みんなで冒険に行きませんか? 7

 なるほど、そういうことか。

 つまり、クズということだ。

 このスライムは、誰でもいいから居候させてほしいというわけか。

 殺してもいいよね? こんなやつ、殺してもバチなんて、あたりもしないよね。

 てか、こんなやつ生きてる価値とかないでしょ。

 私のクラスメイトにいた、「俺、将来の夢は自宅警備員なんだ」という、『オタクズ(オタクとクズが合わさったもの)』と全く同じ気配がする。


「なあ、連れてってくれないか?」


「どうするのよ、シズ」


 いや、待てよ。

 役に立つことは、役に立つわけだし、雑用係にすればいいんじゃない?

 そもそも、ペットという名の居候の言うことなんて、聞かなくていいし。


「わかった。連れてってあげるよ」


「えっ、シズ……? 本当にスライムを連れて行くの? いや、シズがそういうなら、それでいいけど……」


「よっしゃ!」


 スライムは大喜びしていた。まるでガッツポーズをするかのように。

 ふっふっふ、いつまでそう喜んでいられるかな。


「マオちゃん、そういうことなんですね?」


 マギアと違って、マリアはなにかに気づいた様子だった。

 なんの理由もなしに、スライムを連れて行こうなんて、普通の人は思わないしね。


「それでは、今日はもう日が暮れそうなので、ここらで野宿といきましょう」


「ところで、シズ。このスライムは、なんて呼ぶの?」


「う〜ん、スライム?」


「こら! それは、種族名だ! ちゃんと、他に名前をつけろ!」


 名前はないらしい。

 それなら、私がこのスライム(ニート)にピッタリな名前を考えて、付けてあげようじゃないか。


「それじゃ、ハンディーとかどう?」


「ハンディ? よくわからないけど、なんかしっくりくるな……。よし、気に入った! それじゃ、今日から俺の名前はハンディーだ」


 それはよかった。

 私もピッタリな名前だと思うよ。


「ハンディー、ですか。魔物なんかにはもったいない気がしますが……」


「私としては、なんでもいいわよ? それに、シズが決めたことなわけだし」


「あのあの、私はとってもいいと思います」


 なんでその名前になったのかということに、今度は気づいた人はいなかった。

 まあ、この世界の言葉じゃないだろうしね。


「それじゃ、ハンディー。テントを立ててもらえる?」


「はっ? テント? 俺はスライムだぞ? ただのスライムだぞ?」


「ただのではないでしょ?」


「確かに、名前あるしな。じゃ、名前のあるスライムだぞ? できると思ってるのか?」


「変身、できるんでしょ?」


 私は覚えてるよ、あのとき言った言葉。

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