みんなで冒険に行きませんか? 3

「もう話はいいから、そろそろ行きましょう!」


「それはいいですけど、ここからじゃ結構距離ありますね……」


 げっ! 結構距離あるのかー。

 元陰キャオタク女子高生JKに、体力なんてものが、あるわけがない。

 何が言いたいのか、私の同士諸君オタク共ならわかってると思うけど、そう、動きたくない!

 そして、体力を使うことがしたくない!


「別にいいじゃない! これからの人生で歩く距離の何万分の一なわけだし。ちょうどいい運動になるわ」


 なるほど、この中だったら唯一の仲間だと思ってたマギアに、一番に裏切られた!

 うそでしょ! 私と同じ匂いがしてたのに! ぐっ! 私たちの友情はそんなものだったのか……!


「それもそうですね。それに、そういうのも冒険の醍醐味ですしね」


「楽しそうだし、私はいいよ!」


「それじゃ、行きましょう!」


 あー! なんか、この流れで、私だけ嫌なんていえるわけないじゃん……。

 だって、私、陰キャなんだよ?

 陰キャのみんな《私の仲間》ならわかると思うけど、そんなこと言える陰キャなんているわけないんだよ!

 つまり、その流れにのるしかないわけです、はい……。

 こうして、この瞬間、長距離を歩く《オタク潰し》が決まったのだった。



「はあ~、ほんとに暇ね」


「そうですね。モンスターの一匹出てきませんからね~」


「わ、私としては、戦えないから、モンスターが出てこなければ、それでいいよ」


 あれから歩くこと数分、村を出る前までのやる気はどこへやらという感じで、なぜか暇を持て余していた。

 いや、ただ歩いてるだけで、やること一つないから仕方ないけど。景色も変わらないし。


「そもそも、モンスターがそこら辺に、わんさか居たら居たで、普通にやばいでしょ」


「それもそうね」


「前のパーティーの皆さんと一緒に、クエストでここまで来たときは、もう少しモンスターがいたと思うんですけどね」


「そうなの?」


「はい。私は後衛職なので、あまりちゃんと戦ってませんでしたが、私の記憶としては、このあたりだと昆虫型モンスターが多く出ましたよ」


「お、お姉ちゃん! 私のトラウマだから!」


 えっと、今、昆虫って言った? 昆虫型モンスターって言った? いや、マリアは今、絶対にそう言った。

 ただ、もしかしたら聞き間違いかもしれない。


「ちょ、ちょっと待って! ま、マリア、もう一度言ってくれる?」


「えっと、このあたりだと、モンスターが多く出ました」


「それ、本当?」


 聞き間違えだと信じたかったけど、全然聞き間違えじゃなかった。

 昆虫って、虫ってことだよね? そうだよね!


「へぇ、昆虫型モンスターが出るのね。ちょっとワクワクしてきたわ」


 いや、出発前も思ったけど、なんでそうも私を裏切るの!

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