126話 モニカとニムの冒険者デビュー
モニカとニムの冒険者登録を終えて、北の草原にやってきた。
北の草原の中でも、比較的訓練に適した場所がある。
”北の練習場”だ。
名前は俺が勝手につけただけだが。
北の練習場は、俺がアドルフ兄貴に稽古をつけていただいた場所だ。
また、ミティが冒険者としてデビューするときに練習した場所でもあるし、俺とミティで模擬試合を行った場所でもある。
ここは新人冒険者の練習に向いている。
魔物はファイティングドッグぐらいしかいない。
街に近いのでその数もあまり多くない。
モニカとニムは、初心者向けのレザーアーマーを装備済みだ。
ファイティングドッグの攻撃ぐらいならば、ある程度防げるだろう。
武器は俺のショートソードを貸している。
小型の剣だ。
1本しかないので、交代制で使ってもらおう。
「さて。では、初級冒険者向けと言われるファイティングドッグと戦ってもらう」
「わかった。でも、ちょっと怖いね」
「そ、そうですね」
モニカとニムがそう言う。
「まあ最初は怖いだろうな。まずは俺たちでファイティングドッグ戦の手本を見せる。その後、最低限の武器の扱い方と身のこなしを教える。最後に、俺たちのサポートを受けながらファイティングドッグと実際に戦ってみよう」
「うん。それならだいじょうぶかな」
「が、がんばります」
みんなで草原を歩き、ファイティングドッグを探す。
……いた。
ファイティングドッグだ。
「ファイティングドッグは、見かけが怖い。ただ、よく見れば動きは単調だ。見ていてくれ」
ファイティングドッグの攻撃を落ち着いて躱し、反撃する。
力を込めれば一撃で倒せるだろうが、あえて少し力を抜いておく。
何度か攻防を繰り返し、無事に討伐した。
「こんな感じだ。参考になったか?」
「うん。……それにしても、タカシってやっぱり優秀な冒険者なんだねえ。街での雰囲気とはかなり違うね」
「そ、そうですね。普段のタカシさんも優しくて好きですが、今のタカシさんもキリッとしていてかっこよかったです」
モニカとニムがそう言う。
「そ、そうか? ありがとう」
唐突に褒められた。
こうストレートに褒められると照れるな。
顔がニヤついてしまっているだろう。
「確かに、戦闘中のタカシは頼りになるね」
「タカシ様はいつでもかっこいいですよ!」
アイリスとミティがそう言う。
「あ、ありがとう。かわいいみんなにそう言ってもらえて、すごくうれしい」
俺は素直にそう言う。
褒められたら褒め返す。
倍返しだ。
ミティ、アイリス、モニカ、ニム。
4人とも、俺の言葉を受けてうれしそうにしてくれている。
「……では、次はミティとアイリスにも手本を見せてもらおう。いろんな人のを見たほうが参考になるだろうし」
「そうですね。私はハンマーで戦ってみます」
みんなで草原を歩き、次のファイティングドッグを探す。
……いた。
ファイティングドッグだ。
ミティがファイティングドッグと対峙する。
ファイティングドッグがミティに攻撃する。
ミティが華麗によける。
ファイティングドッグの隙をつき、ミティがハンマーを勢いよく振り下ろす。
クリーンヒットだ。
一撃で仕留めた。
さすがのパワーだ。
「へえ。片付けを手伝ってくれているときも思ったけど、ミティのパワーはすごいねえ」
「ほ、ほんとうにそうですね。私にもできるでしょうか……」
モニカとニムがそう言う。
「私のパワーはタカシ様の御力のおかげです。以前の私は、普通の人よりもほんの少し力が強いぐらいでした」
「ミティのがんばりも大きいけどね。きちんとがんばっていけば、力は伸ばしていける。俺たちに付いてこれるかという点は、さほど気にする必要はないと思う。方向性だけはしっかり考えないといけないが」
「わかった」
「わ、わかりました」
モニカとニムがうなずく。
「じゃ、次はボクだね。ボクは武闘で戦ってみせるよ」
再びみんなで草原を歩き、次のファイティングドッグを探す。
……いた。
ファイティングドッグだ。
アイリスがファイティングドッグと対峙する。
「はああ! 裂空脚!」
アイリスの回し蹴りがファイティングドッグに直撃する。
あえて闘気を使用していないようだ。
一撃ではファイティングドッグが倒れない。
アイリスとファイティングドッグとの攻防が続く。
数分後、ファイティングドッグは危なげなく討伐された。
闘気術なしでも、ファイティングドッグの相手ぐらいであれば問題なしというところか。
