37話 火魔法レベル5:火魔法創造

 冒険者ギルドで報告を済ませ、ラビット亭で夕食を済ませる。

ミティは宣言通りに肉料理を食べていた。

彼女は肉料理が好きだ。

肉食系女子だ。


 モニカの料理はおいしい。

が、今は新しいスキル取得が待ち遠しい。

ゆっくり味わっている余裕がない。

手早く夕食を済ませて、宿屋に戻る。

自室のイスに座る。

ミティは少し離れたところでくつろいでいてもらう。


 ステータスウィンドウを開く。

スキルポイントを30消費し、火魔法をレベル5に上げる。


 火魔法レベル5のイメージが頭に流れ込んでくる。

これは……。

今までとは雰囲気が異なる魔法だ。


 火魔法レベル5は火魔法創造。

自分で威力・範囲・形状・スピードなどを調整し、独自の火魔法を創ることができる。

もちろん、無条件に高威力・広範囲・高スピードの攻撃ができるようになるわけではない。


 威力・範囲・形状・スピードを優れたものにすればするほど、デメリットが増える。

具体的には、消費するMPが大きくなる。

魔法の発動に必要な詠唱が長くなる。

魔法のイメージをより明確にし、うまく制御しなければならない。

こういったデメリットが増える。


 また、使用状況や攻撃対象を限定したイメージを確立しておけば、その分威力等を強化したりできるようだ。

例えば、非生物に対してのみ火力が増す火魔法や、自身のHPが一定以下のときのみ火力や攻撃範囲が向上する、などといった感じである。


 火魔法創造は、扱いが難しそうな魔法だ。

しかし、便利そうでもある。


 どんな魔法に創造するべきだろうか。

今、火魔法で扱えるのは4種。


 ファイアーボールは、適正射程距離が10m以下と短めだが、それなりに高威力だ。

詠唱も短い。

剣士として戦いつつ、隙を見てぶちかますという戦法に使える魔法だ。


 ファイアーアローは、威力は控えめだが、射程距離が長い。

実際の狩りでも、それなりに使用している。

後衛として、便利な魔法だ。


 ファイアートルネードは、唯一の範囲攻撃だ。

魔物の群れ全体に大ダメージを与えることができる。


 範囲攻撃ではあるが、単体の魔物相手にも十分に使える。

攻撃範囲が広いため、避けられにくいという利点があるのだ。


 この魔法を使う場合、味方を巻き込まないように注意が必要だ。

魔物とまだ接近しきっていないときに先制攻撃として使うことが多い。


 ボルカニックフレイムは、高威力の単体攻撃だ。

3m×3mくらいの火炎を、20mほど先まで放出する。

4種の中で最も威力が高い。

また、射程距離と攻撃範囲もそこそこある。

バランスの良い魔法だ。

ただ、その分詠唱時間が長いので、実際の狩りではあまり使わない。



 新たに創り出す魔法は、この4種をベースに改良したものにするか、もしくはこの4種では対応できないような局面を想定したものが良いだろう。


 ファイアーボールの改良案は何か。

威力と射程距離をそのままに、連射性能を上げる感じだろうか。

連射性能を上げれば、例えばクレイジーラビットの猛攻に反撃する有効な手段になるだろう。

連射性能次第では、クレイジーラビットがこちらにたどり着く前に全滅させることも可能かもしれない。


 もしくは、連射ではなく多重発動もよさそうだ。

複数のファイアーボールを同時に展開し、敵にぶつける。

素早い魔物との戦いで役に立ちそうだ。


 連射にせよ多重発動にせよ、性能を上げすぎると消費MPや詠唱時間に悪影響が出てくる。

バランスの調整が重要だ。


 ファイアーアローの改良案は何か。

同じく、威力と射程距離をそのままに、連射性能や多重発動数を上げるのが良さそうだ。

鳥型の魔物が大量発生したときなどに役立つだろう。


 ファイアートルネードの改良案は何か。

これは難しい。

今のままでも十分に使い勝手が良いし、威力も高い。

このレベルの魔法の連射や多重発動は、現時点での俺の力量では厳しそうだ。


 強いて改良点を挙げるとすれば、範囲の調節ぐらいか。

しかし、現在の詠唱でも、イメージの仕方によって範囲の調節はできるしな。

特に改良の必要性はなさそうだ。


 ボルカニックフレイムの改良案は何か。

