宝箱を開けただけなのに、うさぎの仲間が増えました 3

 その、生物?は、かなり心が傷つきやすいらしい。


「えっと、なんなの? 協力者ってどういうこと?」


「ぐすっ、ぐすっ、うん……? ああ、私のこと?」


 繊細だとか、傷つきやすいとか、そういうのじゃない。

 壊れやすい感じのやつだ。なんか、もうすでにキャラ崩壊してる。

 そんな、シクシク泣いている、そのウサギみたいな、白いモフモフしたなにかは、みるみると笑顔になっていく。

 そして、次の瞬間には、


「……そうだよね。急に飛び出してきたら、驚くよね。驚きのあまり、声を失ったりしたりするよね。私が無視されたわけじゃないよね。うん、うん。……はわっ! 私のことだったよね。 私は、えっと、えっと──……」


 なんかブツブツと言いながらも、元気になっていた。

 情緒不安定過ぎる。大丈夫かな。

 しかも、自分がなにものなのかということすらも忘れてる。

 まだ、「えっと、えっと──……」と呟いている。

 このままじゃ、埒が明かない気がするから、質問を変えることにする。


「それじゃ、その、自己紹介してくれる?」


「自己紹介? わかった。えっと、ふわふわわた菓子、あま~い時間をお届け! 白兎しろうさぎ宇佐美うさみこと、うさちゃんですっ!」


 なんか、ものすごくかわいらしい自己紹介をしてくれた。

 というか、ほとんどアイドルじゃん!

 そして、私の予想はあたっていた。

 全くもって兎には見えないけど、兎ということらしい。

 本人が、白兎と自分で言ってたからそうなのだろう。

 異世界にいる兎なわけだし、私が見たことない兎がいてもおかしくはない、か……。

 それにしても、この子はどういう存在なんだろう。

 まあ、兎だってことならわかるけど、それ以外の情報がなさすぎる。

 あと、宇佐美うさみという名前か。

 とにかく、謎のが多い。それも、解決しそうにない系の。

 それに、勝手に召喚? されてるわけだから、かなり自由な気がする。

 そもそも、召喚可能ということは、召喚不可能があるということなんだと思う。

 そんな疑問を抱きながら、私は思考を巡らせる。

 そこで、私は気づく。

 なんか、うさちゃんの顔がちょっとずつ引きつっていってる、気がする。なんとなく。知らんけど。

 とりあえず、可哀想なので、


「その、うさちゃんはどいう存在なの?」


 話しかけると、顔をパァーッと輝かせた。

 なんとも、わかりやすい喜び方だとは思ったけど、まあ兎だし。


「そうだよね。得体のしれない生物は怖いもんね。……えっと、私のことは、前のご主人様が作ってくれたの。たぶん、死んじゃったんだと思う。そのせいで、ここで、ずーっと退屈してたんだよ~」


 前のご主人様が作ったらしい。

 前のご主人様、凄すぎじゃない?

 それと、マギアとハンディーも話しかけてあげてよ!

 なんてことを思いながら、白兎に癒やされていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る