見て強いのは間違いない。

 冒険者内で、上位数パーセントには入っているだろう。

 民間人などの非戦闘者を含めれば、上位1パーセント以内は確実だ。


「ボクも自惚れていたかもしれない」


「私もだね。冒険者を始めて、今まで特に苦労もなくやってきたから」


「そ、そうですね。わたしも反省します」


 アイリス、モニカ、ニムがそう言う。

 彼女たちを含め、俺たちミリオンズは俺の『ステータス操作』や『加護付与』の恩恵により、急成長をしてきた。

 ややおごりがあったかもしれない。


「ふふん。私の時のディルム子爵は何とかなったけど……。ラスターレイン伯爵家は、かなり強かったわね」


「ええと……。わたくしの知っているお父様やお兄様は、あれほど強くはありませんでしたわ。術式纏装も、お父様以外はまだ練習中だったはずですし……。どしゃ降りの雨天下という条件が、相手に味方してしまった形ですわね」


 リーゼロッテがそう言う。

 確かに、環境も悪かったな。

 水魔法の名門であるラスターレイン伯爵家を相手に、どしゃ降りの雨天下は最悪の環境に近い。


「環境に対応する能力も今後大事になってきますね。……それで、これからの方針はどうしますか? ここで大人しくしているか、それとも……」


 サリエがそう問う。

 確かに、それが問題だ。


「そうだな。第1案は、トミーたちの氷化状態を解除させた上で、ここで大人しくしていることだ。ラスターレイン伯爵家の方針に従うことになる」


「まあ、それが無難かもねー」


 アイリスがそう言う。


「ふふん。でも、その場合はドラちゃんが死んでしまうわね……。せっかく繋がれたのに。今も、ドラちゃんの助けを求める声が私には聞こえるわ……」


 ユナはテイム術によって、ファイアードラゴンのドラちゃんとの魂の接続に成功している。

 せっかく仲良くなった超常の存在であるファイアードラゴンとの繋がりを手放すのは惜しい。


「第2案は、ラスターレイン伯爵家にリベンジすることだ」


「無事に制圧できれば、ドラちゃんが死なずに済むかもしれないね」


 モニカがそう言う。


「私はぜひともリベンジしたいです! でも、もし失敗すれば……」


「ええ。今度こそ、私たちは殺されてしまうかもしれません……。殺傷能力の低い水魔法で無力化されたのは、ラスターレイン伯爵家の温情でしょうし……」


 ミティとサリエがそう言う。

 確かに、今のまま再び挑んでも同じ展開の繰り返しだろう。

 だが、ここで俺から起死回生の作戦がある。

 作戦というか、結局はチートに頼るだけではあるが。


「みんな、聞いてくれ。実はファイアードラゴンのテイムは、ミッションで指示されたものだったんだ。ミッション報酬でスキルを強化できる」


「それはいいね!」


「えっ。タカシ、それを言ってだいじょうぶなの?」


 マリアは無邪気に喜ぶが、アイリスは懸念を示す。

 この場には、俺の『ミッション』『ステータス操作』『加護付与』などの件を伝えていない者がいる。

 リーゼロッテと蓮華だ。


「ああ。俺に考えがある。問題ない」


 俺はそう答える。

 今回の選別試験、ダンジョン攻略、そしてファイアードラゴン戦を通じて、リーゼロッテの忠義度が50に達し、蓮華の忠義度も40に達したのだ。

 俺の力がラスターレイン伯爵家に全く及ばなかったのはマイナス点のはずだが、それ以上にそこまでの活躍のほうが大きかったということかもしれない。。


 リーゼロッテには通常の加護を、蓮華には加護(小)をさっそく付与しておいた。

 これで、みんな大幅な強化ができる。


「みっしょん? はて……」


「何の話でしょうか?」


 蓮華とリーゼロッテが首をかしげる。

 当然の反応と言えるだろう。


 俺の力の件は、無闇に広めるべきではない。

 今までは、通常の加護の条件を満たした者にだけ伝えてきた。

 具体的には、ミティ、アイリス、モニカ、ニム、ユナ、マリア、サリエの7人だけだ。

 彼女たちは、いずれも通常の加護の条件を満たしている。


 一方で、リーゼロッテは加護(小)の条件は満たしているが、通常の加護の条件は満たしていない。

 蓮華は、加護(小)の条件を満たしていない。

 当然、俺の力の件は彼女たちには説明していなかった。


「実は、かくがくしかじかでな……」


 俺は『ミッション』『ステータス操作』『加護付与』などの件をリーゼロッテと蓮華に伝える。

 今までの方針からすると、リーゼロッテには伝えて蓮華には伝えないところだが、今回ばかりは仕方ない。

 状況が状況だからな。


