あなたも、勇者になりませんか? 4

冷炎コールドフレアっ……!」


 彼女がそう言うと、青い炎が大スライムというモンスターを包む。

 その瞬間、大スライムは凍りついた。

 私は、目の前の現象に目を丸くする。

 見た感じは完全に炎だった。

 けど、大スライムというモンスターは凍りついた。

 目で見て起きると思っていたことと、実際に起きた現象のあまりのギャップに驚きを隠せない。


「あんた、まだこんなところにいたの? 早く逃げるわよ……!」


 彼女はそう言うと、私の腕を掴んで、走って行こうとする。

 そんなとき、私はあるものを落とした。

 それは、一枚のICチップようなものだった。

 私は、こんなの持ってたかな? と思いながらも拾うと、


「とにかく、逃げるわよ!」


 彼女にそう言われて、逃げることにした。



「ここまでくれば大丈夫かしら」


 そう呟きながらも、私たちは息を切らして、ハァハァしている。

 私は、体力が少し回復してから、彼女のもとを少し離れると、さっき落としたICチップのようなものを確認する。


「て、うわっ!」


 急に音声がながれてきて、思わず私は驚く。


「えっ、なに!? どうしたの?」


 その声に驚いた彼女が、私にそう聞いてくる。


「いや、なんでも、ない……」


 とりあえず、私はそう答え、音声を聞くことにした。

 その音声の話をまとめると、こんな感じだった。


『ここは、ゲームの世界ではありません。簡単に説明するのであれば、異世界です。あなたには、この世界を救ってもらいたいのです』


 なるほど、なるほど。

 つまり、死ぬとゲームが終わるんじゃなくて、人生が終わるというわけか……。

 彼女の言ってた通り。


「てか、ゲームを始めただけのはずなのに、なんで異世界なんかに来ちゃったのー!」


「あんた、さっきから意味わかんないことばっかり言ってるけど、どうしたの? もしかして、私があなたのパーティーになってあげることが、そんなに嬉しかったの?」


「あの、この世界のことで知ってること、全て教えてもらっていい?」


 彼女は私のその質問の、何その質問と苦笑するような反応をみせる。


「知ってること? まあ、いいけど。てか、私としたことが、自己紹介を忘れてたわね。私の名前は、マギア・ユートリアよ。マギアって、呼んでちょうだい。あんたは?」


「私は、雨宮雫。えっと、雫のほうが名前ね?」


「それじゃ、シズね」


 私の言い回しに、なんの疑問を抱くことなく、話が進行する。


「それで、教えて?」


「わかったわ。それじゃ、私の知ってることを話すわね」


 それから、彼女は知ってることを全て話してくれた。

 勇者が最弱職の理由を。

 内容は、だいたいこんな感じだった。


『そうね、それじゃ、勇者が勇者として扱われてた頃から話すわ。何年も前のこと、勇者が生まれたの。もちろん、このときはまだ、魔王を倒す宿命をもってたわ。

 で、もちろん勇者は魔王を倒しに行ったそうよ。でも、結果は負け。実際、負けたかどうかはわからないけど、魔王を倒しに行った勇者は帰って来なかったと言われてるわ。

 で、そのあとも、勇者は生まれた。けど、誰も魔王を倒せなかった。それどころか、勇者はどんどん弱くなっていった。で、今は誰でもなれる役職になった』

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