376話 冒険者ギルドにて
みんなのスキルを強化した翌日になった。
俺たちミリオンズは、この街の冒険者ギルドに来ている。
あと、なぜかリーゼロッテもいっしょに付いてきている。
本人の希望だ。
「よう。呼ばれたので来てやったぞ」
俺は受付嬢にそう言う。
少し偉そうだったか?
騎士爵になってから、一般人との距離感が少しわからなくなっている。
この街は俺の領地ではないし、もう少し丁寧でもよかったかもしれない。
「よくおいでくださいました。タカシ=ハイブリッジ様」
受付嬢がそう言って、深々と礼をする。
丁寧な対応だ。
この場での俺は冒険者だ。
俺と冒険者ギルドの受付嬢との関係は、単なるビジネスパートナーに留まる。
彼女は俺の配下ではないし、俺が顧客というわけでもない。
とはいえ、1年ちょっとという短期間でBランクにまで昇格した冒険者なので、有望株なのは間違いない。
そういう意味では、こういった丁寧な対応も不自然というほどではないだろう。
「ああ。それで、今日はどういった用件なのだ?」
「ミリオンズのみなさまの、最新の登録状況をお伝えしたく思っております。ギルド貢献値の更新、新たな特別表彰者、ランクアップなど……」
受付嬢がそう言う。
やはり、その件だったか。
日々の狩り、ゴブリンキングの討伐、そしてソーマ騎士爵の浄化。
いろいろと貢献してきたし、ギルドからの評価も上がっているのではないかと思っていたんだ。
「なるほどな。では、順に報告してもらえるか?」
俺はそう言う。
受付嬢が手元の資料に視線を落とす。
「はい。……まず、タカシ様のギルド貢献値が1億ガルとなります」
俺のもともとの貢献値は8000万ガルだ。
今回の査定額アップにより、とうとう1億の大台に到達した。
1億の男だ。
「ふむ。悪くないな」
「ええ。タカシ様はまだ冒険者登録して1年と少しですし、これは驚嘆すべきスピードですよ! この国はもちろん、新大陸全土……いえ、中央大陸全土まで含めても、有望ルーキー十傑には入っていると思います! いわゆる、超新星と呼ばれるスーパールーキーですね」
受付嬢が興奮気味にそうまくしたてる。
逆に言えば、チートの恩恵を多大に受けまくっている俺と互角以上のルーキーが、10人ぐらいはいるということか。
ルーキーに限定しなければ、俺より強い人もまだまだいるだろう。
世界は広い。
「……ゴホン! 失礼、興奮し過ぎました」
受付嬢が咳払いをして、仕切り直す。
彼女が言葉を続ける。
「ミティ様は、ギルド貢献値5500万ガルとなります。そして、冒険者ランクがBに上がります」
「私もタカシ様と同じBランクですか……。気を引き締め直して、がんばります!」
ミティがそう意気込む。
彼女の超パワーにはいつも助けられている。
今後とも、末永くパーティに貢献してもらいたい。
「アイリス様は、ギルド貢献値6000万ガルです。冒険者ランクはBとなります」
「ボクもBランクかー。いつの間にか、ずいぶんと高ランクになったものだね」
アイリスがそう言う。
彼女はもともと武闘神官だ。
修行がてら、冒険者活動をし始めた。
それがいつの間にか、Bランクにまで到達したわけだからな。
エドワード司祭に報告すれば、きっと驚いてくれるだろう。
「モニカ様はギルド貢献値4200万ガルに、ニム様はギルド貢献値4000万ガルとなります」
「うんうん。いい感じだね」
「わ、わたしもまだまだがんばりますよ」
モニカとニムがそう意気込む。
モニカは雷魔法を活かした超スピード、ニムは土魔法を活かした超防御を持っている。
今後も、上を目指せるだろう。
「そして……。ユナ様は、今回特別表彰制度の対象となりました。二つ名は”魔弾”。ギルド貢献値は2700万ガルとなります」
受付嬢がそう言う。
特別表彰者の写真が載っている紙を見せてくれる。
凛々しい顔で弓を引いているユナの写真だ。
ここで、俺たちミリオンズの特別表彰用の写真のポーズを整理しておこう。
”紅剣”のタカシは、紅剣を構えてキメ顔をしている。
”百人力”のミティは、大きなハンマーを軽々と構えている。
”武闘聖女”アイリスは、凛々しい顔で武闘の構えを取っている。
”雷脚”のモニカは、華麗に回し蹴りをしている。
”鉄心”ニムは、ロックアーマーを発動して堂々と構えている。
ここに、凛々しい顔で弓を引いている”魔弾”のユナが追加されるわけだ。
「魔弾か。魔法の矢を併用するユナに、ピッタリの二つ名だな」
「ふふん。悪くないわね。これから、”魔弾”のユナの名を世界に轟かせていくわよ!」
ユナがハイテンションにそう言う。
彼女の冒険者歴は長いが、特別表彰制度においてはモニカやニムに遅れを取っていた。
その遅れを取り戻せて一安心といったところか。
「マリア様とサリエ様は、それぞれDランクに昇格となります」
