第59話 開かれし花園への扉 Side白菜
前半は由紀視点
後半は白菜視点になってます。
……ここにはside白菜って書いてあるが、由紀視点があるのは気にするな。あまり気にすると俺の右手に宿る伝説の暗黒龍、ダークネスなんとかドラゴンがこの世界を……ウッ! 頭がッ!?
――――――――――――――――――――
白菜との新たな日課(吸精)が始まって早四日。
俺は昨日、誤って消費期限切れの刺身を食べてしまい、かれこれ二時間ぐらいトイレに引きこもっていた。
「ふぐぅ……」
お腹痛い……!
もう全部出ただろ。さっきから腸液しか出てこないんだが。俺の腸内に一体何が残ってるって言うんだ……!
「おばさん、由紀は?」
「そういえば見てないわね。外で遊んでるんじゃないかしら?」
お母さんと白菜がトイレの前で話をしている。何だか盗み聞きしているような気分になるが、電気が付いてるのに気付かない二人が悪い。
人が居ないところで何を会話しているのか、じっくりと聞いてやろうじゃないか。
「由紀に精気吸われる時さ、いつも負けたような気がするの。こっちの苦労も知らずに当たり前のように吸っていくから……一度で良いから由紀に一泡吹かせてあげたいの」
お? 復讐か?
良いだろう、どんな作戦だろうと受けて立ってやるよ。
「由紀のキスには本人にも制御できない催淫効果があるから、仕方ないんだけどね……。でも感謝もなしに蹂躙だけして行くのは母親としても見過ごせないのよねぇ」
母親として?
え? お母さん、そんな威厳なんてあった?
俺の知ってるお母さんは、みこ祖母に耳掻きされて、お父さんにベッタベタで、すぐ不貞腐れるような面倒な妖怪なんだけど。
「あっ、そうだ。これを使いなさい」
「これは?」
「妖怪にしか効かない媚薬みたいなものね」
ん???
この母親は娘に何を飲ませようとしてるのかな?
「白菜ちゃんが飲めば、由紀が搾取する際にその成分も一緒に吸うから、由紀も懲らしめられると思う。そしたらゴニョゴニョ……」
ぐぬぬぬぬっ……。
肝心なところが聞き取れない……!
お母さんの耳元で囁くやつやめろ。こっちは腹痛で便器から離れられないんだぞ。
「うん! おばさんありがとう! これで由紀にあの恥辱を晴らしてあげられる!」
「飲むのは少しで良いからね。ほんの一滴でも由紀には効果覿面だろうから……間違えて全部飲まないようにね。死ぬことはないだろうけど、流石の由紀でも壊れちゃうかもしれないから」
はい? 効果覿面?? 壊れる???
この人、本当に俺の母親ですか????
「大丈夫だよ。そんなヘマはしないから」
それはフラグッ!!
何なんだよ! お前は俺を殺す気かッ!!
その夜。
俺は媚薬が混入されていることがわかっていながらも吸精はしなければならないので、覚悟を決めて白菜と濃厚なキスをした。
「……どうしたの由紀? 今日は随分短いね」
「うん、ちょっと……」
なんだか身体がポカポカするし、今まで食事程度にしか思っていなかったキスがとても気持ち良かった。
「ダメだよ。きちんと吸精しないと」
「わっぷ!?」
白菜が俺に覆い被さって、逃げ場を奪ってきた。そして、無理やり吸精させて俺の体内に媚薬の成分を放り込んできた。
吸精が終わった頃にはすっかり成分が身体中を回り、俺はかつてない衝動に襲われていた。
「そんなにフラフラしちゃってどうしたの? ほら、こっちおいで」
「ひゃうぅぅぅんっ!!」
な、なんかスゴい声が出た……!
自分でもビックリした。
「あれ? 由紀、なんか濡れてるよ? おもらししちゃった?」
「し、してない!」
「だってほら……」
「ふにゅぅぅぅぅっ!!」
白菜が一度俺の肌に触れれば、凄まじい快感に襲われて意識を失いそうになる。よくR18小説で見る男が大好きな全身性感帯の感度の良い女みたいだ……。
その夜、俺は白菜にとことん追撃を喰らい、精神崩壊するギリギリまで攻め立てられた。
そのときの快感が忘れられず、それから毎夜のごとく白菜の部屋に通うようになったのは内緒だ。
べ、べつに白菜のことがす、すきになったとか、そんなんじゃないんだからねッ!!!
