森を歩いていたはずなのに、屋敷につきました 4

「はぁ、はぁ、本当に、置いていく、とか、おかしい、だろ! 置いて、くなよ! 死んじゃうかもしれないだろ!」


 そこには、息を切らした人間……姿のハンディーがいた。

 というか、ハンディーはもうスライムの姿にならない方がいいと思う。


「て、なんだハンディーか」


「なんだって、なんだよ! お前らが置いていったんだろ!」


「いや、ハンディーのせいでミリアちゃんが気絶したんだけど? ハンディーのせいで!」


「えっ……? それは、ごめん…………てっ! それ本当に俺のせいなのか? いや、おかしくないか? 俺、悪くないだろ!」


 ハンディーが心からの叫びのように言うので、仕方なく検討してみる。

 ミリアはまだ小さいし、この世界での歴は圧倒的にハンディーの方が上。

 それに、300年も生きている魔物なわけだし、そういった配慮とかもできないと困る。

 今回だって、一声かけてから入って来てくれさえすれば、ミリアも気絶することはなかったと思う。

 それに、ハンディーがミリアを気絶させるのは二回目なわけだし、少しぐらいわかっていてもらわないと困る。

 ということで、ミリア0、ハンディー10で、ハンディーのが圧倒的に悪い。

 検討してみたけど、やっぱりハンディーのが悪いということがわかった。


「ハンディーが悪い」


「なんでだよー!」


 ───────────────────


「で、なんで俺が先頭を行かなきゃならないんだよ! 俺、あくまでスライムなんだぞ!」


「知ってる。でも、たかがスライムだからね。ハンディー、君の代わりはいくらでもいるんだよ」


「いねーよ! 300年も生きてるスライムなんて、滅多にいねーよ!」


 なんかハンディーが言っているが、そもそもミリアを気絶させたわけなんだから、その罰だと思って甘んじて受けてもらうしかない。

 ちなみに、ミリアは気絶してしまったので、マリアがミリアをみてくれている。

 つまり、ここには私とハンディーとマギアしかいない。

 順番は、ハンディー先頭、私が真ん中、マギアが後ろとなった。

 それにしてもこの屋敷、特に壊れてるところとか、ボロボロになってるところだとかがない。

 けど、生活感みたいなものもないんだよな……。


「ねえ、シズ。妙にこの屋敷綺麗だけど、幽霊屋敷ってことはないわよね?」


 私も思ったよ? 思ったけど怖いから言ってなかったのに、なんで言っちゃうのー!

 まあ、今さらそんなことを思っても仕方ないんだけども。マギアが言っちゃったから。


「う~ん……。ダンジョン、っていう可能性もあると思うんだけど……。それに、幽霊屋敷なんだったら、もっとボロくて壊れてると思うんだよね。こんなに綺麗だとは思えない」


 そう……! だから、ここは幽霊屋敷じゃないんだよ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る