サボテン「枯れない愛」

 ねえ、あなた。あなたはもう私のことを忘れられたかしら。それとも、まだ私のことを引きずっているのかしら。


 きっとあなたは優しいから、まだ私のことを考えているんじゃないかしら。私のことは仕方がなかったから、あまり気に病まないでほしいのだけれど、最後の瞬間まで私の名前を呼んでくれていたこと、とても嬉しかったわ。


 石ばかりのこの場所は少し退屈で、本当は眠っていなくちゃいけないのだけれど、私は今日もふらふらと散歩する。真っ暗な空に、爪痕みたいに細い月が光っている。満天の星空、とまでは行かないけれど、あなたと暮らしていた場所よりもたくさん星が見えるから、遠いところなのだということが昼間よりも強く感じられ、少し寂しく思う。


 でも、私からあなたのそばに行くことは出来ない。


 だから私は年に二回くらい来てくれるあなたのことを待っている。


 暗い石と石の間の道の上をふわふわと漂う。道のとおりに進まなくてもいいのだけれど、道の上を歩いていた頃の癖が抜けない。もう十年以上もこの姿なのに。


 考えることはいつだってあなたのことだ。ご飯の献立や天気を考えなくて良くなった分、前よりもあなたのことを考える時間が増えたような気がする。あなたのかっこいいところや、好きなところを指折り数えて、思い出に浸る。更新されない思い出を何回も、何十回も、何百回もなぞる。そうやって一年、また一年と時を過ごしていく。


 きっとあなたがここに来るのはあと三十年くらい先のことでしょう。


 だからそれまで待っているわ。

 私の愛は枯れないから。

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