29話 ミティの育成方針と食事会の準備

 今日は夕食会の日だ。

朝から西の森で精力的に狩りをした。

今日の狩りは少し早めに切り上げた。

今は森を出てラーグの冒険者ギルドに向かっている。


 狩りの途中でミティのレベルが7から8に上がった。

俺はレベル11から変わらない。

ミティのレベルが俺のレベルに追いついてきた。

ファイアートルネードの先制攻撃の分、俺のほうがたくさん討伐していると思うのだが。

レベルが上がれば上がるほど、次のレベルに上げるのは大変なようだ。


 ミティのスキルポイント10をどうするか。

彼女が既に持っているスキルは、「槌術レベル3」「投擲術レベル1」「腕力強化レベル3」

「MP回復速度強化レベル1」の4つだ。


 今回は温存しておいて、次回15ポイントを消費して槌術や腕力強化をレベル4にするのもありか?

いや、それはあまり良い選択肢とはいえないな。

自分が火魔法レベル4を取得して分かった。

スキルレベル4は、かなりの上級者スキルだ。


 1つのスキルの鍛錬のみに注力したとして、レベル4まで少なくとも数年はかかるだろう。

他のスキルも同時に鍛錬したり、日々の生活に追われて鍛錬がおろそかになったりすれば、10年20年かかってもおかしくはない。


 スキルレベル4を取ると否応なしに目立つことになるだろう。

俺自身が目立つことには大きな問題はない。

しかしミティが過度に目立つのは避けたい。

なぜならば、そこらの一般冒険者に俺の加護付与スキルがばれたら、「俺にも加護を付けてくれ!」という奴らが殺到しそうだからだ。


 投擲術はどうか?

これはなかなか良い選択肢だろう。


 MP回復速度強化はどうか?