「ふーん? よくわかんないけど、やったー!」
「これで私も、駆け出しは何とか卒業といったところですか。足を引っ張らないよう、がんばってきますね」
サリエがそう言う。
加護も無事に付与できたことだし、明確に足を引っ張るということはないだろう。
とはいえ、マリアもサリエもミリオンズの中ではまだまだ基礎レベルが低い。
いろいろとサポートはしてあげる必要は残っている。
「ふむ……。これで全員の最新情報を教えてもらったことになるな。ご丁寧にどうもありがとう」
「いえいえ。ミリオンズのみなさまは、サザリアナ王国、そして新大陸の希望の星ですから。冒険者ギルドとしても、全力でバックアップさせてもらいますよ。何か不便な点や困りごとなどありましたら、お気軽にお申し付けくださいませ」
受付嬢がそう言う。
いたれりつくせりだな。
現状で特に困りごとはないが、何かあればお世話になろう。
「あの……。少しよろしいでしょうか?」
リーゼロッテが声を上げる。
彼女はミリオンズではないので、先ほどまでの報告は静かに聞いていた。
「どうしましたか? リーゼロッテさん」
「わたくしを、ミリオンズに加入させていただくことは可能でしょうか?」
リーゼロッテがそう言う。
「ええっと……。もちろん可能です……よね?」
俺としては構わないが、ギルドとして何か制限があるのだろうか。
受付嬢に視線で助けを求める。
「特に問題なく可能ですよ。パーティ人数が9名になるので、ギルドとして推奨はしませんが。禁止したりはしません」
受付嬢がそう言う。
あまり大人数のパーティになると、報酬の配分や連携でもめやすい。
ギルドが推奨していないのはそういった理由だ。
「しかし、なぜ俺たちミリオンズに加入を? 伯爵家の長女のリーゼロッテさんなら、このような危険な仕事をせずともよいのでは?」
俺はそう問う。
「ええと……。最初は、タカシさんたちミリオンズのみなさまを、ただの一戦力とみなしていました。お父様やお兄様たちが声を掛けている別の高ランク冒険者たちもいますし……」
リーゼロッテがそう言う。
俺たちミリオンズを最大限に頼っているわけではなく、あくまでいないよりはマシぐらいの評価だったということか。
彼女が言葉を続ける。
「しかし、道中のゴブリンキング戦や、今回のソーマ騎士爵の一件を見て、考えは変わりました。ミリオンズのみなさんには、ぜひともファイアードラゴンの再封印の際に主戦力となってほしいのです。わたくしもミリオンズに加入させていただくことで、より密な連携ができるのではと考えています」
「なるほど……。そういうことなら、断る理由はありません。みんなも構わないよな?」
俺はミリオンズのみんなにそう問う。
「私は構いません!」
「ボクもいいよー」
ミティとアイリスがそう言う。
他のみんなも、リーゼロッテの加入に反対意見はないようだ。
さっそく、リーゼロッテが登録用紙に記入を進めていく。
リーゼロッテ=ラスターレイン
役割:測量士
職業:水魔法使い
ランク:C
目的:水魔法の研鑽
もともと知っていた通り、リーゼロッテの冒険者ランクはCだ。
中級の水魔法を使えることが大きい。
俺からの加護(小)の恩恵もあるし、今では最上級の水魔法も発動可能になっているはず。
非常に心強い。
彼女が登録用紙を受付嬢に提出する。
「……はい。これにて、登録は完了しました。ミリオンズのみなさまの、ますますのご活躍に期待しております」
「ああ。期待しておいてくれ」
実際のところ、俺たちはまだまだ上を目指せるだろう。
それにしても、ミリオンズのずいぶんと大所帯になった。
これで、9人パーティか。
みんなのランク、二つ名、ギルド貢献値を整理しておこう。
”紅剣”のタカシ、Bランク
ギルド貢献値:1億ガル
”百人力”のミティ、Bランク
ギルド貢献値:5500万ガル
”武闘聖女”アイリス、Bランク
ギルド貢献値:6000万ガル
”雷脚”のモニカ、Cランク
ギルド貢献値:4200万ガル
”鉄心”ニム、Cランク
ギルド貢献値:4000万ガル
”魔弾”のユナ、Cランク
ギルド貢献値:2700万ガル
マリア、Dランク
サリエ、Dランク
リーゼロッテ、Cランク
パーティ総貢献値:3億2400万ガル
今までは、Bランクパーティの要件をギリギリ満たしている感じだった。
今回のランクアップや貢献値の上昇により、俺たちも立派なBランクパーティになったと言えるだろう。
次に狙いたいのは、俺のAランク昇格、モニカ、ニム、ユナのBランク昇格、マリアとサリエのCランク昇格あたりか。
リーゼロッテには加護(小)を付与できたことだし、彼女の特別表彰も狙える。
今後もがんばっていこう。
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