闘気なしでも、今のアイリスはDランク上位ぐらいの実力はあるだろう。
闘気ありなら、もちろんCランク以上の実力がある。
「アイリスの脚力はすごいね。兎獣人の私でもかなわないかも……」
モニカが少し自信をなくしたような顔でそう言う。
「まあ、ボクもタカシの力で強化してもらっているしね。脚力だけなら、モニカのほうがいずれ強くなってもおかしくはないよ。ボクは技巧を伸ばしていきたいと思っているし」
「強化の方向性次第だな。モニカが脚力を重視するなら、脚力を重点的に強化することも可能だ。その場合、確かにアイリスの言う通り、モニカの脚力のほうが強くなる日もくるだろう」
「そうなんだ。ちょっと安心したよ」
モニカがほっと胸をなでおろす。
「それで、モニカにニム。雰囲気は掴めたか?」
「うん。ある程度は掴めたかな」
「な、なんとなくわかった気がします」
「よし。手本はこれぐらいでいいか。次に、最低限の武器の扱い方と身のこなしを教えよう。まずは、何度か剣を素振りしてみてくれ」
「こう?」
「こうですか?」
モニカとニムが剣を素振りする。
ショートソードは1本しかないので、交代制だ。
「悪くない。モニカは手の持ち方をちょっとずらしてみてくれ。ニムは少し腰が引けているね」
いくつかのアドバイスを行う。
剣術レベル4の恩恵で、なんとなく改善点が理解できるのだ。
その後もしばらく素振りをしてもらう。
また、身のこなしについてもアドバイスを行う。
「よし。2人ともいい感じだ」
これなら、ファイティングドッグ相手に引けを取ることはないだろう。
「俺がファイティングドッグを弱らせるから、とどめだけさしてもらえるか? まずはモニカから」
「わかった」
みんなで草原を歩き、ファイティングドッグを探す。
……いた。
ファイティングドッグだ。
俺がファイティングドッグと対峙する。
瀕死になるまで痛めつける。
ファイティングドッグは闘争本能が強いので、中途半端にダメージを与えるとむしろ危険性が増すのだ。
弱らせるならば、瀕死レベルまで追い込む必要がある。
「よし。モニカ、攻撃してくれ」
「わかった。……えいっ」
モニカが小型の剣を振り、攻撃する。
ファイティングドッグを捉えた。
剣術スキルはないし鍛えてもいない攻撃だが、弱ったファイティングドッグにとどめをさすことはできるだろう。
無事にファイティングドッグが息絶える。
「うん。いい感じだ。次はニム、やってみよう」
「わ、わかりました」
ニムにも同じようにファイティングドッグを討伐してもらう。
2人とも、生物を殺めることにさほどの抵抗感はないようだ。
まあ犬とはいっても、敵意を剥き出しにしている犬だしな。
ファイティングドッグは人類の友とは言い難い。
この調子で最初のレベリングはやっていけそうだ。
交互にファイティングドッグを狩り続けてもらう。
ミティとアイリスはやや手持ち無沙汰だ。
俺たちを2グループに分ければ効率は上がるだろうが、危険性も若干上がる。
最初なので、とにかく安全重視だ。
ミティとアイリスが手持ち無沙汰で周囲を警戒する余裕があるぐらいがちょうどいいだろう。
そのままファイティングドッグ狩りを続けていく。
しばらくして、ニムのレベルが2から3に上がった。
さらに少しして、モニカのレベルが4から5に上がった。
狩りを一時中断して、スキルの取得・強化の方針を相談しよう。
レベル5、モニカ
種族:兎獣人
職業:ー
ランク:E
HP:47(36+11)
MP:22(17+5)
腕力:20(15+5)
脚力:50(28+8+14)
体力:26(20+6)
器用:22(17+5)
魔力:31(24+7)
武器:ショートソード
防具:レザーアーマー
残りスキルポイント20
スキル:
格闘術レベル1
脚力強化レベル1
料理術レベル3
称号:
タカシの加護を受けし者
レベル3、ニム
種族:犬獣人
職業:ー
ランク:E
HP:39(30+9)
MP:14(11+3)
腕力:20(15+5)
脚力:18(14+4)
体力:40(22+7+11)
器用:13(10+3)
魔力:18(14+4)
武器:ショートソード
防具:レザーアーマー
残りスキルポイント10
スキル:
体力強化レベル1
栽培術レベル1
称号:
タカシの加護を受けし者
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます