10話 パーティへの勧誘:赤き大牙

話しかけてきたのは、比較的若い3人組だ。


1人目は、気が強そうな細身の女。

年齢は10代後半くらいか。

赤髪ロングのストレート。

弓を使っているようだ。


2人目は、マッスルなおっさんだ。

背が高く、腕が太い。

ギリギリ20代に見えなくもない。

大きな剣を背負っている。


3人目は、前髪で顔を隠した男だ。

年齢はよく分からないな。

おそらく20歳くらいだろう。

全身をがっしりと金属鎧で覆っている。

剣と盾を使うようだ。


それにしても“犬狩りのタカシ”?

いったいいつの間にそんな通り名が広まったんだ?


俺がどう答えたものか思案していると、受付嬢がこう言った。


「ああ、タカシさん。こちらの方々はDランクパーティの“赤き大牙”です。タカシさんのご活躍ぶりをお話ししたところ、ぜひパーティを組みたいと」


大牙はあの大きな剣のことかな。

別に赤くはないが。


何にせよパーティ勧誘は渡りに船だ。


「ああ、そうでしたか。こんにちは、赤き大牙の皆さん。Eランク冒険者のタカシといいます」


俺がそう挨拶すると、マッスルなおっさんが答えた。


「おう。俺はリーダーを張ってるDランクのドレッドってもんだ。こいつらはパーティメンバーのユナとジーク」


「私がユナよ。あなた、いい腕をしてるそうじゃない。それにアイテムルームも使えるとか」


「そこでだ。俺らと臨時パーティを組まねェか? 明日から、3パーティ合同の中規模遠征があるんだ。西の森で5日間、主な標的はゴブリンとクレイジーラビットだ」


ふむ。

なかなか興味深い誘いだ。


とりあえず詳しい話を聞くために、近くのテーブル席に4人で腰かける。


「お恥ずかしながら、私はファイティングドッグとしか戦ったことがありません。当然、ゴブリンとクレイジーラビットについては何も知りません。戦う上での注意点等をお聞かせ願えませんか?」


「そうね。まずゴブリンもクレイジーラビットも群れで行動するわ。1人で戦っていたらすぐに囲まれて終わりね。だからパーティを組むの」


「ゴブリンはファイティングドッグと違って多少の知能はある。一直線に突っ込んでくるだけが能じゃねェ。武器も使ってくる。基本的には木で作った棍棒程度だが、人から奪った剣や弓を使う奴らもいる」


「あとは、ゴブリンは火に弱いわね。火魔法の初級でも使えれば十分有効よ」


「クレイジーラビットは戦闘能力が低いし、基本的に温厚だ。ただ、唯一にして最大の注意点がある。最初に群れに攻撃した奴を狂ったように一斉攻撃してくる点だ。この時の攻撃力だけは半端じゃねェ」


「逆に言えば、それ以外に注意すべき点はないわ。ジークが攻撃を耐えている間に、私達で確実に殲滅していくだけ。タカシは絶対に最初に攻撃してはダメよ?」


「…………防御は我に任せよ」


なるほどね。

この全身鎧の人が攻撃を引き付ける役割か。


「標的のゴブリンとクレイジーラビット以外の魔物が出たらどうするんでしょう?」


「他の魔物っていうと……、リトルベア・ハウンドウルフ・ポイズンコブラあたりね」


「リトルベアは戦闘能力が高い。できるだけやり過ごすのが得策だが、遭遇しちまったら戦うしかねェ」


「ハウンドウルフは格下しか襲わないわ。大人数でいればまず大丈夫。ポイズンコブラは毒が厄介ね。一応毒消しは用意してあるけど、戦わないほうが無難よ」


「ま、犬どもを簡単に倒せるレベルなら、そんなに心配する必要はねェ」


よく分かった。

戦闘については問題なさそうだな。

あとでゴブリン対策に火魔法を取っておこう


「詳しい説明ありがとうございます。報酬はどうなるんでしょうか?」


「報酬は4等分だ。具体的な報酬はその時々によるから確かなことは言えねェ。ただ、ソロでファイティングドッグを狩っているよりは高くなるだろう。期待していいぞ。加えて、アイテムルームの分は別枠で金貨5枚出そう。それでどうだ?」


なかなか良い条件だ。

アイテムルーム分だけでも1日当たり金貨1枚。

これにゴブリンとクレイジーラビットの討伐報酬と買い取り報酬が加わる。


「はい。報酬はそれで構いません。ぜひパーティに参加させて頂きたいと思います。それで、今後の予定はどうなっていますか?」


「おお、参加してくれるか! 歓迎するぞ。遠征の出発予定は明朝だ。西門で待っていてくれ。遅れんじゃねェぞ?」


「ふふん。ま、私たちがついているんだから、危険はないわ。安心なさい」


「…………左様」


「分かりました。では明日はよろしくお願いします」


3人と握手してから、彼らと別れる。



宿へ帰ってきた。

ベッドに寝そべる。


火魔法を取っておこう。

今のスキルポイントは25。

火魔法を取得し、レベル2まで上げる。

レベル3はまだ早計だろう。

頭の中に、火魔法のイメージが流れ込んでくる。


火魔法レベル1は、「ファイアーボール」だ。

至近距離で使うと高威力が期待できる。

しかし、10m以上離れると威力がどんどん下がってしまう。

魔法使いが使うよりは、剣士などの近接職の人がサブで使うのに向いていそうだ。


火魔法レベル2は、「ファイアーアロー」。

こちらは射程距離が長いが、威力が低い。

前衛に守ってもらいながらチクチク攻撃できるな。

他にも、魔物の巣への放火にも使えるかもしれん。


戦争での火攻めにも使えそうだ。

こっちの世界は戦争とかあるのかな?

この街から出たことないから分からん。


火魔法は森で使うとなれば森林火災が心配だ。

念のため水魔法も取得しておく。

これでスキルポイントは0になった。


水魔法レベル1は「ウォーターボール」。

野球ボールぐらいの大きさだ。

連続で発動させれば多少の消火活動には使えそう。

速度はあまり出ないので、威力には期待できない。

飲み水を生成できると考えればまあまあか?


先日MP強化をレベル2にした分、MPに余裕がある。

ただ、明日からは4人分の獲物をアイテムボックスに収容する。

どのくらいMPを消費するか分からない。


基本的には剣で攻撃し、MPに余裕がありそうなら火魔法を使っていく感じでいいだろう。

火魔法の使い勝手次第では、MP関連のスキルを今後取っていくのもありだな。


明日からの遠征を楽しみにしつつ、眠りにつく。



レベル6、たかし

種族:ヒューマン

職業:剣士

ランク:E

HP:52(40+12)

MP:52(26+26)

腕力:23(18+5)

脚力:22(17+5)

体力:55(24+7+24)

器用:27(21+6)

魔力:23


武器:ショートソード

防具:レザーアーマー、スモールシールド


残りスキルポイント0

スキル:

ステータス操作

スキルリセット

加護付与

異世界言語

剣術レベル3

回避術レベル1

MP強化レベル2

体力強化レベル2

肉体強化レベル3

火魔法レベル2 「ファイアーボール、ファイアーアロー」

水魔法レベル1 「ウォーターボール」

空間魔法レベル2 「アイテムボックス、アイテムルーム」


称号:犬狩り

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