90話 ミティのスキル強化

 アイリスが強化するスキルについては、現在本人が検討している。

次に考えるべきは、ミティのスキルだ。


「次はミティの強化を考えてみよう」


「はい」


 ミティのスキルポイントは40ある。


「改めて説明するね。今ミティが持っている力はこういうのがある」


 ミティのスキルを紙に書き出し、見せる。

槌術レベル3

格闘術レベル1

投擲術レベル3

体力強化レベル1

腕力強化レベル4

器用強化レベル2

闘気術レベル3 「開放、感知、集中」

MP回復速度強化レベル1


「なにか希望はある? 現時点では、2つか3つの力を取得したり強化したりできると思ってくれ」


「そうですね……。実は、前回この話をお聞きしたときから、少し考えてきました」


 ミティに秘密を打ち明けたのは、ガルハード杯の1回戦でマーチンに勝った日の夜だ。


「考えるのはいいことだね」


「やはり、槌術、投擲術、腕力強化などがいいと思いました。後は、風魔法を覚えれば、投擲術と組み合わせて戦闘の幅が広がるかなと思います」


「俺もそのあたりがいいと思う」


「ただ、メインのハンマーは今日の戦いで壊れてしまったのが残念でした」


「そのことだけど、テスタロッサさんに代わりのハンマーを譲ってもらったよ。活躍の期待を込めて、無償でもらえた」


 アイテムボックスからハンマーを取り出す。

金属製のハンマーだ。


 今日の戦いで壊したのは石でできたストーンハンマーだった。

中古とはいえ、この金属製のハンマーのほうが耐久力や攻撃力は高いだろう。

その分重いが、ミティの今の腕力なら何の問題もない。


 ミティがハンマーの振り心地や重量を確認する。


「……なるほど! これはいいハンマーですね! ありがたく使わせていただきましょう!」


 ミティが満足気な顔でうなずく。


「うん。遠慮なく使っていこう」


 気に入ってもらえてよかった。


「このハンマーを使えることを考えると、やはり槌術を強化するのが良さそうかと思います」


「いいと思うよ」


 その場合、槌術レベル3をレベル4に上げるのに15ポイントを使用する。

残りは25ポイントだ。


「うーん……。他はどうしましょうか……」


「風魔法を取得してみるか? ミティの言う通り、攻撃の幅が広がるぞ。ハーピィにも有効かもしれないし」


 飛んでいるハーピィに風魔法をぶつけて、バランスを崩させるとかができる可能性がある。


「そうですね。今の私の攻撃手段は、ハンマー、投擲、闘気術を使った格闘の3つだけですからね」


「今回のようにハンマーが壊れたり、あるいは手頃な投擲物がなかったり、長期戦で闘気が切れたりしたとき、攻撃手段に困ることがあるかもね」


「魔法があれば、その心配が少し薄まりますね。投擲と組み合わせることも可能でしょうし」


 風魔法レベル1を取得する場合、10ポイントを使用する。

残りは15ポイントだ。


 風魔法をレベル2まで上げてしまうのもありかな?

風魔法レベル1をレベル2に上げるのに、5ポイント使用する。


 そして、残りの10ポイントは保留にする。

防衛戦という一大事だし、惜しみなく全部使い切ってしまうのもありかもしれないが。

やはり、少しはスキルポイントを余らせておいて、柔軟性を保ちたい。


「風魔法を取得する方向でいいか? 取得した後、レベル2に上げるのもいいかもしれないな」


「取得する方向でいきましょう。レベル2は少し待ってください。レベル1の使い勝手を確かめてみたいので」


「わかった。では、槌術をレベル4にして、風魔法を取得するぞ。いいな?」


「お願いします!」


 ミティのステータス画面を開く。

槌術をレベル4に強化する。

風魔法レベル1を取得する。


「……よし、強化と取得を行った。どうだ?」


 ミティがハンマーを素振りする。


「……はい。確かに、ハンマーを扱う技術が向上している実感があります。改めて、タカシ様のお力はすばらしいですね」


 純粋な俺の力かと言われると、ちょっと微妙だ。

しかし、褒められるのは素直に嬉しい気持ちもある。


「ありがとう。風魔法のほうはどう?」


「頭の中に風魔法のイメージが流れ込んできました」


「以前に教えたこともあるが、一応もう一度教えておく。風魔法レベル1はエアバーストという魔法だ」


「そうですね」


「空気の塊を発射する。火魔法と比べると、殺傷能力は低いが、応用性のある魔法だ。さっそく試してみるか?」


「そうですね。人がいないところに向けて、発動してみます」


 ミティが詠唱を始める。

右手で掌底を打ち出す。


「エアバースト!」


 空気の塊が発射されたようだ。

目には見えない。

草がざわざわと動いている。


 俺たちの近くに座って考えこんでいたアイリスが、顔を上げる。


「へえ。本当に魔法も取得できるんだね」


「アイリスも魔法を取ってみるか?」


 アイリスのメインは格闘だ。

だが、サブの攻撃手段として、攻撃魔法も多少は使えたほうがいいかもしれない。


「そうだねー。ボクも魔法を取得してみようかな。ボクは治療魔法と聖魔法しか使えないし」


 聖魔法とやらが少し気になるが、今は置いておこう。


「魔法を取ってみるのもいいと思うよ」


「どの魔法がいいかなー。無難に火、水、風、雷、土あたりかなあ。他にも光、闇、重力とかいろいろあるし。迷うなあ」


「俺は火魔法をレベル5まで上げている。ミティは風魔法をさっき取得した。アイリスには、できれば火と風以外の魔法にしてほしい」


「そうなの?」


「パーティ内で扱える魔法は、分散させたほうが柔軟性ができていいと思うんだ」


 逆に、同属性の魔法使いを集めれば、今回の防衛戦のように同時に発動して威力を増幅させることもできる。

同属性で揃えていくのも、悪くはない。


 とはいえ、今後冒険者としていろいろな活動をしていく上では、やはり柔軟性や応用力を大事にしたい気持ちがある。


「まあ、タカシがそういうならその方向で考えようかな」


「もちろん、最終的にはアイリスの意思を尊重するけど」


「特に火魔法や風魔法に大きな思い入れもないし、別にいいよ」


「それならよかった」


「とりあえず、もう少し考えてみるね」


 アイリスは再び考えこみ始めた。


 ミティはあれから何度かエアバーストを発動してみたようだ。


「……なるほど。これがエアバーストですか」


「うまく扱えそうか?」


「そうですね……。もう少しいろいろと試してみます。レベル2に上げるかは、それから判断したいと思います」


 ミティもいろいろと試したり考えたりするようだ。

限りあるスキルポイントだし、慎重に判断するのはいいことだ。


 さて、ミティもアイリスも、それぞれのスキルポイントの使い方を考え始めた。

俺自身のスキルポイントの使い道も考えないとな。



レベル13、ミティ

種族:ドワーフ

職業:槌士

ランク:E

HP: 96(74+22)

MP: 56(43+13)

腕力:241(73+22+146)

脚力: 46(35+11)

体力: 90(50+15+25)

器用: 39(17+5+17)

魔力: 53(41+12)


武器:ウッドハンマー

防具:レザーアーマー

その他:アイテムバッグ


残りスキルポイント15

スキル:

槌術レベル4

格闘術レベル1

投擲術レベル3

体力強化レベル1

腕力強化レベル4

器用強化レベル2

闘気術レベル3 「開放、感知、集中」

風魔法レベル1 「エアバースト」

MP回復速度強化レベル1


称号:

タカシの加護を受けし者

ジャイアントゴーレム討伐者

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