397話 ダンジョン攻略メンバーの発表

 ダンジョン攻略メンバーの発表が行われようとしているところだ。

 長男のリカルロイゼが口を開く。


「みなさん知っているかと思いますが、今回攻略するダンジョン……”アヴァロン迷宮”は、入り口が6つに分かれています。戦力や構成バランスを考えて、人員を割り振らせてもらいます」


 リーゼロッテが以前俺たちに説明していたことと、同じ内容である。

 他の冒険者たちも、あらかじめ知っていた様子だ。

 続けて、次女のシャルレーヌが口を開く。


「第一隊から第六隊までに割り振ります。それぞれ、私たちラスターレイン伯爵家の者が1人つき、隊長を務めます。どの隊が重要というわけではなく。一つひとつの隊の働きが大切になりますので、その意識をお願いしますね」


 そうは言っても、当主であるリールバッハや長男であるリカルロイゼの隊の重要度が高そうだが。

 一応、名目上はどの隊も大切だということか。

 リールバッハが一歩前に出て、口を開く。


「まずは第一隊。この我リールバッハが隊長を務める。副隊長は”剣姫”ベアトリクス第三王女殿下。以下、”ビーストマスター”アルカ、”烈風”のイリア、”解体者”ボネス。そして……」


 栄えあるリールバッハの隊は、ベアトリクス、アルカ、イリア、ボネスらが選ばれた。

 それ以外にも、ちぃちゃんの他、多数の冒険者の名前が挙げられている。

 一人ひとりがCランク以上の実力者であり、強い。


「次に第二隊です。この私リカルロイゼが隊長を務めます。副隊長は”雷竜拳”マクセル。以下、”マッスルパンチ”ギルバート、”破壊拳”ジルガ。そして……」


 長男であるリカルロイゼの隊には、マクセル、ギルバート、ジルガらが選ばれた。

 リーゼロッテの話によれば、リカルロイゼは高い水魔法の実力を持つそうだ。

 ただし水魔法一辺倒であり、武器の取り扱いや武闘は不得手だと言う。

 その短所を補うため、前衛として安定していそうな武闘家たちをメンバーに据えたといったところか。


「次は第三隊です。私マルセラが隊長を務めます。副隊長は”聖騎士”ソーマさん。それに、”白銀の剣士”ソフィアさんと……」


 当主の妻であるマルセラの隊には、シュタインが選ばれたか。

 もちろん、シュタインの妻であるミサたちもいっしょだ。


「第四隊を発表するぜ。隊長はこの俺リルクヴィスト。副隊長は、”魅了”のフレンダ。あとは、”雪月花”と……」


 次男のリルクヴィストの隊には、フレンダや雪月花らが選ばれた。

 フレンダの魅了により操られているCランク冒険者たちもいっしょだ。

 魅了によって操られているとはいっても、洗脳というレベルではなくて、根っこの部分は自己判断だ。

 選別試験のときだけならともかく、今なお従っている者たちは、好んで従っているといった感じである。


「次は第五隊です。私シャルレーヌが隊長を務めさせていただきます。副隊長は、”支配者”ウィリアムさん。あとは、”武闘演舞”のジョージさんとセニアさん、それに……」


 ウィリアムは、次女のシャルレーヌの隊に選ばれたか。

 彼は個人として強い上に、パーティメンバーも強者揃いだ。

 安定した功績を残すだろう。


「最後に、第六隊です。わたくしリーゼロッテが隊長を務めます。副隊長は、”紅剣”のタカシさん。あとはミリオンズのみなさまと、”山風”の蓮華さんと……」


 やっと俺たちミリオンズが呼ばれた。

 リーゼロッテの隊だ。


 俺たちとリーゼロッテに親交がある点に配慮されたのだろうか?

 彼女には加護(小)を付与済みで、通常の加護の付与も狙っている。

 彼女の隊に配属されたのはラッキーだ。

 当主のリールバッハの隊でも悪くはなかったが、まあ過ぎたことはいいだろう。


 あと、俺たちミリオンズとそれなりに親交のある蓮華もいっしょだ。

 彼女の忠義度は30台。

 きっかけさえあれば、加護(小)を付与できる忠義度40も十分に狙える。



 第一隊から第六隊のそれぞれのメンバーが集まり、打ち合わせをする。

 俺たちの隊にも、もちろんミリオンズ以外のメンバーがいる。

 しかし、ミリオンズ以外には特に高名な冒険者はいないようだ。

 まあ、Cランクがゴロゴロいるし、一人ひとりが強いのは間違いないが。


「あらためてよろしく。リーゼロッテさん」


「よろしくお願いしますわ。タカシさんたちには、本当に期待していますので。父や兄が率いる本隊への配属でなくて申し訳ありませんが……」


 リーゼロッテがそう言う。

 やはり、リールバッハやリカルロイゼの隊が重要視されている感じか。


「そこはだいじょうぶだ。俺たちミリオンズの力をフルに発揮して、ダンジョンの攻略に貢献させてもらう。なあ? みんな」


「そうですね! 私もがんばります。むんっ!」


「私も精一杯付いていきます」


 ミティとサリエがやる気を見せる。


「ところで、ボクたち第六隊は、6つの入口のどこから突入するの?」


「北東の入口ですわ。ファイアードラゴンの眠る最奥からは最も遠いと言われていますが……」


 リーゼロッテがそう答える。


「最も遠いのか。俺の水魔法をファイアードラゴンの再封印に活かしたかったが……」


 俺の水魔法はレベル5。

 そして、リーゼロッテの水魔法も加護(小)によりレベル5に達している。


 俺とリーゼロッテという、ファイアードラゴン戦での最高クラスの戦力を遠ざける配置にするとは……。

 配置を決めたのはだれだろう?

 当主であるリールバッハだろうか。

 少しセンスがない。


 いや、そういえば、俺が水魔法を極めていることはほとんど広まっていないのか。

 選別試験では水魔法を使わなかったし、人前で大規模な水魔法を使ったこともない。


 リーゼロッテ自身の水魔法の腕前も向上しているが、少し前までは中級までしか使えなかった。


 リールバッハたちの認識では、俺もリーゼロッテもせいぜい中級の水魔法使い程度に思われている可能性がある。

 もっと、ダイレクトにアピールしたほうがよかったか?

 今から直談判するのも悪くはないが……。


「実際のところ、ダンジョン内は入り組んでいますわ。最も遠いと言われる北東の入口が、実は最奥部までもっとも近いという可能性も残っています。あまり深く考えず、わたくしたちのベストを全うすることにしましょう」


 リーゼロッテがそう言う。

 ファイアードラゴンまで最も遠いというのは、所詮は憶測レベルということか。


「ふむ。所謂、”急がば回れ”というやつでござるな? 拙者もただ自分の力を出し切ることに集中するでござる」


 蓮華がそう言う。

 まあ、伯爵家や高位の冒険者がたくさん集まっているこの場で、あれこれかき回すのもよくない。


 リールバッハの第一隊には、強者が多く配属されている。

 ベアトリクス、アルカ、イリア、ボネスなど……。

 彼女たちとミリオンズが入れ替わったとして、ミリオンズが彼女たち以上に活躍できるという保証もない。


 俺たちは俺たちで、北東の入口から探索を進めて第六隊としての任務を全うすることにしよう。

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