「驚きですわ。まさか、そのような力がありますとは。確かに、ここ最近で急激に水魔法の腕が上達したと思っていたのです」


 リーゼロッテは素直に信じてくれた。

 やはり、一度加護(小)を経験してからだと、すんなりと信じてもらいやすい。


「……ぬ。拙者は特にそのような感じはしなかったでござるが……」


「ああ。蓮華には、ついさっき加護(小)を付与したところだからな。今現在、改めて体の調子はどうだ?」


「ふむ。……言われてみれば、心なしか体の調子がいいような気がするでござる。それに、剣技や風魔法のこつも突然掴めた感覚がある」


「それだ。ぜひ、感覚を確かめておいてくれ」


 俺はそう言う。

 蓮華は少し離れたところで、自身の力を確認し始めた。

 彼女のステータスについて、一度目を通しておこう。



レベル?、東雲蓮華

種族:エルフ(妖精族)

身分:東雲家次女

役割:音楽家

職業:剣士

ランク:C


武器:業物『金木犀』

防具:和服


HP:???

MP:低め

腕力:???

脚力:高め

体力:???

器用:???

魔力:???


残りスキルポイント:???

スキル:

剣術レベル4(3+1)

回避術レベル3(2+1)

風魔法レベル4「エアバースト、エアリアルスラッシュ、ジェットストーム、神風」

???


加護付与(小)による補正:

全ステータスの2割上昇

所持スキルの内の最大3つのスキルレベルをそれぞれ1ずつ上昇



 今までに見聞きしてきた通り、剣術と風魔法に秀でている。

 ステータスは、脚力が高めだ。

 確かに、俺との決闘でも身のこなしの速さには驚かされたことがある。

 その他いくつか気になる項目があるが、今は置いておこう。


「さて。蓮華以外はどのスキルを強化するか決めていく必要がある」


「そうですね! うまく力を伸ばして、リベンジしないと!」


「うん。でも、ちゃちゃっと決めないと手遅れになるかも……」


 アイリスがそう懸念の声を上げる。

 ユナの情報では、ドラちゃんはラスターレイン伯爵家から逃げているところらしい。

 まだ追撃は受けていないが、追いつかれるのも時間の問題だそうだ。


 彼女が討伐されないうちに、助けに行く必要がある。

 とはいえ、スキルを強化しないまま助けに行っても返り討ちに合うリスクげある。


「急いで決めていこうよ!」


「そ、そうですね。わたしたちは以前より考えていましたし、それほどの時間は必要ないかと思います」


 モニカとニムがそう言う。

 彼女たちには『ステータス操作』の件をかなり前から伝えている。

 『次にスキルポイントが入ったらどのスキルを強化するか』について、日頃から考える時間はいくらでもある。


「そうだな。ええと……。とりあえず、リーゼロッテの現在の力とポイントはこんな感じだ。俺たちの強化処理を行っている間に、考えてみてくれ」


 俺はリーゼロッテにメモを渡す。

 ここで、リーゼロッテのステータスにも目を通しておこう。

 今までは加護(小)のみだったので、詳細不明の項目が多かった。

 今なら、リーゼロッテのステータスの詳細を確認できる。



レベル19、リーゼロッテ=ラスターレイン

種族:ヒューマン

身分:リールバッハ=ラスターレイン伯爵家長女

役割:測量士

職業:水魔法使い

ランク:C


武器:蒼杖ラファエル

防具:レザーアーマー(上)


HP:147(113+34)

MP: 87(67+20)

腕力: 78(60+18)

脚力: 87(67+20)

体力: 78(60+18)

器用:105(81+24)

魔力:103(79+24)


残りスキルポイント:95

スキル:

水魔法レベル5「ウォーターボール、アイスボール、アイスレイン、ブリザード、水魔法創造」

治療魔法レベル2「キュア、ヒール」

MP回復速度強化レベル2

測量術レベル1


称号:

タカシの加護を受けし者

アヴァロン迷宮踏破者



 リーゼロッテの初期レベルは19。

 ユナの初期レベルと同じだ。

 貴族の娘として水魔法の研鑽に務めながらも、冒険者パーティ『蒼穹の担い手』の一員として活動していたからな。

 妥当なところだろう。

 スキルポイントが95もあるので、たくさん強化できる。


「わかりましたわ。一度、考えてみます」


 リーゼロッテが考え込み始める。

 時間もないし、どんどんみんなのスキル強化を進めていこう。

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