180話 マクセルたちとの別れ

 数日が経過した。


 今日はガロル村からラーグの街に戻る日だ。

ミティの部屋に設置しておいた転移魔法陣を利用する。


 俺の今の最大MPだと、ガロル村からラーグの街まで同時に転移できるのは俺を含めて3人までだ。

順番を考えておく必要がある。


 まずは今日の午前中のうちに、俺、モニカ、ニムの3人でガロル村からラーグの街に転移する。

MPを自然回復させるために、ラーグの街でゆっくりし、一晩を明かす。


 翌朝、俺1人でラーグの街からガロル村に転移する。

MPを自然回復させるために、ガロル村でゆっくりする。

その日の夕方ごろ、俺、ミティ、アイリスの3人でガロル村からラーグの街に転移する。

こんな感じの流れでいいだろう。



 帰る前に、お世話になった人たちに最後の別れを済ませておこう。

まずは村長とカトレアへのあいさつだ。


 俺、ミティ、アイリス、モニカ、ニム。

5人で村長宅に向かう。

村長とカトレアに話しかける。


「村長さん。カトレアさん。お世話になりました。そろそろこの村を出ようと思います」


「おお。そうですか。こちらこそお世話になりました。タカシ殿たちがいなければ、私もカトレアもどうなっていたことか……」


「そうですわね。本当に、感謝していますわ」


 村長とカトレアがそう言う。

確かに、あのままだとやばかっただろう。

霧蛇竜ヘルザムによる精神汚染がもっとひどくなり、他の被害者が出ていたかもしれない。

最終的に、村長やカトレア自身の破滅につながっていた可能性もある。


「いえ。俺たちにできることをしただけですので」


 俺はそう謙遜しておく。


「カトレアちゃん。旅に出るんだよね。また会う日を楽しみにしているよ。無理はしないでね」


「うん。ミティちゃん。またどこかで会えたらいいね」


 ミティとカトレアが、最後のあいさつを済ませる。

俺たちも最後のあいさつを済ませ、彼らと別れる。



 さて。 

次は、餅屋のマイン、マーシー、フィルにあいさつをしておこう。

彼女たちの餅屋を訪れる。

まだ営業前なので、話しかけてもだいじょうぶだろう。


「みなさん。お世話になりました。そろそろこの村を出ようと思います」


「そうなんだ。これからも冒険者としてがんばってね」


 マインがそう言う。


「これは選別の餅なんだな。うん」


 マーシーがそう言って、箱に入った餅を差し出してくる。


「よろしいのですか?」


「ぐふふ。もちろんだ。その餅のおいしさを、他の街にも広めておいてくれ」


 フィルがそう言う。


「そういうことであれば、遠慮なく受け取っておきます」


 俺はそう言って、餅を受け取る。


「ちょっといいかな。さらに追加でもらうことはできる? 完成品と、原材料のもち米と。もちろんお金は払う」


「ええ。それはもちろん構わないよ」


 モニカの要求に、マインがそう答える。

モニカは、この餅の味の探求をしたいようだ。

完成品をじっくり味わいつつ、原材料のもち米から味の再現をしていく心づもりか。


「こ、ここのお餅は本当においしいです。わたし、大好きです」


 ニムがそう言う。

彼女もこう言っていることだし、完成品の餅は多めに買い込んでおく。

これで好きなときにあの餅を食べることができる。

俺のアイテムボックスに購入した餅を収納する。


「では、これにて失礼します。みなさん、お元気で」


「タカシ君たちも元気でね。活躍を祈っているよ」


 マインたちと最後の別れを済ませ、店を後にする。



 次はマクセルたち疾風迅雷の面々と、別れを済ませておこう。

彼らが宿泊している宿屋に向かう。

ちょうど、宿屋の前に彼らがいた。

話しかける。


「みなさん。お世話になりました。俺たちはまた別の街に向かいます」


「そうか。装備の件、あらためてありがとうな。ミティさんの武具、ありがたく使わせてもらうよ」


「いえ。喜んでいただけたなら幸いです!」


 マクセルの言葉に、ミティがそう返す。


「へっ。すぐに俺たちもCランクになって追いついてやるぜ! 顔を洗って待ってるんだな! タカシ」


「それを言うなら首を洗って、なの。ストラス君はおバカなの」


 ストラスの言葉に、セリナがそうツッコミを入れる。

夫婦漫才か。


 彼らの冒険者ランクは、全員がDだ。

パーティランクもD。


 カイルとレベッカは確かにDランクぐらいが適正だろう。

しかし、マクセル、ストラス、セリナはCランクでもおかしくない実力がある。

おそらく、まだ冒険者になって日が浅く、実績が足りていないだけだろう。

彼らの個人ランクは、いずれ近いうちにCランクになる可能性が高い。


「俺たちも、Cランクパーティの名に恥じないようにがんばっていきます。……それにしても、みなさんとの合同訓練は非常に参考になりました」


「そうだね。特に、ボクやモニカは参考になるところが多かった。同じ武闘家だしね」


「そう言ってもらえると、こちらとしてもうれしいよ」


 俺とアイリスの言葉に、マクセルがそう返す。


「自分も魔法を使えるように練習するの。次に会うときは、パワーアップしたスーパーセリナをお披露目するの」


「そうだな! 俺もパワーアップして、スーパーストラスをお披露目してやるぜ!」


 セリナとストラスがそう意気込む。


 スーパーストラス?

何だそれは。

いちいち説明するのもめんどうだ。

てめえで勝手に想像しろ。


「……ところで、皆さんは次はどちらに向かわれるのですか?」


「まだ決まっていないよ。まずはボフォイの街に戻って、良さそうな依頼がないか確認するところからだね」


 俺の問いに、マクセルがそう答える。


「そうですか」


「あ、でもその前にやりたいことが……。いや、これはいいか。忘れてくれ」


 マクセルが何かを言いかけるが、途中でやめる。

さらに聞いてみたが、はぐらかされてしまった。


 彼らと最後のあいさつを済ませ、別れる。

またどこかで会うこともあるはずだ。

活躍を祈っておこう。

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