ミモザ「秘密の恋」

 先生と二人きりの生物準備室に夕日が差し込む。


「これでこの問題はわかったか」


 そう言って先生はボールペンを胸ポケットに戻した。


「はい。先生、ありがとうございます」


 先生の書いた文字を撫でたい気持ちを抑えて、問題集をかばんにしまう。


「しかし頑張っているな。先週も聞きに来ていたじゃないか」


 だって先生と二人きりになれるから。


「生物は頑張りたいんですよ」


 だって先生が教えてくれる教科だから。

 この先生への想いは知られちゃいけない。だって、生徒からそんなふうに想われるなんてきっと迷惑だ。それに、先生は大人で私はまだ子どもだ。色々問題になってしまうのは知っている。

 胸の奥が握りつぶされるようにギュッと痛くなる。


 目の前にいるのに、先生は遠い。私には届かない。誰にも言えないこの想いはどこに吐き出せばよいのだろうか。

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