421話 みんなのスキル強化 前編
みんなのスキルを強化しようとしているところだ。
トミーたちには悪いが、もうしばらくは氷化状態で待機してもらう。
ティーナの情報によると、直ちに命の危険はないし、身体的な後遺症なども残らないそうだからな。
ステータス操作の件を聞かれないという意味では、ちょうどよかったとさえ言える。
スキル強化が終わったら、ティーナにトミーたちの氷化状態を解除してもらい、ラスターレイン伯爵家にリベンジ戦を挑むつもりだ。
ファイアードラゴンのドラちゃんは、がんばって助けたい。
ダンジョン攻略やファイアードラゴン戦を通して、みんなのレベルは軒並み上がっている。
道中でも逐次スキルを強化していれば、もう少し楽だったかもしれないな。
ファイアードラゴンのブレスでマリアがやられたときには、俺、アイリス、サリエの治療魔法やMP関連のスキルを伸ばすのも1つの手だった。
もう少し落ち着いていれば、そういった選択肢にも気づけただろう。
まあ、過ぎたことは仕方ない。
とりあえず今はスキル強化の件だ。
俺はミッション画面を操作し、報酬を受け取る。
ミッション
ファイアードラゴンをテイムせよ。
報酬:スキルポイント20
「最初にみんなの残りスキルポイント伝えておこう。まず……」
俺はみんなに残りスキルポイントを告げていく。
俺は60。
ミティは40。
アイリスは40。
モニカは55。
ニムは50。
ユナは50。
マリアは80。
サリエは100。
リーゼロッテは115だ。
「駆け足気味に強化していくぞ。決まっている者がいれば言ってくれ」
「あの……。私が最初でもいいですか?」
サリエがそう言う。
前回は、彼女にとって初めてのスキル強化だった。
みんなの話をじっと聞いて参考にしていた様子だった。
今回は、彼女が最初に名乗りを上げた。
強化したいスキルをあらかじめ考えていたのかもしれない。
「ああ。サリエは何を強化するんだ?」
「治療魔法、MP強化、魔力強化です。あと、魔法補助系のスキルもできれば……。私の戦闘能力を伸ばしたところで知れていますので、みなさんを回復させることで貢献したいと思います」
確かに、今はみんな疲弊している。
ダンジョン攻略、ファイアードラゴン戦、そしてラスターレイン伯爵家との戦いがあったからな。
疲れがなければ、あそこまで惨敗することもなかっただろう。
「わかった。治療魔法をレベル5にするとして……。MP強化と魔力強化は、レベル3ぐらいまでにするか? 残ったスキルポイントで、高速詠唱を取得してレベル2にしよう」
「それで構いません。ええっと……。少し余りますか?」
「そうだな。スキルポイントが5だけ余る」
「では、植物魔法をレベル2に伸ばしてください。一応、何かの役に立つかもしれませんので……」
サリエの方向性は決まった。
駆け足気味で強化すると言いつつ、それなりに時間がかかってしまった。
まあ、彼女のスキル強化はまだ2回目で慣れていないし、かつスキルポイントも100と大量にあったのである程度は仕方ないだろう。
俺はさっそく、彼女のステータスを操作してスキルを取得・強化する。
普段であれば、みんなの方針をひと通り確認してから行っている。
しかし、今回は彼女のみ先行で強化した。
その理由はーー。
「我らが創造主よ。我らにひと欠片の恩寵を与え給え。癒やしの光。全てを包み込む聖なる力よ。オールヒール」
サリエがさっそく、治療魔法を発動する。
これまでは使えなかった治療魔法だ。
大きな癒やしの光が俺たちを覆う。
「お、おお! 力がみなぎってきました! むんっ!」
「ボクの聖気と闘気も……。すごい治療魔法だ」
ミティとアイリスがそう言う。
モニカやニムも元気になっている。
せっかく彼女たちのスキルを強化しても、疲労困憊の状態では意味が半減する。
先行して強化したサリエの治療魔法により万全の状態になることで、本来の力が発揮できることになる。
「すばらしい治療魔法だ。自身の体調に悪影響はないか?」
「はい。もちろん、そのあたりのバランスも考えて魔法を発動しました。問題ありません」
さすがはサリエ。
そして、さすがは治療魔法レベル5である。
ちゃんとバランスも考えることができる。
ファンタジー作品でたまにある『治療魔法の使いすぎで術者が早死にする』みたいな危険性はなさそうか。
まあ、それも使い方次第だろうが。
「よし。では、万全の体調になったことを踏まえて他のみんなの力を強化していくぞ。決まっている者はいるか?
