森を歩いていたはずなのに、屋敷につきました 5

「なあ、この屋敷なら──」


 余計なことを言おうとしてる(たぶん)スライムのハンディーに、とりあえず私は手をじゃんけんをするときのグーの形にして殴ってとめる。


「なんでだよ……! なんで殴ってくるんだよ!」


「余計なことを言おうとしてるからに決まってるでしょ!」


「……はっ? いや、この屋敷のことについて話そうと思っただけなんだが?」


 それのなにが悪いんだ? という感じでそう言わても……。

 それが悪いんだよ! それがよくないから殴られてるんだよ! それぐらいわかってよ!

 つまり、その話が聞きたくないんだよ!

 いや、幽霊がいないってことなら別にいいんだよ?

 でも……もし、もし幽霊がいるってそんなことを言われたら、私は正気でいられなくなる自信がある。


「ハンディーこそなに言ってるの? シズが殴ってくれたのよ? シズが、自分の手を痛めてまで殴ってくれたのよ? そんなの、って言うのが普通でしょ! ほら、『ありがとうございます』っていいなさい!」


 マギアが変な方向にいってしまった。

 私はどこで選択を間違えたんだろう。


「えっ……? ま、マジで言わなきゃだめなのか?」


「当たり前てしょ……! 言わなかったら、殺すわよ?」


 いやいやいや、普通の人とかは言わないから。

 ただ、そのマギアの圧に破れたハンディーは、


「あ、ありがとうございます!」


 そう言ってしまっていた。

 そのあと、とりあえず屋敷の中の探索をすることにした。

 扉が一つある度に騒いでいるわけだから、もし持ち主が今いるなら、『うるさい!』と文句を言ってくることだろう。

 つまり、この屋敷には今、私たち以外の誰もいないということ。


「なあ、いい加減言ってもいいか?」


「……だめ」


 幽霊屋敷、てわけじゃないと思うんだけど、もしも、もしものことがあったら嫌だから言わないでほしい。


「それにしても、この屋敷、本当になにもないわね」


 マギアが言っているのは、金目のものの話。

 家具とか、そういった生活していくうえで必要なものはある。

 ただ、長年使われてない感じなのだ。埃を被ってるし。

 と、また一つの扉を見つける。てか、この屋敷本当にでかいな。

 豪邸とか、そういった方がいいレベルな気がする。


「それじゃ、開けるぞ?」


「ちょっと待って!」


 ハンディーが扉を開けようとするので、一度それをやめさせる。

 そして、私とマギアがある程度ハンディーから離れてから、


「……うん、それじゃいいよ!」


 叫ぶように開けていいことを伝える。


「なにもよくねぇーよ! なんでそんなに離れてるんだよ!」


「怖いから。なにが出てくるかわからないんだから、避難しておくのは当然のことでしょ」


「そうよ、シズの役に立てるんだから、喜んでやりなさい」


 マギアが何言ってるのかよくわからないけど、そういうことだよ。

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