威力や範囲を多少落として、詠唱時間を短くする方向性。

もしくは、逆に威力や範囲を向上させ、強敵に遭遇したときの必殺の切り札にする方向性。

このどちらかだろう。



 基本となる火魔法4種にこれらの改良案候補を加え、それでも対応できなさそうな局面を想像してみる。


 まず思いつくのは、対人戦だ。

火魔法は基本的に威力が高い。

最も威力の低いファイアーアローでさえ、人に直撃すれば大ケガをさせてしまうだろう。

服に延焼すれば、最悪死ぬことさえ有りうる。


 もちろん、盗賊など悪人に襲われれば、相手の命を奪うことにためらいはない。

……つもりだ。

実際にその局面になったときに実行に移せるかは別問題として、少なくとも理屈では悪人の命を奪う覚悟はある。

躊躇すれば、俺だけでなくミティまでが危険にさらされる可能性があるからな。


 しかし今後、今の調子でレベルアップしパーティメンバーが増えていけば、そこらの盗賊に引けをとることはまずなくなるだろう。

戦闘能力でこちらが圧倒的に優位に立っている状態で、無慈悲に命を奪うことには疑問が残る。


 相手の命をおびやかさずに無力化する火魔法を創ることができれば、将来的に役立つこともありそうだ。

例えば、相手の装備だけを焼失させる魔法を創れないだろうか。

相手の肉体にはダメージなしでだ。


 普通に考えれば無理だ。

装備を燃やすならば、その熱が肉体にも伝わってしまう。


 しかし、火魔法レベル5を取得したときに流れ込んできたイメージでは、何とかなりそうな気もする。

非生物に対してのみ高威力を発揮する火魔法など、創れるかもしれない。

安全に注意して、試してみるか。

いつか魔法に詳しい人にもきいてみたい。



 他にはどんな局面があるだろうか。

火魔法は、防御には全く向いていない。

何とかして防御にも使えないだろうか。


 例えば、弓や砲弾がとんできたきたときに、それを火で迎撃し燃やし尽くす。

中途半端な火力だと、弓や砲弾が熱を持った状態でこちらまでとんでくることになる。

しっかりと燃やし尽くせるような、かなりの高火力が必要だ。



 こんなところか。

候補は、基本4種の内の3種の改良版と、対人用の武装無力化魔法と、飛び道具迎撃の防御魔法。


 とりあえず、明日、北の練習場でそれぞれを軽く試してみよう。

そして、様子を見て、使えそうなやつを1~2種ほど集中的に練習する。

いきなり全部を実戦レベルで使いこなすのは現実的ではないからな。


 さて、火魔法レベル5の考察は、こんなところでいいだろう

実際に試してみないと分からないことも多いからな。


 続いては、ミッション達成報酬だ。



レベル12、たかし

種族:ヒューマン

職業:剣士

ランク:D

HP:92(71+21)

MP:115(46+69)

腕力:44(34+10)

脚力:43(33+10)

体力:94(41+12+41)

器用:51(39+12)

魔力:84(42+42)


武器:ショートソード

防具:レザーアーマー、スモールシールド


残りスキルポイント0

スキル:

ステータス操作

スキルリセット

加護付与

異世界言語

剣術レベル3

回避術レベル1

気配察知レベル2

MP強化レベル3

体力強化レベル2

魔力強化レベル2

肉体強化レベル3

火魔法レベル5 「ファイアーボール、ファイアーアロー、ファイアートルネード、ボルカニックフレイム、火魔法創造」

水魔法レベル1 「ウォーターボール」

空間魔法レベル2 「アイテムボックス、アイテムルーム」

MP消費量減少レベル2

MP回復速度強化レベル1


称号:

犬狩り

ホワイトタイガー討伐者



未達成のミッション:


ミッション(期間限定)

ゾルフ砦の防衛に加勢しよう。

報酬:スキルポイント20


ミッション

竜種を1頭討伐しよう。

報酬:スキルポイント20


ミッション(報酬受け取り待ち)

どれか1つのスキルをレベル5にしよう。

報酬:中級者用の装備等一式、スキルポイント20

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