あなたも、勇者になりませんか? 2

 えっと~、チュートリアルとかってないのかな?

 こういうゲームといえば、チュートリアルがあるのがセオリーなんだけど、なかなか始まらないな。

 いや、別にやりたいわけじゃないよ?

 というか、あってもスキップするし。

 まあ、そういう人のためにチュートリアルはないのかもしれないけど……。

 説明書とかそういうのを見たら、チュートリアルをやる方法とかわかるのかもしれないけど、そういうのって、一切見ないタイプだからな〜、私っ……!

 そこで、私は無意味に胸を張る。

 と、まあ、ないならないに越したことはない。

 けど、ステータスとかってどうやって確認すればいいんだろ?

 ヘルプとかはあってほしいんだけど、それもどこにあるかわからないや。

 さて、ゲームを始めて3時間と少しでつみの状況になりました。

 てか、どうしよう。

 それに、少しお腹も空いてきたし、一度ゲームをやめて確認してこようかな。

 そう思って、ログアウトしようとする。


 て、あれ? ログアウトできないんですが? なんかログアウトできないんですが? 運営さ~ん!

 なんかのバグだと信じ、もう一度ログアウトの方法を試してみることにする。

 けど、やっぱりログアウトはできなかった。

 そういうの、本の中だけの話でしょう?

 どうしよう。お母さんに怒られるっ……!


「ねえ、そこでなにしてるの?」


 困っていたそんなとき、私は誰かに話しかけられた。

 救世主キター!!

 これで私は、助かった~。

 こんな場所までNPCが来るわけない!

 つまり、この人はプレイヤーってことだから、この人にログアウトのことを教えてもらえば、それでなんとかなる! まあ、もしかしたら遅いチュートリアルが始まった、という可能性もあるけど……。

 そんなわけで、私は心の底から安堵する。


「その、ログアウトってどうすればいいんですか?」


「へっ? なに、ろぐあうと? なにそれ? あんた、なに言ってんの?」


 私が振り返ってそう訊くと、碧に近い紫色の目をした、赤髪の美少女が、そこに立っていた。

 そんな、彼女の瞳は、冷たい炎を想起させる。

 ただ、彼女のそのあまりの美少女っぷりに、私は言葉を失う。

 けど、そこで彼女の返答を理解し、絶望する。

 えっ? うそ、でしょ……っ!

 まさか、プレイヤーじゃ、ない、なんてっ!

 でも、チュートリアルという感じでもないし……。

 だから私は、もう一つの疑問を訊いてみることにする。


「その、ステータスとかって、どうやって見ればいいんですか?」


「ステータス? そんなの、この冒険者カード見たらわかるでしょ? ほら、これが私の冒険者カード。魔法使い《ウィザード》ていう役職の隣にステータスが載ってるでしょ?」


 彼女の言う通り、そこには、攻撃力、魔力などといった、ステータスとレベルが載っている。

 て、私そんなの持ってないんだけど!

 うん? なんか急に肩が重くなって……。


「あんた、さっきまでリュックなんか持ってたっけ?」


 そう言われて、私は始めてリュックを持っていたことに気づく。

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