396話 戦力の整理

 さらに数日が経過した。

 今日は、ダンジョン攻略メンバーの発表が行われる日だ。

 選別試験が行われた円形の広場に、参加者たちが集まっている。


「改めて見ても、錚々たる顔ぶれだな……」


 俺はそうつぶやく。

 先日の選別試験で、それぞれの実力の片鱗は見せてもらった。

 人数がとても多いので、改めて整理しておこう。


「やれるだけのことはやったでござる。あとは結果を待つ……」


 蓮華。

 金髪碧眼のエルフの美少女。

 ヤマト連邦出身で和服を来ている。

 故郷では”山風”の二つ名を持ち、確かな剣術と風魔法の実力を持つ実力者だ。

 数日前には、俺やミティとともに風魔法の修練という名の露出会を開いた仲である。


「うふふ。ちぃちゃんもがんばっちゃうもんね☆」


 ちぃ。

 中級の土魔法を扱う、20代の女性冒険者である。

 それ以外の情報は特にない。

 選別試験後に話しかけようとしたのだが、いつの間にかいなくなっていた。

 冒険者ギルドなどで聞いたところ、特別表彰者ではないし、普段はこのあたりを拠点にしているわけでもないそうだった。

 どことなく見覚えがある顔のような気もするが、きっと気のせいだろう。


「ガハハ! 我が筋肉の前に敵はなし!」


「おうとも! ダンジョンだろうが、俺たちがぶっ潰してやるぜ!」


 ギルバートとジルガ。

 ギルバートの二つ名は”マッスルパンチ”。

 ジルガの二つ名は”破壊拳”だ。

 また、2人合わせて”ビッグバン兄弟”という二つ名も持つ。

 選別試験の後に話す機会があったのだが、彼らは実は兄弟だったそうだ。


「ふっ。このダンジョン攻略はきっかけに過ぎない……。私の使命は……」


「何をごちゃごちゃ言っているの! たくさん稼いで、チビたちに腹いっぱい食わせてあげるわよ!」


 ジョージとセニア。

 気品のある40代男性と、30代くらいの女性のペアだ。

 ”武闘演舞”という舞うような華麗な動きの格闘で戦う。


「タカシは盟友だが、先輩として私も負けていられない」


「ふふ。シュタインくん、がんばろうね」


 シュタイン。

 サザリアナ王国の騎士爵を授かっており、Bランク冒険者でもある。

 斬魔一刀流と東方の流派を複合させて戦う。

 水魔法や聖魔法も高い水準である。

 妻でありパーティメンバーのミサたちも、一定以上の戦闘能力を持つ。


「進化した雷竜拳で道を切り開く!」


「へっ。俺の足技なら、ダンジョン産の魔物だろうと敵じゃねえぜ!」


 マクセル。

 ”雷竜拳”の二つ名を持つ冒険者である。

 冒険者パーティ”疾風迅雷”のリーダーでもある。

 パーティメンバーには、”嵐脚”のストラス、オーガのセリナ、ミティの幼なじみのドワーフであるカトレア、それに子分のカイルとレベッカがいる。


「王家として、臣下が困っていれば助けるのは当然のことだ……」


 ベアトリクス。

 サザリアナ王国の第三王女。

 ”剣姫”の二つ名通り、剣術の腕前は相当なものだ。

 また、双剣から闘気弾を放つ”サザンクロス”という技は、Cランク冒険者を一蹴するほどの威力を持つ。


「聖国に戻る前に、大きな手土産ができそうだね」


 ソフィア。

 ”白銀の剣士”の二つ名を持つ。

 高い水準でバランスよくまとまった能力と、聖剣エクスカリバーによる波動砲で戦う。

 睡眠魔法や治療魔法も使える。

 ミネア聖国の聖王猊下のお気に入りのようだ。


「あはは。またモフモフの仲間が増えるといいなあ」


 アルカ。

 ビーストマスターの二つ名を持つ。

 くまっち、とらっち、うるふっち、きめらっちなど、魔物を従えて戦う。

 特にくまっちやきめらっちは、Cランク冒険者相当以上の実力を持ち、強力な戦力だ。


「軽く一稼ぎさせてもらうとするかの。妾ならばダンジョンなど余裕じゃ」


「……イリアは俺が守る……」


 イリア。

 ”烈風”の二つ名を持つ。

 外見は幼女だが、実年齢はそこそこ高い。

 熊獣人の”解体者”ボネスとの関係性は不明だ。


「初めてのダンジョン……。ドキドキする……」


「気を引き締めて、がんばるわよ!」


「ハナちゃんにお任せ~」


 ユキ、ツキ、ハナ。

 冒険者パーティ”雪月花”の面々である。

 聞いたところ、三つ子の三姉妹だそうだ。

 物静かなユキ、元気っ子のツキ、のんびり系のハナである。

 高い連携力を誇る。


「お友だちといっしょに、かるーくがんばるからね~」


 フレンダ=ハートフィールド。

 ”魅了”の二つ名を持つBランク冒険者である。

 二つ名の通り、希少な魅了魔法を得意とする。

 個人の戦闘能力もそれなりにあるようだが、先日の選別試験ではアイリスの先制攻撃であっさりと撃破されていた。


「ふん。選別試験ではミリオンズどもに不覚をとったが、この数日でさらに仕上げておいた。俺たちにスキはない」


「はっ! 偉大なるウィリアム様の名声を高めるため、私めも微力ながら手伝わせていただきます」


 ウィリアム。

 ”支配者”の二つ名を持つ。

 彼も、先日Bランクに昇格していたそうだ。

 パーティメンバーには、猫獣人のクロー使いのニュー、水魔法使いのイル、同じく水魔法使いのシェーラ、音魔法使いの褐色少女クロメなどがいる。

 先日の選別会では、俺たちミリオンズが実質的に勝利を収めた。


 その他、多数の強者が選別試験に参加していた。

 一見その辺のモブに見えるような人でも、Cランク冒険者だったりする。

 一人ひとりの戦闘能力が高い。



 そんな感じで、俺はダンジョン攻略メンバーの選別試験への参加者たちの情報を整理していく。

 しばらくして、ラスターレイン伯爵家が到着した。

 当主のリールバッハ、妻のマルセラ、長男のリカルロイゼ、次男のリルクヴィスト、長女のリーゼロッテ、次女のシャルレーヌだ。


 リールバッハが口を開く。


「皆のもの、待たせたな。先日の選別試験、まことに見事だった。改めて、称賛させてもらう」


 伯爵家当主のリールバッハから見ても、やはりこの参加者たちの平均戦闘能力は高いようだな。

 彼が言葉を続ける。


「選別試験の内容を踏まえて、こちらでダンジョン攻略メンバーの編成を考えさせてもらった。……リカルロイゼとシャルレーヌ、頼む」


 リールバッハがそう言って、話を振る。

 長男のリカルロイゼと、次女のシャルレーヌだ。

 2人とも水色基調の高貴な服装をしており、顔立ちも整っている。


 リカルロイゼが一歩前に出て、口を開こうとしている。

 果たして、どういった人選になるのだろうか。

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