「私は投擲術をレベル5に、器用強化をレベル3に伸ばしていただこうと思います!」
ミティが即断でそう言う。
思い切りがいい。
確かに、ミティの既存スキルでラスターレイン伯爵家との戦いに活かせそうなものは、そのあたりだ。
強力な水魔法を受けないように、遠距離から巨石で攻撃するのである。
器用強化を伸ばすことで、コントロールも増すだろう。
あのときは乱戦気味だったので、彼女の投擲は活かせなかった。
今度こそリベンジだ。
「わかった。他には……」
「ボクは聖闘気術をレベル5に、体力強化をレベル3にしてもらうよ」
アイリスも判断が早い。
彼女は、リルクヴィストに惨敗した。
純粋な実力だけなら彼女が上だと思うが、疲労困憊でまともに戦えなかったのだ。
ダンジョン攻略やファイアードラゴン戦で、体力や闘気を消耗していたからな。
マリアの治療のために、MPを限界まで消費していたのも影響しただろう。
サリエの最上級治療魔法により万全の状態となった今であれば、リルクヴィストにも勝てるだろう。
より盤石にするために、長所である聖闘気を強化する。
そして、今回の敗因の1つである体力も念のために強化しておくというわけだ。
「オーケー。次に……」
「私はMP強化をレベル4に、魔力強化をレベル5にしてもらおうかな」
モニカは、魔法に特化か。
彼女は超スピードを誇る。
兎獣人としての脚力と術式纏装『雷天霹靂』の相乗効果だ。
MPを伸ばせば持続力が増し、魔力強化を伸ばせばより効果が増すことに期待できる。
「よし。続いて……」
「わ、わたしは、脚力強化をレベル4に、魔力強化をレベル4に、闘気術をレベル4に、そして格闘術をレベル2にしていただきます!」
ニムのロックアーマーは驚異的な防御力を誇る。
魔力強化を伸ばせば、より硬度の向上に期待できるだろう。
ただし、ファイアードラゴンの高熱ブレスやラスターレイン伯爵家の超低温の水魔法には、やや相性が悪い。
その場合は、機敏に動いて回避する必要がある。
脚力強化を伸ばすことで、ロックアーマーを纏った状態でも速く動くことができるようになる。
闘気術は、防御力と機敏性の両方に貢献できる。
ロックアーマーに闘気を込めれば、硬度が増す。
足に闘気を込めれば、一時的に機敏性が増すのだ。
格闘術は余ったスキルポイントをとりあえず割り振った感じだろうが、悪くない選択だ。
彼女の攻撃手段は、大きく2つ。
土魔法による攻撃か、ロックアーマーを纏った状態でのタックルだ。
基本的に、駆け引きなどない物理のゴリ押しである。
彼女は耐久力も攻撃力も高い水準にある。
対魔物戦ではそれで問題ないのだが、対人戦ではやや心もとない。
ラスターレイン伯爵家との戦いでも、あっさりと氷化されてしまっていた。
彼女の抜群の耐久力に格闘の技術が加われば、さらなる活躍が見込めるだろう。
「了解だ。そして……」
これで、サリエ、ミティ、アイリス、モニカ、ニムの方針が決まった。
残るは、ユナ、マリア、俺、リーゼロッテだ。
あまり時間もないし、急いで決めていこう。
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