これは後回しだ。

魔法を覚えていないのにスキルレベルを上げても仕方がない。


 新しく取るとすれば、「風魔法」「鍛冶」「器用強化」あたりだろう。


 風魔法は、ミティがもともと持っていた「MP回復速度強化」を活かす方向性だ。

俺は火魔法と水魔法を使える。

ミティが風魔法を使えるようになれば、戦闘の柔軟性が高まるだろう。


 それに、風魔法は彼女の投擲術と相性が良さそうだ。

投げた石を風魔法で後押しすれば、より遠くまで届くだろう。

砦での戦いで役立つかもしれない。


 鍛冶スキルも魅力的だ。

今俺やミティが装備している武具は、安めの初心者向けのものだ。

安めとはいっても金貨数枚はする。

そして中級者向けの武具になると、金貨数十枚するものも多い。

彼女が鍛冶をできるようになれば、金貨を節約できる。


 それに、彼女はおそらく鍛冶にコンプレックスを持っている。

鍛冶をできるようにして、彼女のコンプレックスを取り除いてあげたい。


 しかし鍛冶スキルの取得には問題点が2点ある。


 1つ目は、彼女の器用のステータスがまだまだ低い点だ。

レベルが上がっても1ずつしか上がらない。

現在の彼女の器用のステータスは補正込みで10。

俺がレベル1だったときの器用の値と同じだ。

さすがにハンマーで自分の手を叩くようなことはもうないだろうが、まだまだ心もとない。


 2つ目は、鍛冶スキルを取っても鍛冶をする場所がないという点だ。

この世界の鍛冶スキルは、「材料さえ揃えば意識するだけで武具が生産できる」というような便利なものではない。

実際に鍛冶をする必要がある。


 今回は器用強化を取得するのがいいかもしれない。

戦闘面では、投石やハンマーの精度が上がる。

戦闘面以外でも、鍛冶スキル取得に向けた下準備になる。


 よし、器用強化を取得することにしよう。

ミティのステータス管理画面で器用強化を選択し実行する。

これでミティの弱点は大きく補われたことになる。

今後の戦いの安定感が増すだろう。


 しばらく歩き、冒険者ギルドに到着した。

今日はここでみんなと合流する予定になっている。

先に討伐報告を済ませ、素材の買い取りを頼んでおく。


 少し早く来すぎたか。

まだみんなが揃うまで時間がありそうだ。

念のためラビット亭の様子を見てこよう。



 ラビット亭に到着した。

店の外にもいいにおいが漂っている。

中に入る。

モニカは奥の厨房にいるようだ。

厨房に顔を出す。


「モニカさん。準備のほうはどうでしょう?」


「問題ないよ。全て順調さ」


 うむ。

問題なしで良かった。


 見てみると、以前食べた料理がメインのようだ。

クレイジーラビット、ゴブリン、スピーディバッファローなどを使った肉料理。

それらの最後の下準備をしている。


 煮込み料理もある。

ふたのついた鍋のようなものがいくつかコトコトと音を立てている。

においの発生源はこれらの鍋のようだ。

いいにおいが漂ってくる。


 しかしよく見ると、鍋の1つは火から少し離れたところに置かれており、ガッチリとふたがされている。

なんだろう?

思わずふたを取ってみようとすると、モニカに止められた。


「ふたを取っちゃダメ!」


 俺は手を引っ込める。


「すいません。この料理は何なのでしょうか? 少し気になりまして」


「それはスメリーモンキーの料理さ。においを閉じ込めてじんわりと加熱することで、面白い味になるんだ」


 においを閉じ込めてじんわりと加熱?

なるほど、そういう調理方法があるのか。

俺が感心していると、続けてモニカはこう言った。


「そのふたを取るときには注意しないとダメだ。凝縮されたとんでもなく強烈なにおいが襲ってくる。外でふたを取って素早く避難するのが一番いい方法だよ。少しすればにおいも散らばって問題がなくなるから」


 なるほどねー。

しかし強烈なにおいか。

俺って今結構危なかったかもしれんな。


 さて、これ以上ここに居ても調理の邪魔にしかならないだろう。

冒険者ギルドに戻ることにする。



 戻る途中で、例のリンゴ売りの少女に出会った。

リンゴをあるだけ全部買い、少し多めに代金を渡しておいた。

このリンゴでモニカにアップルパイをつくってもらおう。


 冒険者ギルドに戻ると、既に旋風の4人が待っていた。

さらにしばらく待つ。

次に帰ってきたのは赤き大牙の3人。

続いて、蒼穹の5人、爪の4人、兄貴達2人もやって来た。


 冒険者ギルドから出てラビット亭へと向かう。

それぞれ好きなように雑談しながら歩いている。

やはり冒険者同士ということで、お互いにある程度は知った仲のようだ。

みんなで大通りを進んでいく。



レベル11、たかし

種族:ヒューマン

職業:剣士

ランク:D

HP:86(66+20)

MP:108(43+65)

腕力:40(31+9)

脚力:39(30+9)

体力:87(38+11+38)

器用:46(35+11)

魔力:78(39+39)


武器:ショートソード

防具:レザーアーマー、スモールシールド


残りスキルポイント10

スキル:

ステータス操作

スキルリセット

加護付与

異世界言語

剣術レベル3

回避術レベル1

気配察知レベル2

MP強化レベル3

体力強化レベル2

魔力強化レベル2

肉体強化レベル3

火魔法レベル4 「ファイアーボール、ファイアーアロー、ファイアートルネード、ボルカニックフレイム」

水魔法レベル1 「ウォーターボール」

空間魔法レベル2 「アイテムボックス、アイテムルーム」

MP消費量減少レベル2

MP回復速度強化レベル1



レベル8、ミティ

種族:ドワーフ

職業:槌士

ランク:E

HP:65(50+15)

MP:36(28+8)

腕力:127(45+14+68)

脚力:29(22+7)

体力:43(33+10)

器用:14(8+2+4)

魔力:34(26+8)


武器:ストーンハンマー

防具:レザーアーマー


残りスキルポイント0

スキル:

槌術レベル3

投擲術レベル1

腕力強化レベル3

器用強化レベル1

MP回復速度強化レベル1


称号:

タカシの加護を受けし者

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