森を歩いていたはずなのに、屋敷につきました 2

「ねえ、ハンディー。自分で歩けないの?」


「うん? 歩けるが?」


 今は、中央都市に向かって、歩いていた。

 森の中のせいで、昼間なのに夜のように暗い。


「ふん、ふ~ん、ふふん、ふんふん、ふ~~ん、ふんふん…………」


 けど、マギアはなんか元気だった。鼻歌を歌ってる。

 まあ、なんの曲なのか全然わからないけど……。


「じゃあ、なんで自分で歩かないの?」


 で、スライムのハンディーは、交代で運ぶことになった。本人がそうしてほしいって言ったからね。


「単に疲れるから」


 私はその答えに、わざとハンディーを持ってる手をはなす。

 そして、私はとってもニコニコしながら、こう言った。


「そっか。じゃあ、人間に変身して自分で歩いたら?」


 いや、それが普通でしょ。

 私のその様子を、マリアは楽しそうに見てる。

 てか、ミリアはマギアと楽しそうに会話をしなが先を歩いてる。

 全然私たちの方を気にしない様子からして、私とハンディーのことなんて気にも留めてないのだろう。

 と、しばらくしてから変身したハンディーは、声を震わせながら、


「わ、わかった。てか、笑顔が怖すぎるろ……」


 そんなことを言っていた。

 そんな怖いかなと、思いながらも、変身して歩き出したのを確認してから、私も歩き出した。



「あそこに何か見えるよ!」


 そう言ったのは、ミリアだった。

 て、どこだろう。全然わからないんだけど。


「えっと、どこ?」


「あそこです! あそこの奥です!」


 あそこだと指で指しながら、どこなのか教えてくれてるんだろうけど、全然わからない。なんのことなんだろう。

 子供だから、見えない何かでも見えてるのかな。

 マリアがニコニコしながら話を聞いてるだけなのが気になるには気になるけど……。


「どこよ。私にはなにも見えないわよ?」


 私もマギアと同意見ではあるんだけど、なんだか可愛そうだから言わないことにする。

 てか、それで見えない何かだったらめっちゃ怖い。


「あそこだよ! ここを真っ直ぐ行った先に何かある! 建物みたいのが見えるもん!」


 そうは言うけど、私にはなにも見えない。

 ハンディーはさっきから黙ってるけど、何かわかってるのかな。


「ハンディー、何か見える?」


「うん? ああ、見えることには見えるが?」


 魔物だから、ゆうれ……見えない何かが見えてもおかしくないしな。

 それと、ハンディーが気持ち疲れてるように見えるんだけど、たぶん気のせいだよね?


「あっ、いい忘れてましたが、ミリアはとても目がいいんですよ。だから、かなり遠くのものでもハッキリ見ることができるんです」


 と、急にそんなことを言いだすマリア。

 て、あなた、楽しんでたでしょ! 私たちの反応を見て絶対楽しんでたでしょ!

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