森を歩いていたはずなのに、屋敷につきました 3

「そうだ! 私、目がいいんだった! 忘れてた……」


 自分のことなのに忘れてたのか。

 でも、そういうものなのかな? 私だって、通常の状態で目がよければ、それが普通なんだと勘違いしちゃいそうだし。

 それに、まだ小さいから。仕方ない。

 忘れてたとしても、仕方ない。


「それはすごいわね! どんなのが見えてるの?」


「えっとね、屋敷! 大きな屋敷が見えるよ」


「なんだ、それの話をしてたのか。てっきり、ここら辺でフヨフヨしてるの話かと思ってた」


「…………えっ?」


 ちょっと、待って。

 今、ハンディーは幽霊って言ったよね?

 紛れもなく、幽霊って言ったよね!?

 しかも、この辺でフヨフヨしてるって!


「ハンディー、それって本当? 嘘とか、冗談だとか、そういうのは許されなからね?」


「そんなじゃねえよ! さっきからフヨフヨしてるもんはフヨフヨしてるんだよ! てか、さっきからような顔してるだろ!」


 た、確かに!

 さっきから、みんな、なんかような顔をしている。これが幽霊の仕業だったのか。

 よし、それじゃ急いで屋敷に行こう!

 とりあえず、今は屋敷に全速前進だー!


「それじゃ、屋敷に行こう!」


「「はい!」」


 ここだけは、ハンディー以外のみんなの意見が一致した。

 そして、屋敷まで全速前進することに決まった。


「おい! ちょっと待ってくれよ! おいてかないでくれ」


「無理っ……! 絶対無理! 先に屋敷にいるから!」


 ハンディーの心からの叫びを無視する。

 だって仕方ないよね。幽霊が居るみたいだから。

 私には見えないけど、なんか寒けだけはするし。なんか居るよ、たぶん。


「とにかく、そういうことだから後から追ってきてね」


「おい! そんな冗談はやめろー!」


 とりあえず、ハンディーはおいていこう。

 そして、後から追ってきてもらおう。

 ちなみに、ハンディーは走れない。人間の体に慣れていないのが原因だと言っていた。

 まあ、変身する機会があまりなかったんだと思う。

 いや、そもそもその必要性もなかったのかな。



「ハァハァ、みんないるよね?」


「はい、いますよ」


 まあ、ハンディーはいないんだけど、仕方ない。走れないのだから、到着するまでもうしばらくかかると思う。


「でもまさか、幽霊がいるとは思わなかったわ」


「本当だよ! まさか、この屋敷を見てたのに、ハンディーさんは他のものを見てたなんてびっくりだよ!」


 そんなとき、急に閉めてあったドアを叩く音が聞こえてくる。


「…………」


 と、その音があまりのショックだったのか、ミリアは気絶してしまった。

 ちなみに、マリアが倒れる前にミリアを支えたことで、なんとか頭を強打することはなかった。よかった。

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