あなたも、私の仲間《パーティー》になりませんか……? 5

「マギアっ……! よかった~、ここにいたんだね」


 私はマギアと会えたことに安堵しながら、マギアのもとに近づいていく。

 けど、マギアは、


「来ないでっ……! あなたも、どうせ他の人と同じ。だから、私に近づかないで!」


 私のことを拒んだ。

 けど、そう言う彼女の目には、雨のせいとは思えない、そんな光るものが目からこぼれ落ちていた。

 きっと、心の中では嫌がっていない。

 彼女の本心は、私のことを求めている。

 でも、誰かによって何度も傷つけられたマギアの心は、簡単には人のことを信じることなんてできなくなってるんだと思う。

 でも、本当の意味で嫌がってないなら、私はマギアと仲良くなりたい。

 いや、私はマギアと仲間パーティーになりたい!

 それなら、私のすることはもう決まってる。


「マギア。私は、あなたと仲良くなりたいっ……! あなたと仲間パーティーになりたいっ!」


「うそっ! そんなわけないわ……! 私のことを知って、本当の意味で仲良くなりたいなんて、思うわけがない! もう私は、傷つきたくないの! だから、もう、私のことは、ほっといてよ……!」


 けど、やっぱり一筋縄ではいかない、か。

 でも、私は諦めない!


「私のことを信じて! 私は、本当にマギアと仲良くなりたい……! だって、ここに来て、初めてできた友達だから!」


「うそっ……! そんなわけないわ!」


「私のことを、信じて! お願い!」


「それじゃ、それじゃ、なんで、私に異名があることがわかったの……! それに、避けられてるってことも!」


 いや、避けられてるってのは、普通にいたらわかることでしょ……。

 でも、異名か。

 ただ、なんとなくって、だけだからな。

 もちろん、それを正直に伝えたら、うそだって言われて終わるだろうし……。

 そうだ……!


「だって、マギアは、特別魔法オリジナルが使える、凄い魔法使いだと思ったから……! そんな、凄い魔法使いだったら、異名の一つや二つ、持っててもおかしくないと思って、ね」


「シズっ……!」


 伝わった……?


「もしかして、特殊魔法オリジナルが何か、本当に知らないの……? それとも、知ってて知らないふりをしてるの?」


 さっきまでの、マギアの印象とかわって、今のマギアは、なんだか冷静さを取り戻していた。

 感情をちゃんと、抑え込んで、話をちゃんとしようという意思が、私にも伝わってくる。

 そして、しばらくの間、雨の音だけが、辺りにひびいているなか、私は一つ、嘘をついた。


「私、まだ何も知らないの。あなたとあったとき、私は名前以外の他の記憶を失ってたから。記憶喪失、だったから」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る