◆
私、双葉白菜は幼馴染みで親友の甘神由紀に復讐を果たした。
今まで散々私のことを食べておきながら、何も思わずに平然と昼寝する姿がちょっと許せなかった。
だから由紀のお母さん……おばさんに協力を扇いでどうすれば良いのかを聞き、おばさんに言われた通り、よくわからない飲み物を飲んで由紀を翻弄した。
――そしたら、どうだろうか?
「白菜……」
私を見るたびに顔を赤らめて、もじもじしながら寄り添ってくるようになった。
か、かわいい……! こんなの反則じゃない!?
だってあの由紀だよ!?
幼い頃は目の敵のような目で私のことを睨んでいたあの由紀だよ!?
あの頃は正直、由紀が何で怒ってるのかわからないことがよくあった。私が話しかけないと基本的に由紀は喋ってくれなかった。
それなのに……由紀は恋する乙女みたいな表情で私に近寄ってくるんだから!!
たしかに私が悪かったよ!?
由紀の身体に直接刻み込んだのは私だからね。でも限度っていうのがない!?
昔はツンツン。数年前はツンデレ。今はデレデレだよ!?
昔の由紀を知ってるし、由紀は姿も全く変わらないから、ギャップがスゴ過ぎてなんだか私までおかしくなっちゃいそう!!
「白菜、由紀ちゃん。お昼ご飯よー」
「はーい!」
お母さんに呼ばれてテーブルの前に座ると、由紀が私の膝上にちょこんと座ってきた。
「……どうしたの?」
「ここがいい」
「えぇーっ……」
ちょっと食べにくいから退いて欲しいんだけどなぁ……。
「むぅ……由紀ってば白菜ちゃんばっかり構って! お母さんにも構ってくれないと泣いちゃうわよ!」
「やだっ」
おばさんが猛烈な視線を私に送ってくる……。おばさんも結構嫉妬深いよね。
「由紀、食べにくいから退いてくれない? ほら、隣になら座ってて良いから」
「…………」
渋々と言った感じで由紀は退いてくれたけど、今も私にべったり張りついている。
由紀の身体って雪みたいに冷たいから、あまり張りつかれていると風邪引きそう……。
「今日のゆきちゃん、なんか変だね」
「あはは……そうだね」
たしかに変なんだけど、その原因が私だなんて、みこちゃんには言えない……!
「なあ母さん」
「なに?」
「何をメモしてるんだ?」
「……乙女の花園ってやつかしらね。私の本能が疼くのよ」
「なんだそりゃ?」
お母さんとお父さんを見ていると、由紀が横からツンツンとつついて私を呼んだ。
「なに?」
「…………」
「な、なに……?」
私がいくら呼び掛けても、由紀は黙ってその蕩けた表情で私のことを見詰めてくる。
「?」
「――――!」
私が由紀のことを見詰め返していると、恥ずかしくなったのかプイッと視線を逸らしてしまった。
由紀が唯々かわいい……。
そんな由紀も、お風呂から出れば態度が一変する。
キスして吸精することに快感を覚えた由紀は、本能からではなく、自分の意思からキスを求めてくるようになった。
ただ食事のようにキスされてるよりかは、恥じらいを持っていた方が人間らしくて私としても嬉しい。
「んむっ」
由紀とのキスは少し変な感じになる。身体が熱くてキュンキュンする。それは復讐を果たした日から由紀も同じみたい。
自分で何とかしてって言ったんだけど、由紀は「わたしの管理は白菜がする」の一点張りで自分で解決しようとはしない。
確かにその通りなんだけど、私はもうわかってる。
――由紀は自分でするのが怖いんだ。
だから私にねだってくる。そんな甘えん坊な由紀も可愛い所なんだけど……
…………あれ?
なんで、私はこんなに由紀のことを可愛いなんて想って――――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます