257話 ユナがミリオンズへ正式加入
ディルム子爵の父親を治療してから数日が経過した。
経過観察や諸用のため、俺たちミリオンズはまだディルム子爵領の街に滞在している。
宿泊場所はディルム子爵邸だ。
もうしばらくこの街に滞在した後は、もう一度ウォルフ村へ戻る予定だ。
そして、転移魔法陣でラーグの街に帰ることになるだろう。
今のうちに、ユナと今後のことについて相談しておこう。
俺、ユナ、ミティ、アイリス、モニカ、ニム。
6人で、ディルム子爵邸の客室に集まる。
「ユナ。大切な話がある」
「何かしら?」
「正式に、俺たちミリオンズに加入しないか?」
俺はそう言う。
加護の条件を満たした以上、ユナにはぜひともミリオンズに加入してもらいたい。
この点は、ミティやアイリスたちにも相談済みだ。
そして、あわよくばハーレムメンバーにも……。
いや、これはまだ先の話か。
「ふふん。もちろんそのつもりよ! よろしく頼むわね」
やけにあっさりと了承してもらえた。
「ユナさん。これからも、いっしょにがんばっていきましょう!」
「今のボクたちに足りない、冒険者としての経験値を補ってくれそうだね。頼りにしているよ」
ミティとアイリスがそう言う。
「よろしくね。初めての後輩だけど、冒険者としては先輩だね。いろいろと教えてね」
「わ、わたしにもいろいろ教えてください!」
モニカとニムがそう言う。
「ふふん。もちろんよ。タカシの力のおかげで私もかなり強くなれたし、もう今までみたいに足は引っ張らないと思うわ」
ユナがそう言う。
足を引っ張っていると思っていたのか。
まあ確かに、加護持ちの中に1人だけ普通の人がいると、戦闘能力としてはどうしても見劣りしてしまうが。
「ああ。あとは、どれだけうまく力を使いこなせるかだな。俺なんかは、力だけなら余裕でBランクはあると思うんだが……。油断すれば、あっさりやられることもある。ウォルフ村でもアルカのクマにやられたしな」
ここで、俺の戦歴を振り返ってみよう。
日々の魔物狩りはさすがに覚えていない。
1対1の戦いだけを整理する。
vsミッシェル(ガルハード杯1回戦)……敗北。
vsアイリス(ガルハード杯余興試合)……勝利。
vsバルダイン(潜入作戦)……勝利。
vsマリア(潜入作戦)……敗北。
vsベイグ(ボフォイの冒険者ギルドでの模擬試合)……敗北。
vsメルビン師範(道場入門時の模擬試合)……敗北。
vsミッシェル(メルビン杯1回戦)……勝利。
vsアイリス(メルビン杯2回戦)……敗北。
vsくまっち(ウォルフ村の防衛作戦)……敗北。
3勝6敗だ。
こうして整理すると、チートの恩恵を受けまくっている割には、情けない数字である。
うわっ……俺の勝率、低すぎ……?
まあ格上との勝負もあるので全勝は難しいだろうが。
マリア戦、ベイグ戦、くまっち戦あたりは、油断しなければ勝てた勝負だったはずだ。
マリア戦では、彼女の吸精の宝杖により俺の魔力や闘気が吸われてしまい、戦闘不能にまで追い込まれてしまった。
彼女を子どもと甘く見た俺の油断だ。
ベイグ戦では、木刀を使っての模擬試合だったのにうっかり火炎斬を発動してしまった。
俺の判断ミスだ。
くまっち戦では、相手にまだ余力がある状態で詠唱時間の長い魔法を発動しようとしてしまった。
もっと詠唱時間の短い魔法で刻んでいくべきだった。
とまあこのように、ステータス操作によってスキルを取得するだけでは、無敵とは言い難い。
もちろん、一般人などよりははるかに強くはなれるが。
「ふふん。わかったわ。力に溺れないように、日々の研鑽を絶やさないようにしないとね」
「しかし、ドレッドさんとジークさんはいいのか? 赤き大牙として活動は再開しないのか?」
「ええ、当面は再開しないそうよ。村の借金の件も片付いたしね。無理にリスクを背負ってまで冒険者活動をする必要はないわ」
それもそうか。
赤狼族は、希少な種族だ。
存在がバレれば、奴隷狩りに狙われる可能性があるのだった。
「クトナは冒険者に憧れているし、いずれは村の外にまた出るかもしれないわね。まあそのときは、ドレッド、ジーク、クトナの3人で活動することになるでしょうね」
「ふむ。ユナの代わりにクトナが入るわけか」
「ドレッドとジークはともかく、クトナはライカンスロープの特徴が濃いわ。しばらくは様子見ね。ハガ王国のハーピィやオーガのように、友好種族として認知されていけばいいのだろうけど。チャンスがあれば、私もアピールしていくわ」
俺たちミリオンズという強力な武闘集団の中にいれば、ユナが奴隷狩りに狙われるリスクも減るだろう。
その間に、ライカンスロープという種族の認知度を上げていけば、ものめずらしさが減って奴隷狩りのリスクも減っていくかもしれないな。
このあたりは、地道に活動していくしかないだろう。
「ところで、ミティとアイリスはタカシと結婚しているのよね?」
「ええ」
「うん、そうだよー」
ユナの問いに、ミティとアイリスがそう答える。
「私が3人目に立候補してもいいのかしら?」
ピシッ。
ユナの爆弾発言に。
空気が凍りついた気がした。
「私は構いませんが……」
「ボクもまあ……。ちょっと複雑な気持ちはあるけど」
ミティとアイリスがそう言う。
「タカシの第三夫人は私だよ! ラーグの街に帰ったら、お父さんに相談しようと思っていたの」
「わ、わたしもそうです! わたしが第四夫人です」
モニカとニムがそう言う。
少し鬼気迫った顔をしている。
「ふふん。まあ、2人がそう言うのなら私は少し待っていようかしら。あんまりモタモタしていると、先を越しちゃうからね」
モニカとニムの迫力の前に、ユナは引き下がる。
とりあえずこの場は収まりそうだ。
それにしても、モニカ、ニム、ユナ。
みんな俺との結婚を意識してくれているとはな。
まあ、俺のチートによるところが大きいだろうが。
しかしいくらチートがあるとはいえ、性格や顔が致命的に嫌いであれば、結婚しようとはならないだろう。
彼女たちの好意を無下にしないためにも、今後もがんばっていかないとな。
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